『ONE OF THE BROKEN / PREFAB SPROUT』

こんにちは。
去年の3月11日の震災が起きたとき、夜勤上がりで自宅で眠っていました。
地震に気づかずに。
三重県に住んでいました。
今年は大阪で。
やっぱり夜勤上がりで。
地震が起きた時間には達郎さんのラジオを聴いていて、番組内で黙祷を捧げました。

あの日以来、さらなる無力さと空しさがいつも伴っている気がします。
そして後ろめたさ。
人生は不公平。
それでもやっぱり生きて行くのだと自分に言い聞かせながら。

達郎さんの番組でオンエアされた楽曲はレクイエムの様な響きを持っていました。

そして僕がブログで取りあげるのはこんな曲。
プリファブ スプラウトの「ONE OF THE BROKEN」。
不朽の名作「JORDAN :THE COME BACK」からの１曲。
シングル「JORDAN :THE EP」から。
タイトル通りこれは「よりぬきヨルダン ザ カムバック」と云った赴きのコンパクト盤。

「ONE OF THE BROKEN」はパディ マクアルーン流のゴスペルソング。
勿論、パディ氏が作るので一筋縄ではいきません。
神を讃えるのですが、この曲では神を主人公にしているのです。
神様側から賛美歌をとらえています。

♪やぁ　こちら神様だよ

という身も蓋もない唄い出しから

♪昔はこんなふうに気軽にわたしと話が出来たのにね
〔中略〕
　こんな風に話したのは本当に久しぶりだね
　一体わたしに何を言えば良いかと悩んでいるなら

♪わたしに向かって深い献身の賛美歌など歌ってくれるな
　ゆったりと甘いメロディなど歌ってくれるな
　弱き者の一人にむかって歌うがいい
　そのとき、兄弟よ、あなたの歌はわたしに届く

と、〈ゆったりと甘いメロディ〉に乗せて歌われています。
それも極上のメロディで。メロディの詩人、パディ マクアルーン。
勿論、神を冒涜するような意図は無いはずです。
この曲を作ったパディ氏はカソリックの神学校出身なのですから。
熱心なクリスチャンです。



傷ついた者へ捧ぐ、深い労りと安らぎを込めたパディの歌声。。
暖かに穏やかに流れるメロディ。
ウェンディの天使のようなコーラス。
プロデューサー、トーマス ドルビーのオーケストレーションも素晴しい。
名曲ですね。

A面二曲目はアルバムのタイトルトラックでもある「JORDAN : THE COME BACK」。
この曲もクリスチャンのパディ氏らしい歌の世界。
洗礼者ヨハネがイエス キリストに洗礼を授けたのがヨルダン川でした。
そんな宗教の話は置いといて。
屈指のメロディメイカー、パディ マクアルーンとサウンドの魔術師、トーマス ドルビーのコンビが生み出したポップミュージックのミラクルがこの曲にはあります。
イントロからワクワク。
めくるめくメロディ展開に心が解き放たれます。



B面に移って。
1曲目は「CARNIVAL 2000」。
このアルバムがリリースされたのが1990年ですので、十年後に控えた紀元二千年へ向けて、一足早い祝祭の宴をサンバのリズム乗せて。



二曲目は「THE ICE MAIDEN」。
一転して、辺り一面を吹雪舞い散る真冬の氷の世界へ導くクールなサウンド。
「わたしは氷の乙女…」と歌うのウェンディ スミスの魅力が妖艶なり。
マイナー調のミステリアスな旋律と凍てつくようなサウンド エフェクトも効果的。

19曲を収録した大作「JORDAN : THE COMEBACK」の予告編と云うような魅力たっぷりの4曲。

こういう世知辛い時代にこそ、パディ氏の万人の心を豊かにするメロディは必要だと思います。
是非、是非、近いうちに新しいアルバムを！
WHAT THE WORLD NEDDS IS PREFAB SPROUT'S SONG .
ファンはろくろ首のように長く長く待っています。
愛と平和をこめて。

『ONE OF THE BROKEN』《SK 49》〈Words and Music by Paddy McAloon〉（03'52''）【1990】

Jordan: The Comeback

• アーティスト:
• 出版社/メーカー: Columbia Europe
• 発売日: 1990/08/28
• メディア: CD