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『SPRAWL / frenesi』 [ウィスパーヴォイス]

フレネシ.jpg

こんばんは。
今夜はウィスパーヴォイスに魅了されましょう。
frenesi[フレネシ]という風変わりな名前の女性SSWのシングルです。

11/8、土曜日の昼下がり、横浜は関内の馬車道にあるカフェ ギーニョという洒落た喫茶店でフレネシさんのライヴが催されました。
このライヴでピアノ奏者として参加されるショック太郎さんを通じてライヴを知り、折よく上京した際にスケジュールが合って幸運にもライヴ観賞。港町の昼下がり、曇り空にピッタリの穏やかなひとときでした。
それまで一曲しかフレネシさんの作品を知りませんでしたが、沢山の魅力的な曲に出逢えることが出来ました。降参です。
チャーミングなウィスパーヴォイスと素敵な音楽仲間たちとの楽しい演奏。
そのときに手売りで販売されたシングルを入手して、余りに素晴しかったのでこの拙ブログでも取り上げたいと思います。

ferenesiとは熊崎ふさ子さんというキュートな女性によるソロユニットです。
フレネシさんを間近に見たとき、「地下鉄のザジ」のザジちゃんが大人になったようなイメージを持ちました。
フレンチポップス、ラテン音楽、ボサノヴァからの影響を受けた音楽が特徴と書くのが判り易いでしょうが、その表現だけではこぼれ落ちる魅力もあります。
http://www.myspace.com/frenesifrenesi

2007年のシングル『SPRAWL』。
三曲入りのマキシシングル。
一曲目はタイトル曲。
打ち込みによる書き割りのレゲエサウンド。
ラヴァーズロックやダブと表現する程スタイルに固執したサウンドメイキングではなくて、曖昧さや素っ気なさが浮遊するアレンジ。
霧が霞むようなフィルターがかかったフレネシさんのウィスパー。
クラウディな哀愁が漂うメロディ。
長らくご無沙汰していた街を再訪、悲しげに虚ろう街並の変わりばえ。
変わってしまった街にあの人の想い出の欠片を探してしまう。
フレネシさんの歌には喪失感がテーマのひとつになっている気がします。
先日のライヴで様々な曲を聴かせてもらいましたが、殆どの人にとってはありふれた何気ない事象、気にも留めずに忘れ去られてしまったモノへの愛惜が込められた歌が多い気がしました。
この曲以外にも、旋回塔やサバランを曲のタイトルにするのはフレネシさんだけかもしれません。
歌詞を読み込むと深いです。
この歌の打ち込みの音もウィスパーヴォイスも寄る辺ない街のムードを如実に表現しています。
上記のMY SPACEにて、ライヴバージョンを少し視聴出来ます。


二曲目は『Lowitz arc』。
“ローウィッツアーク”と読むそうです。天文学用語で、先日のライヴでこの歌のタイトルの説明をして頂いたのですが、理解出来ませんでした。家に帰ってネットでも調べてみましたがやっぱり判りません。
歌の内容はこの聞き慣れない専門用語とは関係が無さそうです。
リズムを刻む寂しげなピアノの音色。
ぶっきらぼうな早口の独り言のようなフレネシさんの唄。
愛らしい舌ったらずな唄声に耳を澄ませます。
ライヴのときにこの歌の歌詞は自分の中の忌野清志郎が書いた、というような旨のコメントをされていました。成る程、ちょっとシニカルな視点が印象的です。
好意を持つ相手へ素直に気持を伝えられずに、相手に貸しを作ることでコミュニケーションのきっかけを見いだそうとする意地らしさ。

♪君のセンスの無いそのダンスに 朝まで付き合うから オチの無い僕の話も ねぇ、最後まで聞いてよ

歌い出しのメロディとこの歌詞の結びつきを聴いて僕は衝撃を受けました。目から鱗が落ちた気分です。
なんて素晴しいのでしょうか!韻の踏み方も上手いし、意味も深い。
孤独感の漂う唄ですが仄かにカラッとした明るさを感じさせます。
寂寞とした世界に温もりを感じさせます。
ペーソスとユーモアが絶妙なバランスで混在している名曲。
ユニークな歌の視点に脱帽です。

歌詞と云えばひたすらホレたハレたとか、地球に優しくとか、人生応援歌とかの卒業文集レベルの画一的な没個性のJポップですが、フレネシさんの穿った視点にみちたソングラティングはオリジナリティを感じさせます。

三曲目は『白山羊黒山羊』。
落ち着きなくフワフワと転調を繰り返すキュートなボサノヴァ。
フレネシさんが敬愛する早瀬優香子さんの影響が感じられる愛らしい作品。
子供の頃に聴いた「♪しろやぎさんからお手紙貰った くろやぎさんたら読まずに食べた」という歌からインスパイアされた作品で彼女にとっては数少ないラヴソングということです。
ラヴソングでも童謡に着目するのが非凡ですよね。
こういうユニークな感覚や視点こそがロックンロールだと思います。
このシングルに収録されているバージョンはデモということで、下記のアドレス先で聴けるのが最終形なのでしょうか。
http://www.audioleaf.com/frenesi/

幼い頃に感じた無限のインスピレーションを大切に宝箱に封じ込め、そこから創作の泉が湧いていると云う感じがします。大人になって忘れてしまった何かをそっとみせてくれる音楽。
ミニマムな感情の揺らぎを見逃さない音楽。

因みに“frenesi”とはアルベルト ドミンゲスによる同名曲から由来しているそうです。
まだ聴いたコトが無いので聴いてみたいです。
これからのフレネシさんの活動も気になるところであります。

『SPRAWL』〈作詞/作曲/編曲:熊崎ふさ子〉(5'47'')【2007】
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