『SEE FOR MILES /インスタント・シトロン』 [渋谷系]
こんばんは。
一番過ごし易い季節、夏の終り。
そんな時に聴きたい曲。
インスタント・シトロンのメジャー・デヴューシングルです。
世間的な評価はさておき、僕はインスタント・シトロンが大好きです。
ロッテン・ハッツに負けないくらい大好きでした。
こんなgood time music なセンスのバンドは無いですね。
ラヴィン・スプーンフルやNRBQに通じる朗らかさ。
いわゆる渋谷系全盛時代にデヴューしたグループ。
彼らは博多出身でした。“天神系”とか云ってましたね。
メジャー傘下のインディーレーベルからというのもいかにもこの時代らしい。
当時の渋谷系という括りに入るバンド、ミュージシャンの中でも僕はとりわけインスタン・トシトロンを高く評価していました。
彼らの作り出す音楽には渋谷系の多くのミュージシャンのような悪い意味でのインディーズらしさ(ブームに便乗して「なんとなくおしゃれ」や「なんとなくカッコいい」みたいな勢いだけでっちあげちゃいました的な安っぽさ)で作り出されたような粗造ぶりが無くて、丁寧に時間をかけて創られたエヴァーグリーンな楽曲とサウンドが印象的でした。
50年代、60年代、70年代、80年代、そして90年代のあらゆるジャンル、ロック、ソウル、ブルーズ、ジャズ、ラテン、映画音楽、モンド、日本のロックなどなど、その中から選りすぐりのキュートでポップなエッセンスを抽出して再構成したのがインスタント・シトロンなのですね。
ブロッサム・ディアリーのお孫さんのような片岡知子さんのウィスパーヴォイス。
加藤和彦さんの甥っ子のような長瀬五郎さんのソングライティング。
ニック・デ・カロの弟子のような二人の幅広いアレンジセンス。
この二人の作曲コンビの作品はあざとさや山っ気が無くて、自然体な愛らしさがあります。
聴いてると思わず頬が緩んでしまう純然たるポップス。
タイトル曲の「SEE FOR MILES」ってイギリスの再発レーベルと同じタイトルですね。
THE WHO にも『 I CAN SEE FOR MILES』って曲がありますが。
それはそれとして、
生楽器のバンドアンサンブルの厚いサウンドが心地よいです。
恋人と二人で初秋の風に吹かれながら列車で南へ向かうあてのない旅の唄。
片岡嬢は作詞家としても非凡ですね。
♪南へゆく列車の
一区間分のチケット
あなたと二人どこへ行こう
リラックスした優しいメロディとサウンドに乗って唄われる片岡嬢の歌声は演奏に埋没するコトなく、チャーミングに軽やかに存在感を放っています。
聴いていると楽しい旅の風景が思い浮かんで来ます。
♪秋へのドア
ほんの少しずつ
開き始めてる
淡く 感じる 夏の香り
カップリングは『IT'S A FANCY DAY』。
こちらは打って変わって打ち込みのキラメキ☆テクノポップ。
インスタント・シトロンはインディーズ時代とメジャー時代を境にサウンドの志向が変化しています。
正確にはこのシングルを境にですが。
本作で元々三人だったメンバーのうち、プログラミング担当の加藤ムネヨシ氏が脱退します。インディーズ時代はノンスタンダード時代のピチカートみたいなキュートなテクノポップを信条としていました。この曲は加藤氏在籍時の名残りとも云える作品で、楽曲のクレジットには“Cytron Obliques”と表記されています。
この曲もとっても可愛いのですね。夏にピッタリでクール。
アルバム未収録だったのですが、長門芳郎氏のグッドタイムミュージックレーベル、『dreamsville』から再発された彼らのデヴューアルバムにボーナストラックとして収録されています。
このデヴューアルバム『CHANGE THIS WORLD』は音楽の魔法を信じる世界中のポップスファンへの最高の贈り物と断言したくなる程のミラクルな内容です。名盤。
最近、彼らの活動の情報が無いので寂しいです。
『SEE FOR MILES』《TODT-3539》〈作詞:片岡知子/作曲:長瀬五郎/編曲:インスタント・シトロン〉(5'33'')【1995】
インスタント・シトロン!
僕も好きです。っつーか大好きですよ。
インディー時代から、EMI、dreamsvilleとずっと聴いてるし
今も新作を待ってます。
彼らは渋谷系なんて言葉では収まらない深みがありました。
エヴァーグリーンな輝きを持った楽曲、そのどれもがチャーミングだった。
一人でも多くの人に聴いてもらいたいですね。
by popholic (2008-09-09 22:17)
>こんばんは、popholicさん。
コメントありがとうございます!!
共感して頂いて嬉しいです。
インスタントシトロン、ホントに良いですよね!
音の隅々にまで音楽への愛情が詰まってます。
最近、片岡嬢はNHKの人形劇の音楽やCMソングを手掛けてますね。
シトロンとしての新作も聴きたいですね!
by 都市色 (2008-09-11 03:42)
いまさらコメント書いて良いものか迷いましたが・・・。
わたくし、つい最近『Sweeter than Suite』というオムニバス・アルバムを聴いてインスタント・シトロンのファンになった者です。検索してたらここに辿り着きました。はじめまして。
「ブロッサム・ディアリーのお孫さんのような片岡知子さんのウィスパーヴォイス」という一文を読んで、何度も頷いてしまいました。私も片岡さんもヴォーカルを聴いた瞬間にブロッサムを連想したもので。で、これからこつこつとシトロンのアルバムを集めて楽しみたいと思ってますが、都市色さんのブログはとても良い予習になりました。どうもありがとう!
by まばたき (2011-03-01 18:36)
>まばたきさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
インスタント シトロンのファンになって下さって嬉しいです。
彼らの作品は色褪せないエヴァーグリーンな響きを持ってます。
残念ながらもう新しい作品は聴けないかもしれませんが、いつまでも聴き続けたい音楽。
片岡さんはCMソングとか、劇判とかとかの活動をされてるのでオフィシャルサイトをチェックされると良いですよ。
http://home.att.ne.jp/blue/zubai/cytron/cyt-00.html
長瀬さんは、地元の福岡でレコードショップで働かれてます。
さすが、セレクションが素晴しいです。
http://muroreco.shop-pro.jp/
これからも宜しくお願いします。
by 都市色 (2011-03-02 22:24)