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『I JUST WASN’T MADE FOR THESE TIMES / THE BEACH BOYS』 [BRIAN WILSON]

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こんにちは。
ビートルズに続いては、ビーチボーイズ。
気になって調べたら、ビーチボーイズの初来日も1966年ではないですか!
ビートルズに先駆けて、一月に。
武道館ではないですが、ななんと僕の出身地、静岡で!!
今はなき駿府会館と云う場所で行われたそうです。
1966年と云えば、名作「PET SOUNDS」のリリースされた年でもありまして。
45年前の5月16日にアメリカで発売されました。
アルバムのジャケットの裏にメンバー達の来日公演での写真が掲載されています。
太秦映画村で撮影されたと思しき、サムライ風にキモノを纏い、チョンマゲを被ってお道化るメンバー達。その中にブライアン ウィルソンの姿はありませんでした。
ツアーに同行せずに、ひたすらアルバム制作に没頭していました。
前年に発表されたビートルズの「ラバーソウル」に衝撃を受けたブライアンがその対抗意識に燃えて作り上げた野心作。
もはや夏だ海だクーペでドライヴどころじゃありません。
作詞家のトニーアッシャー氏(ロジャーニコルズ&スモールサークルオブフレンズの「Don't take your time」で有名ですね。)を迎えて、内省的な歌詞とオーケストレーションを多用した複雑で華麗な音像。アルバムのタイトルは「PET SOUNDS」。
前年のアルバム「BEACH BOYS TODAY」あたりからその予兆は感じられていました。
と、御託はともかく。

とにかく人生を変えてしまう名作「PET SOUNDS」なのです。
僕がこのアルバムに出会ったのは17歳の終りでした。衝撃的でした。
それはまた別の話。

さて、今回ご紹介するのは、このアルバムのステレオミックスが発売された1997年に先駆けてリリースされたシングル盤です。
オリジナルの「PET SOUNDS」はモノラルでしかリリースされなかったのですが、時代を追う毎に再評価が高まる本作への音楽ファンの要請なのか、90年代に「PET SOUNDS SESSIONS」 というCDボックスが発売されました。名作のレコーディングセッション音源とステレオミックスをコンパイルした箱モノ。
前回のビートルズはモノラル。
今回のビーチボーイズはステレオです。
シングル盤に話を戻して。
このシングルは何故かキャピトルからではなく、米国のインディーズレーベル“SUB POP”から発売されました。僕も当時、渋谷か新宿の小さな輸入盤屋で手に入れたと思います。

A面は「I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES(stereo mix)と「WOULDN'T IT BE NICE(vocal only)」の二曲が収録されています。
前者は「駄目な僕」という邦題で有名な曲。素晴しいバラード曲がこのアルバムには多いのですが、この曲も本当に感動的です。山下達郎さんはこのアルバムの国内盤のCDのライナーノーツでベストトラックに挙げておられました。
ブライアン自身のリードヴォーカルで曲が始まり、穏やかな演奏に徐々にドラムやホーンやストリングス、コーラスが被さって、やるせなき想いを添えたメランコリックなメロディが胸に突き刺さってきます。狂おしいほどに、美しいほどに。
「僕は多分この時代に向いていないと思う」という切ない心情を吐露した内容の歌詞は身につまされます。
ブライアンの本音が透けているようで落ちついた歌声の中に締念が感じられます。
時代よりも進んでしまった男の悲劇。
ステレオミックスだけあってモノラルの籠った音像よりもサウンドに広がりが感じられます。それと近年のデジタルの技術の発達でノイズが大幅にカットされてクリアーなサウンドです。
ロックのジャンルでは初めて導入された楽器といわれるテルミンの音も良く聴こえます。
咽び泣く様なテルミンの頼りない響きを味わえます。
それとモノラル版にて、曲の始まりの方でなにやら人が笑い声を上げているのが聴こえていたのですが、カットされています。
因にこの楽曲の演奏はカリフォルニアのゴールドスタースタジオで録音されています。エンジニアはラリー レヴィン。スペクターサウンドのお膝元ですね
フィル スペクターの様にレコーディングを意のままに操ろうと云う創造的な意気込みや覚悟をこのアルバムにはヒシヒシと感じますね。
このアルバムのレコーディング風景を撮った写真を見るとブライアンの熱意が伝わってきます。黒ブチメガネをかけた彼はカッコいいです。

さて、後者であるA面の二曲目は、邦題「素敵じゃないか」のヴォーカルトラックだけを抜粋したものですが、アルバムの冒頭を飾る高揚感のある曲でリードヴォーカルをとるブライアンだけの歌声の瑞々しさに圧倒されます。メンバーとのコーラスワークも聴けます。

B面は「HERE TODAY(backing track only)」、つまりカラオケです。
アルバムではB面の三曲目に収録されていて、終盤へ向けて劇的な急展開を思わせるムードの作品。
演奏だけを聴くと、エレキギターのトレモロ奏法やバリトンサックスのブロウが効果的に心の不安を効果的に煽っている感じがします。

この「PET SOUNDS」が放つ音像の創造性、非凡さ、そして内省的な世界観は優しく僕を包んでくれます。そしてブライアン ウィルソンの若く美しい歌唱。
アルバムを覆う、不安感、迷い、挫折感、弱さが有機的に音楽に結びついていて何度聴いても新鮮に感じます。一方、最後の「CAROLINE NO」の後に聞こえてくる列車の通過音、犬たちの叫びを初めて聴いたときは何だかとても恐かったコトを覚えています。ショッキングな感じがして聞けませんでした。
何か不穏な予兆を感じたのでしょうか。

60年代中期と云う激動の時代の曲がり角に生まれた不思議な音楽です。

そういえば、mojo magazineの最新号ってビーチボーイズの7インチがおまけに付いて来るんですよね。買いそびれてしまいました。無念…。

『I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES』《SP 363》〈Words : TONY ASHER ,Music :BRIAN WILSON〉(03’18’’)【1996】


ペット・サウンズ(MONO&STEREO)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2008/06/11
  • メディア: CD



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