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『おれは鉄兵/藤本房子、こおろぎ'73、コロムビアゆりかご会』 [アニメソング]

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こんばんは。
更新が空いてしまいましたが、その間も7インチをバンバン買っています。
買い過ぎて、何を取り上げようか考えあぐねているうちに時間が過ぎてしまう感じです。

ところで、
六月の終わりから7月の始めの一週間、大阪は梅田の阪神百貨店で『ちばてつや原画展 』が開催されて、観に行きました。
二年ほど前から全国各地を巡回していたイベントでした。
ちば先生の画業55周年を記念しての企画。
他の地方で開催されているのを羨ましく思い、早く関西でも行われないかなぁ、とずっと思っていました。
半年前ほど、兵庫県の夙川にある大手前大学でも先生の原画展が行われましたけれど、現行のイベントよりも小規模な内容でした。
勿論そちらへも参加しました。
という訳で、原画展の最後の開催地が大阪でした。

原画は200点ほど展示され、その内の100点が『あしたのジョー』からのモノでした。
日本漫画史に残るスポーツ漫画の金字塔。
高校時代に夢中で読んだ漫画の生原稿を見られるなんて感激でした。
ジョーがドヤ街へ踏み入れる第一話、少年院での力石戦、そして少年院を出てからのプロボクサーとしての再戦、ラストシーンへの布石となる、乾物屋の紀ちゃんとのデートシーン、遂にホセ・メンドーサとの世界戦、そして伝説のラストシーン等々。
数々の名場面が肉筆の迫力のある描きこみで蘇ってきました。
先生の絵は基本フリーハンドですべてが描かれており、ペンタッチの勢いがひしひしと伝わってきます。
微に入り、細に入ったペンの描きこみ。
原稿を知らず知らず食い入るように観ていて、気が付くと涙がボロボロこぼれてきました。
泣けて泣けて仕方がなかったです。
十代~二十代の頃読んだ『あしたのジョー 』、『あした天気になあれ 』、『飢鬼 』、『おれは鉄兵 』、『のたり松太郎 』、『ちかいの魔球 』、『紫電改のタカ 』など思い入れ深い作品たちが、懐かしい友達のように生き生きと原稿から僕に語りかけてくるようで、嬉しさの感激の涙でした。
三十代を過ぎてからさらに遡って少女マンガを描いていた時代の先生の作品も読みましたが、抜群に面白かったです。
ユカを呼ぶ海 』、『テレビ天使 』、『島っ子 』、『1・2・3と4・5・ロク 』などなど。
先生の描く清楚で、品があって、陽気な美少女の絵がとても好きです。
ちばてつやの漫画について語りだしたら止まらないので、ほどほどにしておきましょう。

この世界にはさまざまな個性を持った人間がいますが、
ちば先生の描く漫画は、そんな様々な立場や性格の人間を丸ごと受け入れる寛大な世界観を持っています。老若男女を問わず、社会的な弱者も非道で反社会的な人間も生き生きと描きます。
狭い杓子定規で人間を判断せず、寛容な心でキャラクターを描写。
“生きることの肯定”が作品に貫かれています。

大のちばてつやファンである江口寿史さんは、

“ちばてつやは巧みにストーリーを紡ぐ作家ではない
人生を人間を描く作家だ
それも深く 丹念に
主人公だけでなく
そのまわりの一人一人がちゃんと
それぞれの人生を生きている
それぞれの人生のからみあいがストーリーになるのだ
図抜けたストーリーテラーだが登場人物は物語を進めるための
駒でしかない手塚治虫とはその点が両極といっていいほど違う。
つまり、漫画界全体を家族とすると手塚治虫が父なら、ちばてつやは母であると!”

キャラクターの成長、そしてキャラクター同士の関わり合いが、すなわち物語の展開に直結しているのがちば漫画です。
当たり前のことを書いているかもしれませんが、人間観察に秀でたちば先生が描く人間ドラマはひと際面白いです。
人間同士の絶妙な駆け引きを描きやすい格好の手段が『スポーツ』なのかもしれません。
ちば先生の優れているところは個性的なキャラクター造形だけではなく、
物語の展開の仕方にもあります。
大友克洋さんや高橋留美子さんなどの第一線で活躍されている現役漫画家が漫画を描く上でちば先生の漫画のコマ割りをお手本にしていたというエピソードもあります。

ほどほどにしておくと書きながら、まだ書いている・・・・。

まぁ、とにかくちばてつやは素晴らしいのです。
会期中にはサイン会も開かれ、勿論参加しました。
もう本当にお会いできて光栄でした。
お人柄も素晴らしかったです。
現人神、ちば先生。


