『It might as well rain until september / Carole King』 [オールディーズ]
こんにちは。
ようやく九月です。
大好きな、夏の終わりの始まりです。
柔らかな太陽の日差し、涼しげな風。
今年の八月はちょっと個人的にハードでした。
そんな訳で“九月”に因んだポップソングを。
キャロル・キングの「It might as well until september」。
70年代にシンガーソングライターとして大成する以前、
プライベートでもパートナーであったゲリー・ゴフィンと組んで主に作曲家として活躍していた60年代初頭の作品。
まだ片手間に歌っている感じですね。
なんといっても元々はデモ音源だったのですから。
ドン・カーシュナーが設立したディメンション・レーベルからのシングル曲。
♪ 何を書こうかしら?何て言おう?愛しのあなたに… ( ̄~ ̄;)ウーン
なーんて乙女チックな歌詞のバースから始まるのが良いですね。
ペンを片手にラブレターの前で唸っている感じ。
アイドル歌手っぽくて良いですね。
作曲家として活躍し始めた当時はまだ20歳そこそこですからオッケーですよね。
周りの友達が夏に浮かれているけど、
大好きなあなたが遠くに離れているんだから、
私にとってはお天気なんてどうでもいいコトだわ。
いっそのこと、九月まで雨でも構わない!
お百姓さんが聞いたら悲しむであろう言葉を、平気で言い切れるのが利己的な十代の特権でしょう。
若さです。
誰が言ったか知らないけれど、言い得て妙の「そばかすヴォイス」でウララカにティーンエイジャーの取るに足らない悩みを歌っています。
オールディーズ然とした無邪気でキュートなメロディ。
歌詞は切ないですけど、旋律はカラッと晴れがましい。
大サビでの盛り上がり方、転調、グッと来ます。“It might as well rain until september”という少し長めのフレーズをぴったりメロディに載せてるのも見事だと思います。
アレンジもキャロル・キングが担当していて、雨粒のように弾けるピチカートの音色がドラマティックですよね。
九月の歌ってメロディは爽やかだけど、歌詞はセンチなのが多い気がします。
B面は「Road to nowhere」。
この曲はディメンション時代から約5年後、1967年の作品。
この時期にゲリー・ゴフィンとTomorrowというレーベルを起こしてそこからリリースします。
三連のフォークロック風ナンバー、スペクターサウンドを髣髴させる深い音像がいかにも激動の60年代後半っぽいですね。暗雲が垂れ込めるような音の壁。
あっけらかんとした「It might as ~」の1962年からたった5年でこのような思慮深いサウンド。
ロックンロールが社会的にも大きな影響を与えだした時期。
あの時代の変化の速さを感じます。
我々はあてのない道を降りなければならない。
あてのない道から降りる時期が来たのだ。
青春の挫折を感じさせるゲリーさんの歌詞。
キャロルの力強い歌声は青春の痛みを滲ませています。
ソングライターとしてもシンガーとしても成長を感じます。
このシングルをリリース後、レーベルを閉鎖
さらに1968年にキャロルとゲリーは離婚します。
こうした60年代の前史があってこその70年代での活躍なのでしょう。
心身ともに成熟した彼女の歌が疲弊した70年代のアメリカを癒しました。
という訳で、
本日紹介したのは80年代に英国のLONDONレコードから出たオールディーズ系の再発シングルでした。
キャロルキングといえば、少し前に公式なデモ音源集が出ましたね。
僕はまだ買ってないのですが。
さらに数年前に出たブートまがいの二枚組のデモ音源集はよく聴きました。
キャロル・キングのデモテープは宝の山ですね。
ティンパンアレーの狭いビルの一室で生み出されたポップな遺産なり。
数年前にジェームズ・テイラーや仲間たちと共に来日した彼女はとっても元気でしたっけ。
明日もお楽しみに。
『It might as well until september』《OG 9355》〈Witten by Gerry Goffin and Carole King〉(02'22'')【1962】
Goffin & King: A Gerry Goffin and Carole King Song Collection 1961-1967
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Ace
- 発売日: 2007/10/09
- メディア: CD
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