『二十才になれば/佐井好子』 [邦楽ロック/70年代]
こんばんは。
間もなく成人式と云うコトでこの曲を取り上げてみましょう。
まぁ、成人式だからどうと云うコトは全くないのですがブログのネタの瑣末なきっかけに過ぎません。
去年も同じ様なことを云ってかまやつさんの曲を取り上げましたっけ。
70年代の日本のロックの深い森の奥底に君臨するカルトレディシンガー。
天才女流SSW、佐井好子さんです。
この女性を語らずに70年代ロックを語る事なかれ、とエラソーに言ってしまいましょう。
70年代中期に関西でデヴューし、4枚のアルバムを残してシーンから消えたSSW。
その世界観は唯一無比な深い幽玄を湛えていました。
幻想文学的なムードと、日本古来の土着的なムード、そして異国情緒。
揺るぎなき完全なフィクションを音像化するソングライティング。
儚くも濃厚なドラマの語り部を担う説得力を持つ完璧な歌唱力。
魔性で純真な歌声。
かの松田優作さんも彼女のファンでアルバムでカヴァーしていました。
音楽家、JOJO広重氏を中心に近年その音楽性への再評価が急激に高まる中、ついに昨年、約30年ぶりに奇蹟のカムバックアルバムをリリースし、才能の衰えを微塵も感じさせぬ力作を届けて下さいました。関西のアングラロックシーンの顔役たちを従えての凱旋でした。
このシングルは佐井女史のファースト&ラストシングルです。
デヴューアルバム『萬花鏡』にも収録されています。
二十歳を迎えた少女の大人びた諦観、ドライで逞しい心境、うらさびしく寄る辺ない想い。
不安定な気分がとても上手く表現されています。これがデヴュー作と云うのが俄に信じられない程のクオリティ。
マイルドでソフトかつ、憂いを含んだ魅惑の歌声。
揺ったりと悲しげな三拍子のリズム。
♪二十才になれば 何が起こるかな
二十才になれば 長い髪をした
ひげづらのあの人 捨てて行くの
二十才になれば タバコをやめて 結婚するの
九つ年上の 優しい人と 結婚するの
B面は『紅い花』。
タイトル通り、つげ義晴氏の漫画からの影響が深い作品です。
民謡の様な旋律、深い陰影を残す耽美的な歌唱。
子守唄のように説得力がありますね。
このアルバムは大野雄二氏のアレンジが少しオーヴァープロデュース気味な気もしますが、少女の多彩な情緒を描写する佐井女子を巧みにサポートしています。
岡沢 章、松木恒英、石川鷹彦、田中清司諸氏と云った強者プレイヤーも参加してます。
次作の『密航』ではハプニングスフォーのクニ河内氏がアレンジを担当。
サウンドともに更に磨きのかかるソングライティング。
スリリングな狂気と才気が生み出す幻影にクラクラする大名盤です。
タイプは異なりますが吉田美奈子さんに比肩する才能を感じさせます。
70年代の日本のロックの創成期の音楽の可能性の高さを痛感させる音楽家でした。
大変大人びた成熟した女性ですね。
大貫妙子さん、中島みゆきさん、中山ラビさん、りりぃさん、森田童子さん、矢野顕子さんといい。
この時代の女性シンガーは皆さん、成熟と云うか老成していますね。
今の20才の若者たちと比べると隔世の感があります。
さぁ、次回は恒例、アニメソング特集を予定しています。
お楽しみに?
『二十才になれば』《B-43》〈作詞・作曲:佐井好子/編曲:大野雄二〉(3’32’’)【1975】
はじめまして。この曲初めて知りました。印象としては関西フォークよりも浅川マキや北原ミレイの影響の方が強いと感じました。いい曲を紹介してくれてありがとう。
by tsukikumo (2009-01-17 04:44)
>tsukikumoさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
曲を気に入って下さって嬉しいです。
浅川マキに通じるモノがあるかもしれませんね。
佐井さんの音楽は関西のフォークやブルースやR&Bとも異なる深遠な響きを持っていますね。日本古来の土着的な不思議な魅力を感じます。他の作品も機会がありましたらお聴き下さい。
by 都市色 (2009-01-19 11:50)
>solea01さん、はじめまして。
niceありがとうございます!
by 都市色 (2009-09-11 22:36)