『Happiness /鈴木祥子』 [鈴木祥子]
こんばんは。
西海岸の女流SSW、リッキーリージョーンズを迎え撃つは、
東京の女流SSW、鈴木祥子さん。
世知辛い世の中に差し伸べられる祥子さんの名曲を。
幸せってなんだっけ。
祥子さんの五枚目のアルバム『HOURGLASS』からの先行シングル。
彼女自ら、自身のテーマソングとコメントされている程の思い入れの深い歌だそうです。
デヴュー以来、ソングライティングによる飽くなき自分探しの末にたどり着いた、祥子さんの1つの回答がこの歌に込められていると感じるのは僕だけではないでしょう。
作曲のストラグルを乗り越えて自然とこぼれ落ちたような肩の力の抜かれた歌と言葉。
無駄を削ぎ落としたようなシンプルでストレートなメッセージ。
これまでの作詞家川村真澄さんとのコラボレーションと明らかに一線を画した作品。
これまでの川村女史の言葉を活かしたメロディと歌唱に重きを置いた作家的アプローチから、より自作自演歌手としてのエゴが押し出された、今日の鈴木祥子さんの音楽スタイルに通じる骨太さが感じられます。
自身の言葉による作詞作品がシングルのA面扱いになったのは『Happiness』が初だと思います。
♪ねぇ どうして手を離すの?
いつまでも ここにいるって言ってたのに
ねぇ 誰か 教えてよ
大事なものは 何故いつもなくなるの
この唄い出しから何やらズシンと重みを感じさせます。
聴く者に訴えかけるような「ねぇ?」ですね。
『あたらしい愛の詩』に通じる、ソウルミュージックからの影響が伺えるメロディ。
作品を作った当時の25才の心境、そして真理がリアルに込められてます。
打ちのめされたり、無くしたり、七転八倒、満身創痍、自問自答。
人生ってままならない。
本当にそう思います。
そんな魂へのささやかな救済の歌。
この曲をライヴで初めて聴いたのは五年程前の名古屋だったと思います。
ピアノの弾き語りで唄われ始めたこの作品でライヴハウスはオーディエンスとの合唱になりました。
気付くと隣りの女性が涙ぐんで唄っていました。その女性以外にも泣いてる方がいました。
とても印象に残っています。
昨年の渋谷CCレモンホールでの20周年記念のライヴでも大合唱でした。
ゴスペル系の唄い易いメロディなのでライヴでもとても人気のある作品なのでしょう。
本日取り上げているはシングルバージョンで西本明氏のアレンジ。
ゴスペル風コーラスをフィーチュアしたサウンドですが、同年にリリースされたアルバム『HOURGLASS』でのバージョンは当時のパートナー菅原弘明氏によるアレンジでもう少しシンプルな内容です。繊細で儚い抽象画のようなムードで貫かれたアルバム向けに仕上がってます。
カップリングは『どこにもかえらない』。
4枚目のアルバム『LONG LONG WAY HOME』のラストナンバーでもあります。
この曲も作詞は祥子さんによるもの。
アコースティック編成の和やかなセッション風の小曲。
音楽生活を旅に例えることの多い祥子さんですが、この曲でもタイトル通り、「自分には戻る場所は無く、旅の途中である」ことを示唆している気がします。
でも決してそれを悲観している訳ではなく、楽曲も明るいし、歌詞もポジティヴです。
自分の歩幅で、自分の言葉で、自分だけのリアルを唄いたい、それが祥子さんが決めた音楽活動の指針なのでしょう。
エンディングで引用される、口笛の「上を向いて歩こう」のメロディも効果的。
つまり、『どこへもかえらない』は次作に当たる『Happiness』への一里塚みたいな作品かもしれません。
『Happiness』《ESDB 3189》〈作詞・作曲:鈴木祥子/編曲:西本明〉(5’04’’)【1991】
SHO-CO-SONGS collection 2(DVD付)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct(Japan)Inc.(SME)(M)
- 発売日: 2008/12/24
- メディア: CD
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