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『I LOVE YOU /パラダイス ガラージ』 [邦楽ロック/90年代]

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こんにちは。
寒いですね。
ちょっとご無沙汰してしまいましたが、まだまだ続きます!
吹けば飛ぶよなブログ、行ってみましょう!

さて、豊田道倫さんのパラダイス ガラージ名義のアルバム「実験の夜、発見の朝」がデラックス盤で再発されました。
yes,mama ok?の「CEO」をリイシューしたSUPER FUJIからのリリース。
いやぁ、すばらしい。
実に有意義な復刻です。
1990年代を代表するロックアルバムだと思います。
90年代、混沌とした関西のインディーズシーンから産み落とされた異端児、パラダイス ガラージの唯一のメジャー盤。
90年代末期、音楽業界のバブル期の最期のどさくさに紛れて作られた名盤。
昨年、ミュージックマガジン社から発刊された90年代の邦楽のディスクガイドにも掲載されました。
僕はこれをリアルタイムで聴けませんでしたが、衝撃を受けました。

福富幸宏氏を協同ブロデューサー、内田直之氏をエンジニアとして招き、
猥雑でローファイでガレージでいびつな宅録サウンドをさらにスケールアップさせて響かせています。
メジャーでのレコーディングというアウェイ感にひるむことなく独自の歩幅で広いスタジオでも暴れまくって音を汚しています。
やぶれかぶれで、無頼で、繊細で、下世話で、粋で、豪放で、軟弱で、孤高な豊田道倫のうたの世界。
彼の住む町、街へ向けるその眼差しは優しい。
鼻炎気味のような、お世辞にも美しいとは云えない歌声を敢えて響かせて、「うたもの」へ執着するシンガーソング ストリートファイター。
このアルバムは1998年の東京を荒ぶる筆致でスケッチした問題作。
まるで映画のような。
冴え渡る野性的な音楽の勘、漲る旺盛な創造精力。
オリジナル版のジャケットは渋谷駅前の交差点の雨に濡れた路上を撮影した物ですが、あの当時の渋谷〜新宿あたりの空気感がアルバムに染み付いています。
あのジャケをシド バレットの「帽子が笑う…」のジャケと似ている、と指摘した方がいましたが、目から鱗でした。よーく見ると何となく似ているのですね、不気味に。
あの写真を撮ったのは大橋 仁さん、今では売れっ子ですね。
同年、豊田利晃監督が「ポルノスター」という映画を撮ってますが、これはリアルタイムで観ています(二回も)。この作品も舞台が渋谷で、とても好きな作品です。
僕もその頃、渋谷へ週に1、2度は遊びに行って映画を観たりレコードを買ったりしていて、アルバムの世界観に親近感があります。
思えば、90年代終りはまだ音楽業界は今程景気は悪くなくて、インディーズ系のミュージシャンもメジャーでアルバムを出していました。羅針盤やボアダムズや暴力温泉芸者などなど。バブルとも云えました。でも長くは続きませんでしたが。

それでは本題へ。
アルバムの先行シングル。
レコード屋も本屋も映画館も消えていく渋谷の風景、
そんな街の崩壊の兆しが見え始める、90年代終りの街へのレクイエムのようなロックンロール。
この曲のレコーディングに参加しているのがyes,mama ok?の金剛地武志さん。
共同アレンジ、そして演奏に大活躍。
yes,mama ok?を早い時期から評価していた豊田さんがレコーディングに誘ったそうです。
金剛地さんも豊田さんもどちらも宅録派出身。
金剛地さんの叩くドラムの人間味溢れるリズムが、楽曲の哀愁を巧みに掬い取っています。
そして同じくノイジーなエレクトリックギターの嘆きがささくれだった不器用な心を表現しています。
キタダマキさんのベースも素晴らしいし、向島ゆり子さんのヴァイオリンの夕暮れの空に高く舞うような崇高な響き。内田氏のミックスも良いです。
金剛地さんは福富氏同様、アルバムの大半に参加していて大活躍です。
そういえば、先日とりあげたyes,mama ok?のシングルも1998年の作品でした。

