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『別れのサンバ/長谷川きよし』 [ボサ ノヴァ/サンバ]

長谷川きよし.jpg

こんばんは。
今宵は長谷川きよしさんの「うたとギター、そしてことば」で名曲を。

昨年秋に、小西康陽さんのコロムビアレディメイドからリリースされた長谷川きよしさんの実況録音盤『40年。まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング』は大変素晴しいアルバムで、購入して以来、愛聴しています。

この世には記憶に長く残る様な素晴しいライヴアルバムが多くはありませんが、確かに存在します。
長谷川さんのライヴアルムもこれからの音楽生活を豊かにする名盤の輝きを放っています。

そのライヴにも収録されている二曲をカップリングしたシングルを紹介しましょう。
「別れのサンバ」「透明なひとときを」。
「別れのサンバ」という曲を初めて聴いたのはいつだろうか?
幼い頃、テレビの前で?
ラジオから?有線から?
大人になってから?
正確には思い出せないのですけれど、この音楽の完璧なシルエットが初めて聴いた時から、もうすでに遠い昔から存在していたかの様なスタンダードとしての風格を纏っていたと云うコトなのだと思います。
実際もう40年も前の作品なのですから。僕が生まれる前の歌。

長谷川きよしさんの歌をどこへカテゴライズしようか。
フォークじゃない、ロックじゃない、シャンソンが一番近いけれど、この曲はシャンソンとも違う。
「サンバ」だけど一般的なブラジルの明るく楽しい「サンバ」じゃない様な気がする。
都会の真夜中の社交場で、独り、悲しみをアルコールで紛らわせて踊り、溺れる為のサンバ。
悲しいサンバ。
唯一無比の歌声とギターの演奏と音色。
40年も唄い続けているのに長谷川さんの歌声は澄んでいて、透明感にあふれている。
聴く者の記憶から忘れられた「孤独」を呼び起こす「うた」のちから。
そして長谷川さんの歌の日本語の響きの美しさ。
これもとても重要だと思います。
ブラジル音楽を単に輸入しただけではなく、日本語の音楽として十分に咀嚼した末の創造の産物なのです。
1969年のデヴューから間もなく40年。
時間をかけて研ぎ澄まされた名工の技術のように無駄の無い完璧な仕事/演奏がある。
気の遠くなりそうな時間を超越して、この歌を耳にしたものを虜にしてしまう魅惑の弾き語り。
長谷川さんの圧倒的なパフォーマンスの前ではアンプラグドなんて表現が軟弱な茶番劇に響いてしまう。
長谷川さんが取り上げる楽曲はアレンジも殆どギター一本で過不足無く成立しています。
女性の寄る辺ない悲しみを情熱的に奥行きの深い歌で包んでいます。
情熱的ですが、決してウェットになりすぎないのは長谷川さんの歌声の透明感からだと思います。



どうでも良いですが、
駅前で、公の場所なのに恥ずかしげも無く、騒音をまき散らして、没個性をひけらかしている全国のギター弾きの若者たちには長谷川きよしさんの音楽を聴いたことがあるか?と問いつめたいです。


B面は『透明なひとときを』。
こちらも長谷川さんのオリジナルソング。
酔い覚ましの冷たいコップ一杯の水の様な、ヒンヤリとする、癒しのボサ ノヴァ。
MPBに比肩する楽曲のクオリティ。
夜の深淵に現れたオアシス。

♪夜の静けさがある
 グラスを満たす酒がある
 酔っていよう
 このやさしいひとときを

虚ろで気怠い酒場から聞こえるクールな長谷川さんのうたとギター。
正確なリズムとスリリングなギターワーク。
メランコリックな「別れのサンバ」と打って変わって仄かな優しさと明るさを感じる爽やかな曲調が気に入っています。少し悲しいけど楽しいお酒の歌。
こちらは1970年の作品。

本日紹介しているシングルは90年代にVIVIDサウンドから再発されたドーナツ盤です。
過去の名曲を7インチで紹介する企画があって、この一連の再発で僕は貴重なシングル盤を何枚か手に入れるコトが出来ました。

機会があったら長谷川きよしさんのライヴへ足を運んでみたいです。


『別れのサンバ』《VSEP-810》〈作詞・作曲:長谷川きよし/編曲;村井邦彦〉(2’50’’)【1969】


40年。まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング。

40年。まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング。

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2008/10/01
  • メディア: CD


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