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『悪魔のようなあいつ/井上尭之バンド』 [サントラ]

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こんにちは。
先日、面白いドラマを観ました。
最近のではないのですが、
「七人の刑事」の70年度版(1978〜’79)。
芦田紳介主演による往年の刑事ドラマです。
幼少の頃に家族と一緒に観た記憶があります。
山下毅雄氏によるテーマソングが有名ですね。
男性の低音のハミングによる哀愁のメロディに聴き覚えがおありだと思います。。
芦田紳介さんが劇中で着ているハンチング帽、そしてトレンチコートという出で立ちはドリフやお笑い芸人の刑事コントでよく見かけました。その刑事像は実在する刑事である「鬼の八兵衛」こと平塚八兵衛氏がモデルになってるそうです。

このドラマ自体にに殊更興味があった訳ではないのですが、
映画監督の長谷川和彦氏の脚本で、ジュリーこと沢田研二さんがゲスト出演する回がCSで初めて放映されると云うコトで、とても楽しみにして観ました。
“ゴジ”と云う愛称で知られる長谷川和彦監督とジュリーのコンビと云えば、邦画ファンなら知らねばモグリのカルト映画「太陽を盗んだ男」(’79)ですね。
僕も大変大好きな映画なのですが、この映画に先立つこと一年前にこの映画のコンビでドラマを撮っていたことは70年代のドラマに関するマニアックな書籍で知っていましたが、こうして見ることが出来るようになるとは…。
放送されたドラマのタイトルは「ひとりぼっちのビートルズ」。
ジュリーは連続ライフル射殺事件の犯人役です。
その事件から遡ること約一年前、深夜ラジオの女性DJが謎の自殺を遂げます。
そのラジオ番組の女性DJに只ならぬシンパシーを覚えていた都会のタクシー運転手のジュリー。孤独さが滲み出ています。
あるときタクシーに偶然乗せた男性客たちがそのDJを自殺に追いやったことを知るジュリー。
こうして彼は入念な計画を立ててその男たちに復讐を決行。
ドラマの中で女性DJが愛したビートルズの「Let it be」が執拗に流れ続けます。
復讐すること以外に生き甲斐のないニヒルな青年を好演するジュリー。
そして犯人ジュリーを追いつめる七人の刑事たち。
なかなか見応えのあるドラマでした。
犯罪に手を染めるニヒルな青年像は続く「太陽を盗んだ男」での愉快犯、城戸 誠役に通じますね。
都会に生きる孤独なタクシー運転手と云う設定はマーティン スコセッシ監督の「タクシードライバー」からの翻案と考えて良いでしょう。
この二本の映画のそれぞれの脚本家たちは、実の兄弟関係にあると云う事実も数奇です。
レナード シュレイダーとポール シュレイダー。
因みに、70年代版の「七人〜」の音楽を担当しているのは“PICO” こと樋口康雄氏。
ヤマタケ氏はテーマソングのみ。

さらに「七人の刑事」から遡ること3年。
ゴジ&ジュリーによる連続TVドラマがありました。
今回取りあげる「悪魔のようなあいつ」(1975)です。
二本ともTBS制作。
脚本はゴジさん。
プロデューサーは久世光彦氏。
音楽は「太陽を盗んだ男」と同じく井上尭之バンド。
「太陽にほえろ」でお馴染みですよね。
そういえばジュリーは「太陽にほえろ」でも犯人役としてゲスト出演しています。マカロニ刑事編で。
ジュリー&ショーケン、そして井上尭之バンド、つまり“ほぼPYG”ですね。
70年代のジュリーの歌のバッキングも務めていた井上尭之バンド。
このドラマも70年代のドラマファンの中では語り草な一本。
1968年(昭和43年)に東京は府中にて起こった三億円事件をモチーフに作られたドラマ。
勿論犯人役はジュリー。
横浜の高級クラブの専属歌手として働く謎の男。
「七人の刑事」「太陽を盗んだ男」そして「悪魔のようなあいつ」。
ジュリーにピカレスク ロマンはハマり過ぎですね。
後年、深作欣二監督による映画「魔界転生」でも不敵で妖艶な天草四郎を演じますね。
余談ですが、先述した名刑事、平塚八兵衛氏も三億円事件の捜査担当にあたっていました。

