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『警告どおり 計画どおり/佐野元春』 [佐野元春]

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こんにちは。
〝INESによる福島第一原発での原子力事象評価尺度の評価結果が、­当初のレベル4から「7」へ。〟

シングルのブログを更新していて、今、この一枚を取りあげない訳には行きますまい。
佐野元春さんの1988年にリリースしたシングルオンリーの作品。
「警告どおり 計画どおり」。

今から丁度、25年前の1986年4月。ソ連(現ロシア)で起きたチェルノブイリ原子力発電所事故で原発の安全性が大きく問題視されました。
あの頃、中学一年でした。当時、片想いの女の子がいて、ある雨の日に彼女がずぶ濡れで登校して教室に入って来たとき、放射能の含まれた雨に降られたのではないかと、その女の子の濡れた髪や肌を心底心配したことをよく覚えています。
話が逸れました。
そのチェルノブイリ原発の評価も「レベル7」でした。
その評価の内容はそれぞれ異なるようですが、高い危険度にあることは間違いありません。

その後、日本でも原発問題を扱った曲が多く生まれました。
代表的なモノはRCサクセションの「カバーズ」ですね。
この元春のシングルは「カバーズ」と同じ1988年8月にリリースされました。
彼には珍しいストレートなメッセージを込めたプロテストソング。
社会的な思想を込めた作品はヴィジターズ以降ありましたが、その中でも異色。
ミュージシャンが原発について歌った作品は多いのですが、それらと異なるのは、この曲は厳密には「原発をめぐるジャーナリズム」への異議申し立てと言うことです。
原発に関する報道が国民に十分に正確に伝わっていない、そしてメディアを通じて原発への意見を発表するとメディア内から圧力がかかる。言論の自由が規制されてることへの危険をロックンロールに歌い上げています。
実際、この曲に関して当時、元春がDJを務めていたラジオ番組にオンエア放送局であるFM東京からも圧力がかかったそうです。
この曲のレコーディングにはバービーボーイズのギタリスト、いまみちともたか、The REDSというバンドから大平太一、藤原和美、杉山靖幸、諸氏が参加しています。
シンプルなバンド構成によるソリッドなロックンロール。
スピーディにドライヴする演奏、インスタントにコンパクトに展開するロックンロールの醍醐味が感じられます。
鋭利に切り込んでくるいまみち氏のエレクトリックギター。
ブルージーなメロディとギターリフに乗って、ワイルドにクールに捲し立てる元春のヴォーカル。
怒りを嗅ぎ取ることが出来ます。

 もう不確かじゃいられない/子供たちが君に聞く/本当のことを知りたいだけ/
 ウィンズケール/スリーマイルズ アイランド/チェルノブイリ/すべては警告どおり

http://www.youtube.com/watch?v=Mj0uCpl4Xa8&NR=1

この二行の歌詞のメッセージが、まったく文字通り、2011年の現状まで有効なのはどういうことなのでしょうか。
リアルな現実、本気の現実。
歴史は繰り返す。

このアナログシングルはご覧の通り、ピクチャーレーベル仕様なのですが、写ってるレコード表側は元春の上半身のスナップ。そのレーベル面の裏側には下記のようなメッセージが記されています。

IMAGINE OF
THREE MILE Is . U.S.A.
CHERNOBYL U.S.S.R
WINDSCALE U.K.
AND NEXT ?

残念ながら「AND NEXT ?」に対する回答が23年後の2011年に出そうですね。
我が国から。
大地震が起きるまで、大量の広告料を投下して原発の安全性を謳ったキャンペーンを雑誌やネットやテレビを通じて繰り広げて来た電力会社、大手スポンサーの意向に逆らえない傀儡メディアたちの空々しさ。「原子力は安全です」、それは今や三流のジョーク。

B面は「風の中の友達」。
こちらはいつも通りのハートランドのバッキングによる演奏。
「警告どおり〜」同様、シンプルなコンボ編成ですが、内省的なミディアバラード作品。
遠く離れた親愛なる友人へ向けたささやかな手紙の如き一曲。
心に切々と沁みるビタースウィートなメロディが素敵。
ホント、メロディメイカーだと思います。
淡々としたハートランドのコーラスと演奏も良いですね。
隠れた名曲と言う表現が相応しい内容で大好きです。

実はこのシングルが初めて買った佐野元春のシングルです。
出会いの一枚。
中学3年の夏の終り。
この曲を聴くと思春期だった頃の青臭い自分がフラッシュバックして少し胸がチクチクします。
政治や社会に目を向け始めた中学生にこのシングルは刺激的でした。
シリアスなメッセージソングがリアリティを感じなくなる世の中になって欲しいと切に願います。


『警告どおり 計画どおり』《10・5H-3046》〈作詞/作曲/編曲:佐野元春〉(03’19’’)【1988】


EPIC YEARS THE SINGLES 1980-2004

EPIC YEARS THE SINGLES 1980-2004

  • アーティスト: 佐野元春
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2006/06/28
  • メディア: CD



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コメント 7

いとぞう

本当に「警告どおり」になってしまいました・・
大好きな曲なんですけど、まさかあの当時、このメッセージが2011年に強烈に響くことになるとは思ってませんでした。

”本当のことを知りたいだけ”というと「ガラスのジェネレーション」にも同じフレーズがありますが、確固たるメッセージを放つ際、欠かせないフレーズなのかも。

ピアノやブラスセクション主体の曲が多かった当時の元春が、これほどエレキギターを前面に出した曲をシングルとしてリリースしたのは珍しかったですよね。
ライヴでは一度も演奏されてませんよね?是非「やがて滅びるまで何もせずただおとなしく見つめてるだけじゃいられない」と歌詞を変えて歌ってほしいです。
by いとぞう (2011-04-15 19:14) 

都市色

>いとぞうさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
「ガラスのジェネレーション」と同じフレーズが使われてましたね。
気がつきませんでした。
なるほど。
ライブで聴いてみたいですよね。
by 都市色 (2011-04-18 08:06) 

都市色

>ろひさん、niceありがとうございます。
by 都市色 (2011-04-18 08:07) 

橋沢育郎

「終わりはこない」とつぶやきながら眉をひそめてる君
クレイジーに傷ついてどこにも帰れない
やがて滅びるまで何もせずただおとなしく見つめてるだけさ

まさに今の官内閣ですね・・・


by 橋沢育郎 (2011-04-19 09:47) 

都市色

>橋沢さん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
元春の、現実を鋭く切り取り、イマジネーションと巧みに結びつけるセンスにはいつも感心させられます。

by 都市色 (2011-04-23 06:08) 

うっち

その次がFUKUSHIMAとなるなんて...
冷静なのか傍観なのか?
自国で進行形で起きていることなのに、今は妙に冷めた感じが怖いくらい。

延期された東京公演、決まりましたね。
どういう雰囲気のライブになるのでしょう?
by うっち (2011-04-25 22:06) 

都市色

>うっちさん、
コメント&niceありがとうございます!
被災地で生活していない身としては、まだシリアスな現実が実感出来ないですね。六月の東京公演で歌ってくれないかな?
by 都市色 (2011-04-26 00:28) 

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