『知らない/星野 源』 [星野 源]
こんばんは。
星野 源さんのシングルを取り上げましょう。
今年3枚目のシングル、タイトルは『知らない』。
『寒いね。』
『知らない』
スケールの大きなバラードです。
ゆったりと丁寧に編まれたメロディが、歌詞の綴る主人公の感情に寄り添います。
“別れ”をテーマにした歌詞は星野さんが手がけるとまた一味違った風景が垣間見られます。
“知らない”を“strange”と表記した意味とは。
70年代のカントリーロック風な滋味さを湛えた、じっくり腰を据えたアコースティックな演奏。
そして雄大なストリングスが厳かに歌の背景に奥行きを与えます。
北風が吹きすさぶ、真冬の厳しい寒空の下、河川敷から望む雄大な夕焼け。
果てしない空の向こう、見知らぬ明日に人は勝手に希望や絶望に思いを馳せます。
安易な希望で誤魔化したりせず、絶望に向き合う、星野さんの等身大の心の強さを言葉に感じます。
星野さんの大きな歌を聴いた後は、この不確かな人生をとりあえずでも歩き出したくなる気分になります。
大きな夕焼けのようなバラード。
二曲目は『ダンサー』。
イントロなしで星野さんの歌と共に始まるアコースティックなアンサンブル。
伊藤大地、伊賀 航、高田 漣、野村卓史諸氏、気心の知れたメンバーたちの、軽やかにドライヴする演奏がとにかくご機嫌です。
タイトルとおりにステップを踏みたくなるサウンド。
生演奏が徐々にヒートアップしてテンポも走り出すのが楽しい。
特に高田 漣さんの終盤のペダルスティール・ソロは走りすぎて空に舞い上がりそうな勢い。
自由に踊ることで悲しいコトを忘れちゃいましょう。
三曲目は『季節』。
ハートウォームなメロディのミディアムスローなフォークソング。
OKAMOTO'Sのハマ・オカモト氏(お父さんは超大物関西芸人)による太くリズミカルなベース演奏が楽曲をさらに魅力的に響かせています。
Aメロは星野さんが出演した『佐野元春のソングライターズ』での課題曲に少し似ていますね。
星野さんと元春の歌詞についての談義、とても面白かったです。
元春が和製ミュージカルの傑作『君も出世ができる』について言及したときの、星野さんのわが意を得たりな表情が忘れられません。この映画、僕も大好きです。いつか星野さんが主演するミュージカルを観て見たいです。
実現するといいな。
四曲目はおなじみ〈House Ver.〉コーナー。
横山 剣さん的に表現するなら、〈星野 源、自宅録音シリーズ〉でしょう。
根っからの音楽好きな剣さんと源さん。
密室感のある一人多重コーラスを効果的に利用した内省的なうたとことば。
静かな内面の底から遠い光を待つような。
そして彼のシングルの初回盤はおなじみの特盛りな映像特典DVD付き。
今年五月の日比谷野外音楽堂でのライヴ、タイトル曲のPV、そしてメイキング映像などなど。
70分近い内容で楽しませてくれます。
それから、初回盤のパッケージはCDケースをペーパースリーブが包んでるのですが、
表のペーパースリーブのジャケットを外すと、CDケースにもジャケット兼歌詞カードが入ってます。
そのジャケットの写真がまた星野さんらしくて好きです。
ユーモラスな人柄が滲みまくってます。
その写真は初回盤を買った人たちだけの密かな悦しみ。
振り返れば、今年三枚もシングルをリリースしていてそれらに収録された楽曲を合わせればアルバム一枚分に相当してますね。
質、量共に充実した楽曲たちにこの一年支えられました。
ありがとう、と言いたいです。
来年もよろしくお願いします。
『知らない』《VIZL510》〈作詞・作曲・編曲:星野 源/ストリングス編曲:岡村美央、星野 源〉(04’47’’)【2012】
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