という訳で、ちば先生に敬意を表して、ちばてつや作品のシングルを。
あしたのジョー』はすでに取り上げましたので、

おれは鉄兵 』を紹介しましょう。
1973年、『あしたのジョー 』の終了後のわずか三カ月後、同じく少年マガジン誌上で連載開始された作品。
ジョー 』に次ぐヒット作品となり、7年間連載されました。
埋蔵金探しに夢中になる父親に連れられて山奥を転々とする少年、鉄兵が父親とともに騒動を繰り返し、
それが元で、この親子の正体がお金持ちの良家の出身だと判明、実家へ連れ戻されて、息子の鉄兵も義務教育を受けることとなり、名門学校へ通い始めるのですが、当然騒動は繰り返されるばかり。
そんな荒くれた学校生活の中で剣道と出会い、鉄兵の並外れた闘争本能と野生で鍛えた腕力で並み居る剣道の強豪たちと戦いを繰り広げる内容。
人気漫画としてこの作品もアニメ化がされました。
1977~78年に放送されました。
僕もうる憶えですが観た記憶があります。
『鉄兵』の影響ではありませんでしたが、高校時代に剣道をしていました。

破天荒で型破りな上杉鉄兵。
“型破り”な主人公が学園で大暴れ、というのは漫画にありがちなモノなのですが、
ちば先生も以前に『ハリスの疾風 』で同じタイプの物語を描いています。
ありがちな話にならないのがちばてつや。
じっくりと、丁寧に、執拗に、鉄兵の悪童ぶりを描き出します。
鉄兵の悪さは結構なモノで、可愛げがないくらい。
ステレオタイプな“型破り”を凌駕します。
ホント、悪い奴なんですが、彼に翻弄される周りのキャラクターが上手く鉄兵の悪さを物語の面白さに変換して、引き立てていきます。
個性豊かなキャラクターたちとの関わり合いによって、鉄兵が成長していく過程が描かれます。
だからといって、鉄兵が改心したり素直な少年になったりといった、判り易い展開にならないがちば先生の良さです。
鉄兵 』の大人版が『のたり松太郎 』という訳で、この二作はほぼ同時期に並行して連載されていました。
鉄兵 』が連載終了後も、『松太郎 』は長期連載が続き、90年代末まで描かれました。
松太郎 』もメチャクチャ面白いですね。
また長くなっちゃいました。

さて、この鉄兵のアニメのテーマソングが今回のシングル。
鉄兵の声を担当していたのが野沢雅子さんという事以外は、アニメ版についてはほとんど忘れてしまいましたが、この曲はよく覚えています。
音楽を担当しているのはご存じアニソンの大家“渡辺宙明”さんです。
まるで鉄兵のように元気で無邪気で人懐っこいメロディが弾けてますね。
イントロのコミカルなピアノ、朗らかなホーンセクション、それぞれのフレーズにニンマリ。
一回聴いただけで耳になじんでしまいそう。
A面はオープニングテーマ『おれは鉄兵』。
歌を担当しているのは藤本房子さんとこおろぎ’73、そしてコロムビアゆりかご会の面々。
藤本さんというと、のこいのこさんと並んでコマソンの女王に君臨する歌姫ですね。
年齢不詳なユニークで愛らしい歌声が魅力です。
この曲では幼い感じの女の子の歌声を表現されてます。
こおろぎ’73の頼もしい歌声とのコンビネーションもばっちり。

♪ それでもダメなら (ドンドン) ダイナマイート どーん!



いまでもときどき口ずさんでしまうアニソンです。
三つ子の魂なんとやら。

B面は『カニさん カニさん』。
同じく宙明先生の作品。
歌も藤本房子さん、こおろぎ’73、コロムビアゆりかご会。
この曲もいつのまにか覚えていたアニソン。
ほのぼのとした童謡風な作品で楽しいです。
オールドタイミーなジャズっぽいアレンジもイイですね。



二曲とも作詞は保富康午さんという方が担当していますが、『カニさん カニさん』では、ちば先生と共作しています。

歌を担当している藤本房子さんはもう一作品、アニソンの名曲を担当してますが、それはまた別の話。

宙明さんというと、特撮ヒーローモノの勇壮なイメージの楽曲が印象的でこういう朗らかな作風は少し意外な気がします。
渡辺岳夫さんが書いたのかと思ったくらいで。
でも、♪ タリラリランのハッタラリン とか♪ ホイホイホホイのホイとか、お得意の擬音風のフレーズが使われているあたりが宙明さんらしいといえばらしいですね。
ご機嫌です。


この歌を聴いていたら、また漫画を読み直したくなってきました。
アニメも機会あったら観てみたいと思います。

さて、さて、
現在は大学の漫画学科の教授や日本漫画家協会理事長を務めるなど、後進の育成や漫画界全般の面倒に忙しい御年74歳のちば先生。
サインを頂いたときに、握手もして貰ったのですが、先生の右腕の握力の強さにびっくりしました。
画業55年を支える拳の逞しさに嬉しくなりました。
衰えを知らないその力強い拳で、きっとまた作品が読めることを楽しみしています。

いつまでもお元気で。


おれは鉄兵』《SCS-378》〈作詞:保富康午/作曲・編曲:渡辺宙明〉(02'09'')【1977】


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