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『涙の風景/荒木一郎』 [荒木一郎]

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こんばんは。
前園直樹グループに続いては、この方。
荒木一郎さんです。
「いとしのマックス」つながり。
最近、荒木さんのライヴDVDを入手しました。
荒木さんのオフィシャルサイトを通じて、一般発売よりも早く。

昨年六月、下北沢タウンホールで行われた三日間のコンサートを収めた4枚組DVD。
2002年の青山劇場以来の9年ぶりのライブは荒木さんの音楽人生を3回に分けて振り返る内容。
滅多に表舞台に姿を見せない生きる伝説のような荒木さんなのでチケットはたちまちソールドアウト。
僕も行こうと思っていたのですが、チケットが取れず行けませんでした。
知り合いが幸運にもチケットを手に入れて羨ましかったです。
2002年のライヴですら22年ぶり。
貴重なライヴをほぼ完全収録したDVDを少しずつ観はじめて、ようやく見終えました。
日本での【シンガーソングライター】の先駆けである荒木さんの数奇な芸能生活を「歌とおしゃべりで」で綴る三日間。
いやぁ、楽しかったです。素晴しい。
音楽の良さもさることながら、語られる当時の思い出話がいちいち面白過ぎます。
荒木さんの周りで起きる様々なエピソード。
トラブルを巻き起こしたり巻き込まれたり、ムショに入れられたり、干されたり。
フツーの人では体験出来ない濃厚な話ばかり。
大手芸能プロダクションが幅を利かせる中、若い頃から個人事務所を立ち上げて己の才覚だけで芸能界の荒波をサヴァイヴしてきた一匹狼の荒木さん。
歌手、俳優、そしてプロデューサーとして。
東京生まれの都会の擦れっ枯らしの粋な生き様。
そして様々な人との出会いと別れ。
波乱の人生を軽妙で茶目っ気たっぷりな語り口と毒舌で楽しませてくれました。

そして荒木さんの名曲は様々な人との出会いによって生まれたものばかり。
売れる曲を書こうと思って作った訳でなく、そもそも歌手になろうと思った訳ではなく。
友人や恋人へ何気なく作った「うた」が「曲」となり「作品」となったと云います。
パーソナルなうたが普遍的なヒット曲に。
「空に星があるように」「今夜は踊ろう」「いとしのマックス」「君に捧げるほろ苦いブルース」など、作為の無い歌だからこそ万人の心を打ったのでしょう。
リラックスした雰囲気の中、長年支持してくれる熱いファンへのサーヴィス精神。
衰えを知らないエンターテイナーの力量を感じさせる素晴しいステージでした。
という訳で、荒木さんのシングルを。

「涙の風景」、1971年のアルバム「荒木一郎の世界」から。
悲しみに暮れた心に捧げる叙情的なバラード。
ピアノとアコースティックギターの澄んだ音色に乗って、優しく爽やかに語りかける荒木さんの歌声。
素朴かつクールナーの様な響き。
傷ついた気持ちを受け止めて、静かに癒す温かい懐の大きなメロディ。
うっすらと響く美しい女性コーラス。
眩い夕暮れから青々とした夜空への美しいグラデーションを思わせるような瑞々しいビクターオーケストラの演奏。



この曲は今回のライヴでも歌われてDVDにも収録されています。

B面は「ミスター サドネス」。
この曲もA面の続編の様なバラードですが、若干テンポが早く、少しリズミカル。
孤独な気持ちを「ミスターサドネス」と擬人化して歌います。
アコースティックギターの繊細な演奏と、そよ風の様なオーケストレーション。
自身の声でハーモニーを重ねた荒木さんの歌声と歌詞が、ジワジワと心に沁み込んで来る名曲です。

日本の歌謡/ポップミュージック界に於いて初めてレコーディングに導入された24チャンネルのレコーダーを使いこなし、ふくよかで厚みのある音像がこのシングルには感じられます。
総じて、アルバム「荒木一郎の世界」も充実したサウンドが漲っています。
ジャズ、演歌、アートロック、サイケデリックサウンド、ソフトロック、ムード歌謡、R&Bなど様々なジャンルを網羅しつつもとどのつまり荒木一郎ならではの深い洞察と哲学が貫かれた唯一無二の世界が表現されたコンセプチュアルな名盤です。
クニ河内、船木謙一、小谷 充、諸氏のアレンジも功を奏しています。ハプニングスフォーの才人、クニさんを早くも起用しているのは流石ですね。
スキャンダル事件に巻き込まれてしばらく芸能界から干されていた荒木さんの復帰アルバムでもありました。その後も荒木さんは何度も芸能界から干されるのですが、不死鳥のように何度もカムバックします。彼の非凡な才能を芸能界は結局は放っておくことが出来ないのです。

まだまだ荒木一郎さんの才能は忘れ去られるには惜しいです。
これからもときどきは思い出したように歌い続けて欲しいし、映画やドラマなど映像の世界、そして文壇でも活躍して頂きたいと願います。

最後にせっかくなので、もう1曲、僕が好きな荒木さんの曲を紹介しましょう。
シングルの曲じゃないですが。
http://youtu.be/bLuZlsHM56k
こういう洗練されたコードプログレッションによる曲も多いのです。

『涙の風景』《SV-2134》〈作詞/作曲:荒木一郎/編曲:船木謙一〉(03’20’’)【1971】


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コメント 5

いとぞう

昭和のスタアの昔のエピソードってホント面白いんですよね。我々凡人では体験出来ない、いや、したくないハチャメチャな生き様。だからこそ憧れるのであって。そう思うと最近は小さくまとまった「常識」に縛られた世知辛い世の中・・荒木一郎さんはきっと凄い時代を生き抜いてきたんでしょう。
「涙の風景」良い曲ですね~。破天荒な人生を送ってきた荒木さんによる、心が洗われるような切ない歌声が素晴らしい。
by いとぞう (2011-10-21 21:27) 

ねこま

荒木一郎さんのマジックの本を見て「同姓同名?」と
結び付かなかったことあります。
幅広い才能の持ち主ですね。
by ねこま (2011-10-22 22:21) 

都市色

>いとぞうさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
当時は興行とかコンサートはやくざが仕切っていて、トラブルも絶えなかったようですね。
荒木さんの音楽活動は少ないですが、彼の曲を取りあげる歌手は今も多いのです。

by 都市色 (2011-10-25 01:30) 

都市色

>ねこまさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
人を楽しませるエンターテイナーの才能はマジシャンとしても一級なのでしょう。荒木さんがプロデュースするマジックのイベント、観てみたいです。
by 都市色 (2011-10-25 01:33) 

都市色

>xml_xslさん、niceありがとうございます。
by 都市色 (2011-10-25 01:36) 

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