『新宿烏/楳図かずお』 [歌謡曲10年代]
こんばんは。
600回を突破し、益々攻めの姿勢で更新して行きましょう。
そんな訳で、出ました。
グワシ!
楳図かずお先生です。
君は楳図先生の歌を聴いたか!?
な、なんと36年ぶりにアルバムリリース、その名も「闇のアルバム 2」。
数年前に先生の自作自演アルバム「闇のアルバム」(1975)が紙ジャケで再発されて、一部の音楽ファンを狂喜させました。僕もその一人でした。
漫画家として脂が乗っていた頃にリリースされたオリジナルアルバム「闇のアルバム」の本編に加えて大量の秘蔵音源をプラスしての再発。本業に負けない先生の只ならぬ音楽への旺盛な創作意欲にクラクラしました。
秘蔵音源の多くが近年の活動からのモノであったり、ライナーノーツには変わらぬ音楽への意欲を語られていたり、単発として音楽作品は断続的に発表されてはいましたが、こうしてアルバムリリースが実現しちゃうとは誰が予想出来たでしょう、しかも「闇のアルバム 2」というタイトルで!!
「14歳」を完結して以降は執筆活動を休まれており、近年はマンガへ捧げていたクリエイティヴィティを歌手活動一本に専念しているだけあって、前作を上回る内容です。
「続編に傑作なし」という定説を覆す、楳図先生のパワーアップしたソングライティングと歌唱力。
先生は歌でも本領を発揮しています!
本気と書いてグワシ!
そんな「闇のアルバム 2」からの先行シングルをご紹介。
タイトルは「新宿烏」。
先生の代表作のひとつ「おろち」の物語の中にて、流しの少女歌手、佳子が新宿の酒場で演歌を歌う場面があります。
そのシーンで唄われる歌「新宿烏」は楳図先が作詞を手掛け、実写化された映画版「おろち」の中で佳子を演じた女優の谷村美月さんによって唄われています。
今回のシングルはその楳図先生のセルフカヴァーバージョンという訳です。
正確には「楳図かずおと夫婦烏」による「新宿烏」。
「おろち」の世界観を100%トレースしています。
恵まれない少女・佳子を楳図先生が、怒りっぽい母親を小学館集英社プロダクションプロデューサーの増田 将氏が、そして酒びたりの情けない父親を楳図かずお研究家であり女流漫画家の金子デメリンさんが演じています。性別を越えたアブノーマルなユニット。
新宿の裏通りを根城に、日陰者の流しの報われない身の上を歌い上げる恨み節な本格ド演歌。
御年75歳の先生による狂い咲きのようなコブシを効かせた凄みのある熱唱が聴きどころです。素晴しいです。
そして金子デメリン女史の爪弾くガットギターの哀愁の音色。
作曲はアニメやドラマの劇判で有名な川井憲次氏によるものです。
アルバムバージョンは多田三洋氏による別アレンジでエンディングが派手です。
女装の先生と増田氏の怪しげなムードも受け入れる新宿の街の懐の広さ。
カップリングは「ああ、レディハリケーン」。
そうです、近田春夫さんのテクノ歌謡の名曲は楳図先生の作詞でした。
♪ラメのボタンをいじくりながら
バストを右手でたしかめてみる
ではじまる奇才漫画家による異色な歌詞の世界観はフィリップ K ディックを愛する近田さんにハマっています。
楳図バージョンは多田三洋氏によるアレンジでスパニッシュギターをフィーチュアしたフォルクローレ歌謡。ドラマティクなメロディと哀愁の演奏がマイルドにブレンドされています。
続いては、「新宿烏」の〈新宿バージョン〉。
新宿の街路で実際に楳図先生と夫婦烏がギターでの弾き語り演奏しているようなシチュエーションです。
《流し》の現場を目撃してしまったような、何とも云えない気分になります。
都会の煤けた喧騒に囲まれながら、オリジナルバージョンよりもくどい先生のドスの利いた熱唱は狂気寸前。よく物まねタレントが、森進一が「おふくろさん」を歌う真似をするときのような大仰さを感じます。
増田氏の怪しいハーモニーもムード満点。
もう1曲、再び「ああ、レディハリケーン」は〈Guwashi Version〉。
こちらは川口法博氏によりロックバンド風なアレンジが施されています。
「ああ、レディハリケーン」というと、何と云ってもこの映像ですね。
近田春夫さんの70年代でのテレビ番組でのパフォーマンス。
最高です。
バックで演奏するのは BEEF。
後にジューシィフルーツで活躍する面々が参加していますね。
イリアさん、カッコいい。
沖山さん、柴矢さんもいます。
ノゲラさんもいますね!
シンセサイザー奏者は茂木由多加さんでしょうか。
最後は「新宿烏」のカラオケ。
因みに本シングルの初回盤には楳図先生のトレーディングカードが付いてきます。
カードには数パターンあり、当たりが出ると楳図ハウスにご招待!とのこと。
残念ながら僕は外れました。
アルバムにもトレカが付いてましたが、外れました。
シングルに付いてきたカードはこれです。
う〜ん、無邪気な先生。
「闇のアルバム 2」。
漫画家の余技を越えた異色の本格オルタナティヴ歌謡。
あの日に見たフシギなユメの続きのような、でもユメじゃない音楽。
ヴァイタリティ溢れる先生の音楽。
いつまでもお元気で!
ちなみにアルバムの解説はロック漫筆家の安田謙一さんが担当されています。
僕が好きな楳図作品は「わたしは真悟」「イアラ」「漂流教室」です。
最近は過去の作品の復刻が盛んなのでもっとイロイロ読んでみようと思っています。
『新宿烏』《VICL36649》〈作詞:楳図かずお/作曲:川井憲次/編曲:楳図かずおと夫婦烏〉(02’54’’)【2011】
- アーティスト: 楳図かずお,楳図かずお,Dominique Chagnon,Paul Anka,高田弘,安西史孝,小田啓義,藤野浩一
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2005/06/29
- メディア: CD
2011-11-11 01:21
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