『I’ll never fall in love again / Dionne Warwick』 [米国ロック/60年代]
こんにちは。
10月ですね。
台風も去って、空気が冷たく感じられるようになりました。
本日取り上げるのは名曲中の名曲。
ポップミュージック界屈指の名コンポーザーコンビ、バカラック&デイヴィッド
ハル・デイヴィッドが9月3日にお亡くなりになりました。91才でした。
偉大な20世紀の作詞家に哀悼の意を込めて。
ディオンヌ・ワーウィックのシングルから、『I'll never fall in love again』。
この曲はもともと、ブロードウェイミュージカル「Promises, Promises」の為に作られた楽曲のひとつでした。
この舞台の原題にピンと来なくても映画「アパートの鍵貸します」の舞台化と云えば、ご存知かと思います。
「アパートの鍵~」、僕もとっても大好きな映画です。
何度も観てますが、1、2年前に午前十時の映画祭で劇場のスクリーンで観た時は特に感動しましたね。
映画版はアドルフ・ドイッチが音楽を担当しましたが、舞台版はバカラック&デイヴィッドが担当しました。
脚本は映画版はビリーワイルダーとI・A・L・ダイアモンドが担当していますが、舞台版は二ール・サイモンが担当しました。都会派人情喜劇の王様。
1968年に初演が開かれ、以来1972年までに1281回も上演されるというロングラン公演を記録する名作舞台。
僕は知らなかったのですが、日本でも今年の春に上演されていたのですね。
観たかったなぁ。
バカラックも九月に来日公演をしましたね。
いつまでもお元気で。
さて、『I'll never fall in love again』、邦題は『恋よ、さようなら』。
映画版をご存知の方ならば、歌詞の内容も何となくお分かりになるでしょう。
物語の中でシャーリィ・マクレーン扮するフラン・ク-ベリックは会社の上役と不倫をしますが、結局、大人の恋は成就せず、失意の果てに睡眠薬を飲んで自殺を図ります。
この歌はそんな失恋の痛手を唄っています。
悲しい歌ですが、以外と歌詞もメロディも明るいのですね。
What do you get when you kiss a guy?
You get enough germs to catch pneumonia.
After you do, he’ll never phone ya.
I’ll never fall in love again!
Dontcha know that I’ll never fall in love again
あなたが男性とキスをしたらどうなるの?
ばい菌を移されて肺炎になっちゃうでしょう
それで彼からも連絡が途絶えるでしょう
もう二度と恋なんてしない
わかるでしょ?もう恋なんて沢山
ユーモラスですね。
“pneumonia”と“phone ya”の駄洒落のような押韻も楽しい。
「Inspiration」という本にて、バカラックのインタビューによれば、この曲を作る直前まで肺炎で入院していたそうです、そのことをハル・デイヴィッドが歌詞にしたそうです。
退院して、舞台の開演の前日にわずかな時間で書き上げたそうです。
失恋の歌と思えないような、澄み渡るような、明快で上品なメロディですよね。
悲しみに暮れて、さんざん泣きはらした後のスッキリと落ち着いた心境なのかも。
ディオンヌのしなやかな歌声も素敵ですね。
彼女の歌により1969年にヒットしました。
アレンジはバカラックとラリー・ウィルコックスによるもの。
B面は『What the world needs now is love』。
こちらもゴールデンコンビによる不朽の名作、永遠の愛のテーマ。
この曲は、1965年にジャッキー・デ・シャノンの歌で大ヒットしましたね。
上記の「Inspiration」によれば、
最初この曲はディオンヌに聴かせたところ、気に入ってもらえずデイヴィッドの勧めによりジャッキーデシャノンが歌うことになったそうです。
「世界は愛を求めている・・」というデイヴィッドのユニヴァーサルなメッセージを受け止めるスケールの大きなメロディ。
魂を揺さぶらずにはいられないダイナミックで華麗なメロディ。
軽快なワルツに乗って、決定的で簡潔な言葉が歌われます。
アレンジはゲイリー・シャーマン。
今、世界が求めているのは愛
愛、甘美な愛
それはあまりにも少な過ぎるものだから
今、世界が必要としているのは愛
愛、それは素敵な愛
わずかな者たちへだけではなく、あらゆる者への愛を
何も云うことはありません。
僕が言うまでもなく世界中で様々な歌手によっていまだに歌い継がれている作品ばかりで好きな曲を上げたら枚挙に暇がありません。
バカラックのメロディとデイヴィッドの言葉が拮抗するように高度に結びついた歌たち。
最後にデイヴィッドの言葉を引用してお別れしましょう。
“私が思うに、曲のコツというのは、それが“書かれた曲だとは思えないように聞こえる”ことなんだと思う。
ふたりの人間で書いた曲、3人で書いた曲、ではなくて、ひとりの頭のどこかから生まれたかのように聞こえること。それが理想だ。
歌詞はいいのに、音楽が歌詞の引き立て役にしかなっていないような曲をよく耳にする。音楽自体の個性が感じられないんだ。そういう曲は、聴き終えて歌詞はいいなと思っても、これではすべてが間違っていると思えてしまう。曲というのは、一体になっていなきゃだめだ。音楽と歌詞の両方が良くて、ひとつになってなきゃだめなんだ。”
バカラック&デイヴィッドは〈バカラック〉と〈デイヴィッド〉ではなく《バカラック&デイヴィッド》なのですね。
名作詞家よ、永遠に。
『I'll never fall in love again』《SCE-12273》〈Music : Burt Bacharach / Words : Hal David〉(02'52'')【1969】
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