『真夏の夜の事/初恋の嵐』 [邦楽ロック/00年代]
こんばんは。
秋の夜長をいかがお過ごしでしょうか。
今夜は初恋の嵐。
先日、心斎橋クラブクワトロのライヴイベントにて初恋の嵐のライヴを観てきました。
2002年の早春、メジャーデヴューの矢先にバンドの中心人物、西山達郎さんが急逝し、残されたメンバー達がその遺志を継いでファーストアルバムを制作およびリリースし、その後活動を休止以来、約9年半ぶりのライヴでした。
FM802のラジオ番組「MIDNIGHT GARAGE」とクワトロの共同主催の「ホームルーム」というイベント。そのイベントにて「喫茶ロック」を振り返る趣旨が有り初恋の嵐、そしてメレンゲ、セカイイチという3つのバンドが参加しました。
僕にとっては初めての初恋の嵐のライヴ体験になりました。
勿論、西山さんのいない初恋の嵐でした。
元メンバーの隅倉弘至さん、鈴木正敏さんに加え、アルバムの共同プロデュースを担当した木暮晋也さん(ヒックスヴィル)、レコーディングに参加した高野勳さん、玉川裕高さん(コモンビル)さらに中森泰弘さん(ヒックスヴィル)らによる演奏にリードヴォーカルとして岩崎慧さん(セカイイチ)、クボケンジさん(メレンゲ)、堂島孝平さん、そして曽我部恵一さんらが代わる代わる担当しました。
初恋の嵐を理解する音楽仲間らによるリユニオン。
そして初恋の嵐を愛するファンたちによりささやかながら熱く充実したライヴになりました。
あらためて初恋の嵐の音楽、ひいては西山達郎さんというミュージシャンの才能の非凡さを認識しました。オリジナルメンバーで大音量で演奏される彼の楽曲の素晴しさ。
感激しました。
久しく初恋の嵐と言う名前はメディアに上がりませんでしたが、僕は10年間このバンドの事を忘れるコトはありませんでした。アルバムやシングルはことあるごとに愛聴していました。
このブログでも「UNTITLED」を記事にしています。
忘れた事はありませんでした。
という訳で初恋の嵐のもう一枚のシングルをご紹介しましょう。
メジャーからの唯一のアルバム「初恋に捧ぐ」からの先行シングル「真夏の夜の事」。
珠玉のバラード。
恋に煩い、一人取り残されたようにぼんやりと孤独に過ごす真夏の夜。
あの娘を想い、妄想が膨らんで行く。
夢と現実の境界が曖昧になり、心が縺れて真夜中の闇に溶け出して行く…。
♪それは想像のストーリー 意味などない
やがて妄想から目覚めて、現実に還る。
♪これは想像のストーリー などではない 真夏の夜の事
また孤独な真夏の夜が続く…。
夏の夜の静寂を思わせる落ちついたミディアムテンポの演奏。
やるせない想いを込めた西山さんの歌声、メロディ。
そして夏の星座のように美しいストリングスが効果的に響きます。
ATGの映画の様なPV 。
真夏の白昼夢、青春の蹉跌、暴発。
先日のイベントでは曽我部恵一さんがライブの締めくくりにこの曲を歌いました。
見事な歌唱力で圧倒するステージでした。
当時、サニーデイサーヴィスを解散して間もない曽我部さんは初恋の嵐の西山さんにかつての自分を見出していたのかもしれません。深いシンパシーを寄せていた事でしょう。
だから先日の曽我部さんの歌唱には10年間の総決算のような思いで初恋の嵐の歌に臨んでいたように思いました。深い敬意とプライドを感じさせる素晴しいパフォーマンスでした。
カップリングは「涙の旅路」(ORIGINAL VERSION)。
アルバムとは別バージョンです。
そちらに収録されたのは(SLTS VERSION)と呼ばれています。
ドリーミュージックから2002年にリリースされた「SMELLS LIKE TEENAGE SYMPHONY」というタイトルの喫茶ロック系コンピレーションに収められたのと同じ音源です。
ORIGINAL VERSIONはSLTS VERSIONよりも若干テンポが上がり、カントリーロック然としたエッヂの効いた力強い演奏です。
ミディアムバラード調のSLTS VERSIONも良いですが、バンドのダイナミズムを感じさせるシングルバージョンも魅力的です。
初恋の嵐はブルースやカントリーに精通したロックバンドである事がこの演奏で判ります。
演奏力もあります。
西山さんのギタープレイも聴きどころです。
ニール ヤングやグレイトフルデッドっぽいです。
アメリカでも当時(オルタナカントリー)というジャンルが注目を浴びていました。
先日取りあげたライアン アダムスがそうです。
この曲も恋愛の痛手をしみじみ歌っています。
恋に敗れ去る者への鎮魂歌。
「愛するものはいつも寛大 愛されるものはいつも残酷」なんてコトバを思い出します。
先日のイベントではセカイイチの岩井さんによってソウルフルに歌われました。
このように初恋の嵐の楽曲は徹底して、恋愛という厄介な魔物に取り憑かれて七転八倒していく男の無様さを描いてます。
恋が必ずしも純真無垢では無い事を歌っています。
人間の愚かさや弱さを向き合って受け入れて歌っています。
だから救われます。
恋愛を詩情豊かにロマンティックに描くサニーデイサーヴィスとは対照的でした。
良い悪いは別にして。
だから初恋の嵐の歌はとても共感出来ます。聴く度にヒリヒリしますが。
今月で閉店してしまう心斎橋クラブクワトロには沢山の初恋の嵐のファンが集まりました。
僕以外にもこのバンドを愛している人が関西にもいるんだなと判って嬉しかったです。
少しでもこの想いが、初恋の嵐の素晴しさがブログを通じて届いたら嬉しいのですが。
西山さん有り難う。
愚かで美しい初恋よ、永遠なれ。
『真夏の夜の事』《UPCH-5099》〈作詞・作曲:西山達郎/編曲:初恋の嵐/ストリングス編曲:河野 伸/キーボード編曲:松田マヨ〉(05’33’’)【2002】
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