『The World ( is going up in flames )/ CHARLES BRADLEY 』 [SOUL]
こんばんは。
ピーター バンカラです!?
軽妙なジャズの次は苦み走ったリズム&ブルースを。
チャールズ ブラッドレー氏を御紹介しましょう。
今年の前半までに買った新譜の中で最も印象に残ったアルバムが彼の「NO TIME FOR DREAMING」です。
まるで70年代にリリースされていたかの様なジャケットの雰囲気、そして更に驚くのはチャールズ氏が御年62歳にしてこれがファーストアルバムと云うコト。
十代の頃にジェームズ ブラウン氏に憧れて歌手を志望。
そしてアメリカの各地で料理人として働きながら、地道に長くクラブで歌手を続けていたそうで、大変な苦労人です。2007年にDAPTONEレーベルの主宰者トーマスベネック氏に見出されて、同レーベルに在籍するメナハン ストリートバンドのサポートを受けて2007年にデヴュー。
そのデヴューシングルが今回の「THE WORLD(is goin up in flames)」 です。
「夢見るヒマなどありゃせんわ」と日本語では訳せそうなアルバムタイトルが象徴するように、社会的にも個人的にもシリアスでヘヴィーな現世への嘆き節。
苦節ウン十年のチャールズ氏のノドから響き渡る、しゃがれた深みのある歌声は何よりも雄弁で饒舌でリアルであります。
さて、シングルの「The World ( is going up in flames )」。
「世界(は今にも炎に包まれつつある)」と訳したら良いでしょうか。
世界は炎の中に包まれそうだ
誰も責任を取ろうとしない
痛みをしらないくせに俺の生き方にアレコレ文句を付けないでくれ
誰も俺の悲しみを聞こうとしない
俺は見渡すこの全ての事柄から顔を背ける訳にはいかないんだ
だから、さぁベイビー
がんばって、世界をもっとマシな方へ導こうぜ
えらいこっちゃと苦境を嘆きながらも、己を奮い立たせて前へ進もうとする力強いソウルパワーに充ちたチャールズ氏の歌声。巷の青臭くてチャラい人生応援歌が束になっても太刀打ち出来ない説得力があります。
ジェームズ ブラウン氏からの影響を感じます。
そしてバッキングを務めるメナハンストリートバンドの演奏。
熱唱を支える硬質なリズム隊と一抹の哀愁を帯びたホーンズの音色、そして熱血漢をしなやかにフォローする女性コーラス隊。一言で云えば太文字で「ファンキー」。
メナハン ストリート バンドは全員が白人なのですがクールでコクのあるプレイが素晴しいです。
ブッカー T&MGズみたいですね。バンドの中心人物、トーマス ベネック氏の才能が光ります。
60〜70年代の、スタックス/ヴォルト、ハイ、チェスなど、往年の名レーベルの“いなたい”味わいが継承されています。
B面は『Heartace & Pain』。
まさに上記のレーベルの滋味なサザンソウルの世界観を堪能出来る極上のソウルバラードです。
人生は心と肉体の痛みに充ちているんだ。
と、諭すように歌っています。
さまざまなトラブルが尽きない理不尽な社会の中で、悲痛な思いを強いられる事を受け入れる強さ。
大きな夕焼けの如く寛大な歌と演奏に胸がいっぱいになります。
他人の悲しみを知っている者達の音楽に泣けます。
シングルのレーベルの盤面には、副題として、
「 in memory fo JOSEPH BRADLEY 」という言葉が記されています。
チャールズ氏の肉親の方へ捧げる歌かも知れません。
サウンドは全編生演奏で、まるでライヴ演奏を聴いているような迫力と緊張感があります。
ただの昔ながらの音楽を蘇らせたのではなく、今聴いてもリアルに感じさせる現役感のある音像。
最近はR&B界でもヴォーカルをデジタルで処理したりする傾向がありますが、チャールズ ブラッドレーによる裸一貫の等身大の歌心=ソウルミュージックは永遠に瑞々しく流行に流されない輝きを放っています。
是非、来日して生でその魂の歌声を感じ取ってみたいです。
『The World ( is going up in flemes )』《DNM-102》〈Word & Music by C. Bradley & T. Brenneck〉(03’27’’)【2007】
>本物ホネツギマンさん、nice ありがとうございます!
by 都市色 (2012-09-21 11:24)