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『きっと言える/荒井由実』 [邦楽ロック/70年代]

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こんにちは。
先日、NHK-BSにて『マスターテープ』という特番を観ました。
普段テレビを観ないのです。
CS放送でときどき昔の映画やドラマをチェックするくらい。
音楽番組すら時間に合わせたり、録画するのも面倒で。
この番組を観た方からの情報で気になったところ、
二月の中旬に再放送があると知り、ようやく観るコトが出来ました。
素敵な番組でした。
これは松任谷由実さんがご自身のデヴューアルバム『ひこうき雲』のオリジナルマスターテープを実際にレコーディングが行われたスタジオにて、アルバムの録音に携わったミュージシャンやスタッフたちと一緒に聴きながら当時を振り返ると云うユニークな企画。
『ひこうき雲』は僕も大学時代に初めて聴いて今もずっと心に残る作品です。
1973年、僕が生まれた年にリリースされた同い年のアルバム。
『ひこうき雲』で歌われているのは主に十代の女の子たちの世界。
多感な少女時代の不安定な精神。
十人十色の彼女達の喜怒哀楽、日々移ろいゆく心もようを、瑞々しく非凡なソングライティングの絵筆で描写したユーミンのスケッチブック。その繊細な表現をサポートする新進気鋭の音楽集団、キャラメルママの演奏はユーミンの歌のスケッチを永遠に色褪せないものにする為に用意された優れた絵の具であり、パレットでありキャンバスであるのです。
このアルバムは単に懐かしい物ではなく、今聴いても些かも古びておらず新しいです。それはアレンジや録音にも様々な創意工夫がされているからだと思います。

と、云う訳でアルバムからのシングルカット『きっと言える』。
アルバムの曲全てが名曲ですが、特に大好きな作品。
タイトルにもセンスを感じます。
少女の運命的な恋への予感、そして確信。
ひたむきで向こう見ずな恋への情熱、若さの輝きをを見事に封じ込めた一曲。
不意打ちのようにドラマティックなイントロ。
さりげなくハートを射抜くメロディ。
ユニークなコードチェンジ。



番組の中で、この曲のマスターテープを流しながら語り合う場面があります。
そして16チャンネルのマスターから細野晴臣さんが爪弾くガットギターとユーミンのヴォーカルのトラックだけを再生するのを聴いたのですが、なんとも心地の良いブラジル音楽のようでした。間奏のサックスソロも実に涼しげに響きました。隠し味としてのガットギターが実に効果的で、この曲が幾重にも様々な要素から構成されているのが理解出来て興味深かったです。

B面は『ひこうき雲』。
少女の生命が儚く美しく天に召されていく歌、という表現が良いのでしょうか。
番組の中でスティールギター奏者の駒沢裕城氏が、ユーミンの歌にはポジティヴな感じがあって、人生を肯定しているのが良かったと仰ってました。この歌には死の影がチラつきますが、決して悲観的なニュアンスは感じられません。
プロコル ハルムの「蒼い影」を彷彿させるサウンド。
ユーミンはイギリスや西欧のポップスを意識して聴いていたそうです。
そしてキャラメルママは徹底してアメリカのサウンドを追求していてその融合がこのアルバムだと番組で語られていました。
アルバムを通してモノクロームな世界観が漂いますが、リズムはタイトでカラッとしています。このアルバムのサウンドの魅力のひとつかもしれません。
このアルバムのプロデューサーの村井邦彦氏が主宰されたアルファ ミュージック。
そしてこのアルバムが制作されたアルファ スタジオ。
当時のフォーク主流の音楽とは一線を画する、はっぴいえんど勢とまた少し違う流れで新しい世代の音楽を発表していきました。
小坂 忠さん、ガロ、そしてユーミン。
そしてYMOに続き、80年代の時代の潮流を担っていきます。
目の覚めるように眩しく新しい音楽。

『きっと言える』《ETP-10147》〈作詞・作曲・編曲:荒井由実〉(02’52’’)【1973】


ひこうき雲

ひこうき雲

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2000/04/26
  • メディア: CD



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コメント 5

ニコ

この番組見ました。
面白く興味深かったですよね!

「きっと言える」は私も大好き!
初期ユーミンの曲の中でも一番好きかも。
昔、田島貴男氏のラジオでも「名曲!」として紹介されてました。
「ひこうき雲」はユーミンの当時のご友人が亡くなられて
その時に書いたと、聞いたことがあります。
これもまた名曲!!
by ニコ (2010-03-02 00:53) 

都市色

>ニコさん、こんにちは。
あの番組ご覧になったのですか。
面白かったですよね。
「ひこうき雲」はユーミンの友人のことの歌だったのですね。
う〜んいいですよね。
「マスターテープ」、ユニークな企画なので続編を期待したいですね。
70年代の日本のロックアルバムで。

by 都市色 (2010-03-02 17:07) 

うっち

これは本当に良質な音楽番組でしたね。
続編期待するのは私も同感です。

ガットギター・バージョン、思わず音源化してほしいと思いました。

打ち込みではあり得ない空気感がぎっしりの名盤ですね。
当時の年齢を考えると驚きですね。
by うっち (2010-03-10 22:08) 

都市色

>うっちさん、こんばんは。
コメント&niceありがとうございます!
そうですね、とってもいい番組で。
ガットギターバージョンの「きっと言える」もホント良かったですよね!
小坂忠さんの「HORO」の当時のオリジナルマスターテープが現存して、それを元に新しくヴォーカルを録り直したアルバムが近くリリースされるそうですね。
この「HORO」のマスターテープを題材に番組を作って欲しいと思いました。
by 都市色 (2010-03-12 19:16) 

都市色

>KEIさん、はじめまして。
NICEありがとうございます!
by 都市色 (2010-03-15 02:02) 

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