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『ラスト メトロ/なかの綾』 [歌謡曲/10年代]

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こんにちは。
本日紹介するのは、なかの綾さんと云う女性歌手。
昨年、アルバム「ずるいひと」でデヴューしました。
このアルバムがユニークなのはすべて歌謡曲の名曲のカヴァーということ。
それが実に素晴しい出来なのです。
収録曲は主に70〜80年代にヒットした大人の歌謡曲で、カラオケでも人気のある定番を、
ジャズやラテンのサウンドでリアレンジ。
なかの綾さんは宣伝文句に寄ると、20代の現役ホステス、らしいです。
お若いながら、「夜とお酒と男と女」の主戦場でのBGMともいえる歌謡曲を見事に歌い切っています。

さて、そのアルバムからのシングルカットの7インチ。
昨年11月頃手に入れていたのですが、紹介するのが遅れてました(こういうのばっかり)。
タイトルは「ラスト メトロ」。
オリジナルは和田アキ子さん。
僕はこの曲を小西康陽さんが選曲したコンピ盤「フリーソウル和田アキ子」で知りましたが、聴いた瞬間にハートを鷲掴みにされました。しっとりとムーディなジャズ。
地下鉄の最終電車に乗って、家路へ向かう訳ありな恋人たち。
その果てには希望が待ってるのか、絶望が待ってるのか…。
儚く淡い恋の唄。
抑え気味のアッコさんの歌も良くて、そりゃ「アッコにおまかせ!」でも仕方ないな、と納得しちゃう名曲。
そしてなかの綾さんによる「ラスト メトロ」も負けないくらい素晴しいカヴァー。
こちらもジャジーなアレンジですが、よりメロウで切なく、ブルージィな仕上がり。
演奏が素晴しいです。
安部 潤さんのリリカルでセンチメンタルなピアノタッチ。
ドラムの柿澤龍介さんの人間味溢れる酩酊気味なドラムの表現もムーディ。そしてマイクロスターの佐藤清喜さんの華麗なストリングスアレンジにも胸を締め付けられます。
勿論、主役のなかの綾さんの歌唱表現にもシビれます。
抑揚を利かせたハスキーな歌声。丁寧に歌の世界を広げています。
どちらかと言えばなかの綾さんのカヴァーの方が好みです。
名唱、名演、名曲。
もう何度聴いても飽きません。

B面は「恋におちて」。
説明不要な日本の歌謡曲のスタンダード。
オリジナルは小林明子さんの自作自演版のバラードでしたが、陽気なサルサにリアレンジ。
恋におちた女性の胸の高まりを表現するにはこうしたラテンタッチのサウンドはピッタリですね。
こちらも素晴しいカヴァーバージョンです。
小林明子さんの歌がヒットしていたとき、僕は小学生でした。
あのときは「あぁ、良い曲だなぁ、恋の歌なんだな」としか思ってませんでしたが、恋と云っても「道ならぬ恋」の歌なのですね。



この曲のPVを担当されたのは映画「GSワンダーランド」を監督された本田隆一氏。
僕は「BECK」なんかより「GSワンダーランド」を断然支持します!!
そういえば、このシングルを含め、なかの綾さんのアルバムのアートワークを手掛けているサリー久保田さんは「GSワンダーランド」の音楽を担当しています。
ジャケットの素晴しいイラストはジミー益子さん。
サリーソウルシチューと同じですね。

このアルバムをプロデュース&アレンジしているのが、はせはじむ氏。
DJとして有名ですが、矢舟テツローさんやthe facinationsも手掛けられているだけあって、ジャズやラテン音楽を歌謡曲へ巧みに取り入れています。
それでいて歌謡曲の持つアクというかソウルはなんら損ねていません。
そもそも中村八大、宮川 泰、諸氏といった歌謡曲の優れた作家の多くの方が、ジャズ畑出身であり、この「ずるいひと」でのジャズやラテンへのアプローチは先祖帰りとも云えます。見事なマッチング。
こういうアルバムが逆に歌謡曲の間口の広さを証明しています。
はせ氏の歌謡曲/音楽へのリスペクトも感じます。
なかの綾さんの作品も矢舟さん、the facinations同様、はせさん主宰の「HIGH CONTRAST RECORDING」からのリリース。
近頃はお手軽なカバーアルバムが多いですが、これは歌謡曲、いや音楽への深い審美眼で貫かれた充実したカヴァーアルバムなのです。

シンガーとしてのなかの綾さんのこれからの活動も楽しみです。

最後に、歌謡曲と云えば、ほぼ日で最近更新されている「THE KARAOKE」という対談も面白いです。

『ラスト メトロ』《HCR9649》〈作詞:村田さち子/作曲:小六禮次郎/編曲:はせはじむ〉(03'46'')【2010】


ずるいひと

ずるいひと

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ヴィヴィド・サウンド
  • 発売日: 2010/11/24
  • メディア: CD



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コメント 4

キムラエフ

はじめまして
mrsのカフェボヘミアのリンクから伺いました。
元春だけでなく他の音楽も知りたくアンテナ貼っています。

なかの綾さんのバージョン初めて聴きました。
昭和歌謡のアクをのこしつつ、軽妙な感じもあり、面白いです。
監督はGSワンダーランドの監督でしたか!
きめ細やかなレビュー、また読ませて下さいませ。
by キムラエフ (2011-02-13 20:06) 

都市色

>キムラエフさん、初めまして。
コメントありがとうございます。
元春とGSがお好きですか。
僕はそれほど詳しくないけどGS好きです。
これからもアレコレ書いていきますので宜しくお願いします。
by 都市色 (2011-02-15 13:07) 

うっち

やはりドーナッツ盤を買われましたか。
さすがです!
アルバムを聴いて、かなりの衝撃を受けました。
懐具合の関係で買ってませんが。
いま欲しいアルバムの一つになってます。
by うっち (2011-02-20 07:43) 

都市色

>うっちさん、こんにちは。
NICE&コメントありがとうございます。
歌謡曲と云うだけで聴かず嫌いしては勿体ない音楽ですね。
テレビに出演されたらもっと評判になるのに。
by 都市色 (2011-02-22 09:01) 

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