『New Orleans / Land of a 1000 Dances ／Watts Little Angel Band』

お早うございます。
ハイ、ドンドン参りましょう！
もっとファンキーに、もっとプリミティヴに！

ちびっこドラム団参上！！

ゲットー・ブラザーズが東海岸の荒くれ者なら、今回取り上げるワッツ・リトル・エンジェル・バンドは西海岸の傷だらけの天使たち。
ギャングスタラップの始祖。

1965年8月、アメリカはカリフォルニア州、ワッツ市（現在はロサンゼルス市に吸収）で起きた、黒人市民らによる暴動事件（ワッツ暴動）。
市内をパトロール中の白人警官が蛇行する自動車を呼びとめ、取り調べを行い、
運転していた黒人青年に酒気帯び運転の疑いがあると逮捕。
警官の周囲にはいつのまにか近隣の黒人市民たちが・・・・・。
睨み合う警官と市民たち。
やがて警官が警棒で彼らを威嚇したことを契機に乱闘から大規模な暴動へ。
以後、鎮圧されるまでの6日間に渡って、死者34人、負傷者1000人以上、逮捕者3000人以上、被害総額4000万ドル以上が計上される大惨事。
黒人居住区ワッツでの暴動には折からの黒人差別、生活水準の低さ、雇用情勢の悪化、が問題とされていました。
公民権運動の高まりにより、アメリカ各地でも同様の暴動が表面化していました。
同年3月にはアラバマ州で“血の日曜日事件”も起きています。

その後、ワッツ市街の復興も遅々として進まず、ますます街は荒んでいくばかり。
日々、荒廃する街で、教育もまともに受けられないチビッ子たちが立ち上がった！！
道端に転がっているドラム缶や廃材、鉄屑を手に。
R&Bの流行歌を思い思いに叩きまくって、日常の憂さを爆発させます！！
目の前に横たわる諸問題、親からの虐待や、売春、麻薬取引、そして人種差別。
それらを全部叩き壊す勢いで。

そんな彼らのパフォーマンスを地域の活動家が注目。
地元のWatts Writers Workshop（ワッツ暴動を機に結成された地元アフリカン・アメリカンの作家組織）の協力の下、彼らの唄と演奏をロサンゼルスのスタジオでレコーディング。
ゲイリーU.S.ボンズの『ニューオリンズ』とウィルソン・ピケットの『ダンス天国』をメドレーでカヴァー。

ウィルソンさんもゲイリーさんもビックリ。
オリジナル・バージョンを凌駕する初期衝動！
打楽器だけで構築されたメタリックでパーカッシヴなグルーヴ。
迫力があります。
子供たちの情熱的でやんちゃな歌声とソリッドなリズムが織り成す唯一無二のリズム＆ブルース。
驚くほどにパンチが効いています。
音楽の素養のない名も無き子供たちですがその情熱が全てをチャラにします。
世情の闇を突き抜ける、声変わり前のシャウト！

　ドンドン！　ドンガラガッタ！！

〝C'mon !
　　Everybody !!
　　Crap your hands !!!〟



Amazing !!
子供だてらにソウルフル。
パンクなジャグバンド。
Doo-Wopの異形。


B面は『Nik Nak Paddy Whack』。
昔から伝わる子守唄を例によって、スクラップの打楽器を叩きながら歌っていますが、フルートとピアノも伴奏に参加。
童謡なので等身大の子供たちらしい無邪気さが伝わって、いかにもチルドレンコーラスって感じでほのぼのします。


このシングルが録音されたのが1971年。
ガキンチョ達によるニューソウル運動と云っても過言ではないでしょう。
ワッツ・ゴーイン・オン！
なんちゃって。
今回の7インチは、世界各地／辺境に存在する幻のレコードを開放し続ける再発専門レーベル、em recordによって再発されました。ありがとうございます。
拙ブログではこのレーベルからリリースされたNora Guthrieのシングルも過去に取り上げています。

子供たちの歌もの音楽ってどうしてこんなに感動的なんでしょう。
エイブラム先生とストロベリーポイント小学校の児童とか、The Langley Schools Music Project とか。
大人になった誰もが持つ共有概念としてのノスタルジーに訴えるものなのでしょうか。

『New Orleans / Land of a 1000 Dances』《EM1103》〈Royster-Guida / Kenner-Domino〉（02'19''）【1971】

New Orleans / Land of A 1000 Dances (analog 7 inch) ニュー・オリンズ/ダンス天国 [Analog]

• アーティスト:
• 出版社/メーカー: EM RECORDS
• 発売日: 2012/11/24
• メディア: LP Record