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『あなたが欲しい/ハプニングス フォー』 [邦楽ロック/60年代]

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こんばんは。
前回の記事にクニ河内さんのお名前が出たので、ハプニングス フォーを取りあげてみたいと思います。
ハプニングス フォー。
大好きです。
グループサウンズ時代に突如現れたポップ ミュータント。
彼らをGSとカテゴライズしていいのかは別として。
とにかく当時の歌謡界/GS界を見渡しても彼らに類するグループはありませんでした。

ギターレスの鍵盤主体のアンサンブル。
バンドの出身は福岡でめんたいビートとは一線を画し、元々はラテン ロックバンドからスタートしたといいます。ラテン/ジャズ/ラウンジ系のサウンドが特徴。
何と、ビートルズの来日時にはヒルトンホテルのラウンジにてビートルズの前で演奏したそうです。
ファーストアルバム「MAGICAL HAPPENINGS TOUR」は鍵盤を主体としたラテンポップサウンドでしたが、セカンドアルバム「CLASSICAL ELEGANCE BAROQUE'N ROLL」ではタイトル通り鍵盤サウンドを更に押し進め、チェンバロなどを取り入れたクラシカルなバロックポップに。
更に更に、サードアルバム「アウトサイダーの世界」では何を思ったのか作詞家に北山 修氏を招き、演歌スレスレの毒ッ気と諧謔精神に充ちた歌謡ロックへ突入。このアルバムからメンバーが一人増えて「ハプニングス フォー+1」として活動します。
更に更に次作「満潮 引潮」では180度方向転換し、プログレッシヴロックを導入。「人間の一生」をコンセプトとしたトータルアルバムを残して解散。
アルバムを出す毎に異なったコンセプトを提示して問題作を発表。
その多様でフレキシブルな音楽性は当時よりも90年代以降に高く評価されました。
ハプニングス フォーのメンバーはそれぞれ高い才能を持っているのですが、サウンドのキーマンは何と云ってもクニ河内さんです。
サウンドの要となる鍵盤全体を操り、作詞作曲アレンジも殆ど手掛ける音の魔術師。
当時のGSや歌謡曲の多くがプロの作家の分業によって楽曲が作られていましたが、セルフプロデュースなのは大変珍しいですね。
そういうところも当時の日本の音楽シーンと異なるところです。
クニ河内さんも荒木一郎さんや加山雄三さん、そしてかまやつひろささんに通じる新しい世代のミュージシャンと云えますね。
クニさんはバンド解散後も様々なミュージシャンを手掛けたり、優れたソロ作品を残します。
僕と同じくらいの世代の方にはNHK教育での音楽番組「わんつードン」の“クニおじさん”が有名でしょう。CMソングでは「小学一年生」ですね。
♪ピッカピカの〜一年生 ビシ!

そんな多才なクニ河内さん率いるハプニングス フォーのデヴューシングルを。
「あなたが欲しい」。
奇抜なジャケットデザインはハイ勿論、横尾忠則さんによるものです。
キレのある変化球ばかりを放る掴みどころの無いバンドによる唯一のストレートな剛球直球ラヴソングど真ん中。プロコル ハルムの「蒼い影」に影響を受けたようなシンフォニックなハモンドオルガンの清廉な調べ。
意中の女性への募る思いが淀み無く有機的にメロディと歌詞にメタモルフォーゼ。
愛する喜び。生きる世界の美しさを謳歌。
例えもし愛が成就しなくても愛を否定しない。
晴れがましいほどの潔さ。清々しい愛の告白。
トメ北川氏の迷いの無い熱唱。
心が洗われるような日本のラヴソングのスタンダード。

B面は「何故?」。
ハプニングス フォーの唯一無二の変態的な魅力が爆発するハイブリッドポップス。

こちらもクニ河内さんによるラヴソングの内容なのですが、A面「あなたが欲しい」が男性側からの歌詞なのに対し、
「何故?」では女性側からの歌詞です。
面白いのは「あなたが〜」が愛する喜びを熱く謳歌しているのに対し、
「何故?」は恋の苦しみを吐露しているのです。
トメ北川氏が女性になり切ってカマトトぶった歌いっぷりなのも効果的です。
アルバム未収録ながら、この曲もメロディの良さが心にグッと来ます。
情熱的なラテンビートと恋のもどかしさを伝えるクラシカルなピアノの演奏がハマっています。
疾走感のある演奏が恋の情熱の高まりを表しているような。
ハプニングスフォーの面々の美しいハーモニーに胸が締め付けられます。

21世紀に入り、突如ハプニングス フォーがオリジナルメンバーで再結成されました。
数年前にテレビの音楽番組に出演したときの模様がアップされているので、
是非ご覧下さい。
「何故?」と「あなたが欲しい」のメドレーを。



トメさんの衰えを知らない美声ホールを包み込みます。素晴しいですね。

最近、ようやく二年前に再発された「満潮 引潮」の紙ジャケCDを買いましたが、素晴しかったです。
日本のロックの名盤の誉れ高い一枚です。
このアルバムの前にクニ河内さんは“クニ河内とかれのともだち”というグループを結成して「切狂言」と云うタイトルのアルバムを一枚出しますが、「満潮 引潮」は「切狂言」のサウンドとコンセプトを押し進めた内容です。「切狂言」も凄いアルバムでした。
最近お亡くなりになったジョー山中さんもメンバーでした。

とにかくハプニングス フォーはユニークなバンドですが、
このバンドの正当な評価はまだ為されているとは思えません。
クニ河内さんを始め、メンバーの仕事に冠しても余り語られていない気がします。
今後の再評価に期待します。

『あなたが欲しい』《CP-1010》〈作詞/作曲/編曲:クニ河内〉(03’02’’)【1968】


マジカル・ハプニングス・ツアー

マジカル・ハプニングス・ツアー

  • アーティスト: ザ・ハプニングス・フォー
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2006/08/23
  • メディア: CD



引潮・満潮

引潮・満潮

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2008/12/05
  • メディア: CD



アウトサイダーの世界

アウトサイダーの世界

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1994/12/14
  • メディア: CD



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