さて、「悪魔の〜」は数年前にDVD-BOXとして発売されていますが、高いのでちゃんと観ていません。
横浜にある放送ライブラリーで一話だけ観ましたが、良かったです。
藤 達也さん、若山富三郎さん、荒木一郎さん、安田道代さん、篠 ひろこさん、尾崎紀代彦さんなど、キャストも錚々たる顔ぶれでした。
この記事をアップするにあたり、ちゃんと観てみたいです。レンタルしよう。

という訳で、ようやくシングルの話題に。
井上尭之バンドによるサウンドトラック アルバムが当時リリースされました。
このドラマ単体ではなく、同じく久世光彦氏によるプロデュースのTBSドラマ「寺内勘太郎一家」のサントラとのカップリングで。こちらも井上尭之バンドが音楽を担当していますが、内容は好対照です。シリアスな「悪魔の〜」とコミカルな「寺内〜」。
そのアルバムからのシングルカット。

A面は「男たちの夢」という楽曲。
インスト曲です。
16ビートの硬質で重量級なリズムを基調としたファンクなR&B。
田中清司氏によるタイトなドラミング、
そして日本を代表する名脇役でもある岸部一徳(旧名:修三、元タイガース)ハネるベースライン。
この二人の別妙なリズムがメチャクチャカッコいいです。
ギターの井上尭之さん(元スパイダース)、速水清司さん(元ジプシーブラッド)のワウギターのカッティング。
ドラマティックなフレーズをブロウするホーンセクション。
大野克夫さん(元テンプターズ)が操るシンセサイザーの旋律のスケールが大きく。
当時のニューソウル系黒人ミュージシャンが手掛けたブラックムービーのサントラの如き都会的でスリリングなサウンドが堪能出来ます。

B面は「良の夢」。
良とはジュリーが演じた主人公、可門 良のコト。
夕焼けが都会の高層ビル街を静かに染めるような、穏やかに叙情的なバラード演奏。
井上尭之さんの哀愁のギターソロがしみじみ響きます。
ゆったりとした大河の様なリズム。一徳さんのベースの音色も良いのです。
このドラマが一徳さんの俳優としてのデヴュー作でありました。

因みにこのドラマではジュリーのヒット曲「時の過ぎゆくままに」がテーマ曲に使われました。

「悪魔のようなあいつ」「寺内勘太郎一家」「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」、そして映画では「雨のアムステルダム」「アフリカの光」「青春の蹉跌」などなど、70年代当時の新しい価値観を持ったドラマに相応しい、若々しく野心的で、メロウな大野克夫さんのメロディ。
その大野メロディは現在でも「名探偵コナン」の劇判で活かされています。

話は「七人の刑事」に戻って、ジュリーがゲスト出演するエピソードは「ひとりぼっちのビートルズ」の他にもう一本あるそうで、そちらも多分、CSでオンエアされると思います。
楽しみ。

願うことならば、ゴジ監督にもう一本新作映画を撮ってもらいたいです。
どうか、ひとつ!

『男たちの夢(オリジナルサウンドトラック「悪魔のようなあいつ」より)』《DR 1959》〈作曲・編曲:大野克夫〉(03’04’’)【1975】


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コメント 2

ノリ

「悪魔―」はワタクシもYouTubeでドラマの一シーンを見ただけなんです。内容が内容だからCSではやらないかなぁ。大野さんや井上さんたちの70年代の仕事はどれもカッコ良くて、ドラマのジャンルは幅広いのにセンスの良さは共通ですね。その反面ヤマタケさんの仕事は70年代中盤から減少…時代の流れでしょうか。
でも生前に再評価されて報われましたね。
by ノリ (2012-07-22 01:51) 

都市色

>ノリさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
ジュリーやショーケンの活躍の背後で大野さんや井上さんたちの素晴しいバックアップ。
彼らが70年代のドラマを面白くしていましたね。
岸部一徳さんも現在も第一線で活躍されていて。
加瀬邦彦さんも故井上大輔さんも良い曲を沢山残しているし。
マチャアキも順さんもムッシュは今も元気だし、あの時代のGSの皆さんの才能の豊かさには驚きます。
by 都市色 (2012-07-22 14:02) 

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