今回再発されたデラックス盤にはこの曲のデモバージョンがボーナストラックとして追加されてますが、デモ版にも金剛地さんが演奏で参加していて、ほぼアレンジは固まっています。
同じくデラックス盤にはDVDも付いてるのですが、当時のライヴ映像にて、金剛地さんがギターで参加してるのですが、豊田さんと金剛地さんの佇まいがザ・スミスのモリッシーとマーみたいでカッコいいのです。

そうそう、実は昨年のyes,mama ok?の東京でのライヴの次の日、名古屋へ戻って豊田道倫さんのソロライヴを観に行きました。名古屋ではいつものKDハポンというライヴハウスで。
これも素晴らしかったです。
豊田さんはMCも面白くて人柄も最高です。
因みに、さらにその次の日に大阪でまりやさんのライヴを観ました。

シングルの話に戻って、
カップリングはアルバム収録曲「1998」のスーパーマーケットmix。
チープなシンセ音源による、スーパーとかの店内で流れているBGM風なインストです。
アレンジは福富さん。

「実験の夜、発見の朝」、タイトルもカッコいいですが、内容も最高です。
この再発を通じてもっともっとこのアルバムの素晴しさを多くのロックンロールファンに感じてもらいたいですね。



豊田さんと云えば、元旦にリリースした最新作も良いですよ。
「豊田道倫&ザーメンズ」という身も蓋もないバンド名義でタイトルは「アンダーグラウンドパレス」。世知辛い世の中でこしらえた傷に塩をすり込むような、満身創痍のロックンロール。またしても傑作。パンクです。
昆虫キッズと組んだ「ABCD」とはまた違った魅力を持った内容。

かっこわるいことはなんてかっこいいんだろう、なんて。
ブログ「03’54’’」は豊田道倫を応援しています。

『I LOVE YOU』《AMDM-6258》〈作詞/作曲:豊田道倫/編曲:豊田道倫、金剛地武志〉(05’57’’)【1998】


実験の夜,発見の朝 -12th Anniversary Deluxe Edition-

実験の夜,発見の朝 -12th Anniversary Deluxe Edition-

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Super Fuji Discs
  • 発売日: 2010/12/15
  • メディア: CD



実験の夜、発見の朝

実験の夜、発見の朝

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
  • 発売日: 1998/09/15
  • メディア: CD



アンダーグラウンドパレス

アンダーグラウンドパレス

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2011/01/01
  • メディア: CD



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コメント 2

nakamura8cm

待ってました!そう、私が年末に買った8㎝はこれです。
先越された!でももうこの記事で満足だからいいや。
豊田道倫の歌は最初かなり抵抗があるけど、じわじわきますね。
2番の「失くしたものは~」を歌っているのは金剛地さん?
短冊ジャケの内側全面を使った横長の写真(夕暮れのウォーターフロント)もいいですよねえ。

そうそう、昔バンブルビーレコードのクリスマスライブを見にいったとき、遅刻して豊田さんが歌っている最中に席についたら、曲終わりのMCで「今日は客が動くな~!」と軽くキレられたことがありました。ちょっと自慢(笑)
by nakamura8cm (2011-01-21 22:41) 

都市色

>nakamuraさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
昨年、手に入れられたのはコレだったのですね。
お先に失礼しました。
なかなか味わい深いデザインの短冊ですよね。
僕も初めてパラガの歌を聴いた時は「何じゃコレ!」と違和感がありましたが。もう聴くまいと思った程ですが、いつの間にかハマってしまいました。
nakamuraさんがお持ちの金剛地さん関連の短冊、もう僕は持っていません。また御紹介下さいね。
by 都市色 (2011-01-22 19:33) 

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