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『セレーネのセレナーデ/キリンジ』 [キリンジ]

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こんばんは。
9月ももうすぐ終り。
今宵は秋の深まりを彩るキリンジの作品は如何でしょう。
配信オンリーのシングル『セレーネのセレナーデ』です。


8月から配信されていたことを最近まで知らなかったのですが、秋にピッタリな作品。
堀込兄氏の作品、マイルドなバラードですが、
キリンジ流プログレッシヴロックって感じの大作。
演奏時間も8分近くあって、滋味で控えめながら大変ユニークな野心作です。
でもゆったりとした曲調でリラックスして聴けます。
タイトルの“セレーネ”とは日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した月探査機の名前から取っているそうです。語源はギリシャ語で月の女神を意味するそう。
ロマン派理系男子っぽい兄氏らしい気がします。
今週末、10/3は〝中秋の名月〟だそうですね。

月面から地球を臨む風景をイメージさせる豊饒な演奏とソングライティング。
緩やかな演奏と彼方から聴こえてくる優しい口笛のイントロ。
兄氏のコメントによれば、レコーディング時には唇にサラダ油を塗って臨んだそうです。
効果があったのかもしれませんね、成る程、滑らかな響きです。

弟氏のビロードのような喉、
兄氏のロマンティックな言葉選びと旋律。

♪浅葱色の ブラウス
 胸元への ソフトランディング
 口づけたなら 引力からは 逃れられない
 女の膝は どこか似ているよ
 今夜の月に

弟氏のヴォーカルパート以降の展開も聴き逃せません。
シンプルな編成ながら奥が深い中盤〜終盤への演奏の流れの神秘さはこの楽曲のハイライトです。
ゲストミュージシャン、田村玄一氏の厳かで優雅なスティールパンソロ。
演奏をしているにも関わらず、まるで『2001年宇宙の旅』の世界のような深遠で無音状態の無重力の宇宙の景色を眺めているような気分になります。
そして再びバックの控えめながら雄弁なミディアムテンポの演奏が、宇宙空間の塵の中へ静かに開放されて溶けていきます。弟氏のスキャットも心地好い。
窓を開けて清かな月夜を見上げたくなりました。

宇宙をスケッチした今回のシングルが、レコードでもCDでもカセットでもない、実体のない空気のような配信でのみ存在しているというのも何か魅力的な気がします。

セルフプロデュース以降のキリンジ作品は、意外な程シンプルなサウンドが印象的です。
音を詰め込みすぎないで音の余白や空間を有効に利用した響き。
引き算の美学が感じられます。
今回も基本的にホーンやストリングスを排して、ギター、ドラム、鍵盤、ベースの4リズムを基調としながら、スティールギターとスティールパンの味わい深い音色を際立たせていますね。華美を避けるような自然体な美しさをコロムビア時代のキリンジの音楽には感じます。
それは自己模倣に陥らず深化する彼らの大胆な挑戦だと思います。

『セレーネのセレナーデ』《COKM-30829 》〈作詞・作曲:堀込高樹/編曲:キリンジ〉(07’42’’)【2009】
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