『ZOMBIES ON THE BBC / THE ZOMBIES』

新年明けまして、お目出度うございまする。
今年も「03'54''」を何卒宜しくお願いします。

お正月は実家に帰って、粛々と家業を手伝いながら過ごしておりました。
特に寝正月でもなく、賑やかに街へ繰り出すでも無く、静かに過ぎて行きました。
家族と地味に年を越しました。
とにかく、家族が無事で良かったなぁ、と思う昨今です。
自宅にて、寒い賀正の夜にそっとプレイヤーで針を落として聴くのがちょうど、こんなレコードなのです。
ゾンビーズのシングルを。

季節は冬。
黄昏の季節に相応しい音楽として僕がイメージするのが、ゾンビーズです。
それとキンクスとか。
ノスタルジックでメランコリックでセンチメンタルな孤独で孤高の美しい音楽。
木枯らしの吹きすさぶ冬の街に流れる哀愁の調べ。

昨年、英国のリイシューレーベル、aceの姉妹会社のBIG BEATからドっと沢山のゾンビーズのコンパクト盤が発売されました。33回転の四曲入りのシングル。
その中の一枚、『ZOMBIES ON THE BBC』 。
イギリスの国営放送BBCからのライヴ音源4曲。
ゾンビーズのCD四枚組のアンソロジー『ZOMBIES HEAVEN』の内、一枚はBBCでのライヴ音源集でしたがそれには未収録の3曲が聴けます。
シングルの４曲ともカヴァー曲です。

A面の1曲目は『THIS OLD HEART OF MINE』。
オリジナルはモータウンでアイズレーブラザーズが放った1966年のヒット曲。
「ZOMBIES HEAVEN」には66年の「SATURDAY CLUB」で放送された演奏が収録されてますが、今回のシングルでは67年の「DAVID SYMONDS SHOW」からの演奏が聴けます。こちらのほうが演奏に熱気が感じられます。ロッド アージェントのハモンド、コリン ブランストーンのフレッシュでソウルフルな歌唱。美しいコーラスワーク。素晴しいノーザンソウル風な演奏です。

２曲目は「LOOK OF LOVE」。お馴染みバカラック＆デイヴィッド作。
オリジナル歌手のダスティ スプリングフィールドにも負けないコリンのミステリアスな歌声とコンパクトなバンドサウンドが見事。教会のミサのようなパイプオルガンの響きを模したロッドのハモンドのイントロも印象的。
これは同じく「DAVID SYMONDS SHOW」からの67年の放送で「ZOMBIES HEAVEN」収録の音源と同じです。

B面に移って。
1曲目はROSCO GORDONの1959年の珠玉のR＆Bナンバー「JUST A LITTLE BIT」。
原曲のかっこいいリフをギターでキメて、ぐっとシャープでタイトなリズムでたたみかける素晴しいビートナンバーに変貌しています。
ここでもロッドのハモンドがうねり、コリンの瑞々しいシャウトが炸裂。「ZOMBIES HEAVEN」では「THE BEAT SHOW」という番組からの音源が入ってますが、シングルは「SATURDAY CLUB」での演奏が収められてます。どちらも65年の演奏。

２曲目は「LOVING YOU IS SWEETER THAN EVER」 。
スティーヴィー ワンダーのカヴァー。
ヤング スティーヴィーの快活で才気走るメロディとグルーヴをバンドの一体感で見事に表現。
65年の「STURDAY CLUB」からの音源で、曲は「ZONBIES HEAVEN」には未収録。

あらためて、彼らのバンドとしての演奏力の素晴らしさを再確認。
「ZOMBIES HEAVEN」でのBBC音源も聴き直しましたが、R&B系のカヴァーがやはり多く、彼らの音楽性に深くブラックミュージックが影響してるのだと思いました。
「TIME OF THE SEASON」「SHE'S NOT THERE」といった代表曲のブルージィな魅力はそこから来てるのです。だから好きなんですね。
ゾンビーズと云うとスタジオレコーディングの名作「ODESSEY & ORACLE」だけが取り沙汰されますが、ライヴバンドとしても素晴らしいのです。
他にも未発表のBBC音源があれば是非聴いてみたいなり！

永遠に蒼く美しいゾンビーズの音楽。

『ZOMBIES ON THE BBC』《LTDEP 008》【2010】