『私はカリオカ／小野リサ』：03'54''：So-net blog

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『私はカリオカ／小野リサ』　[ボサノヴァ／サンバ] [編集]

こんばんは。

今宵お届けしますのは夏に相応しい音楽。

小野リサさんのシングル。
『私はカリオカ』。
この一枚も1998年の夏にリリースされた作品。

同年夏にリリースされた彼女の10枚目のアルバム『ボッサ・カリオカ』からの先行シングル。
このアルバムは初めて買った小野リサさんのアルバムです。
帯には小西康陽さんの惹句が添えられていました。
リコメンド名人の一言に偽りなしの名作。
最近このアルバムが再発されましたが、その帯にも掲載されているのでしょうか。

アルバムのプロデュースを、パウロ・ジョビンとダニエル・ジョビン、そしてリサさんが担当してます。
それぞれ、アントニオ・カルロス・ジョビン（トム・ジョビン）の息子、そして孫にあたります。
そのお二人が関わっているだけあって、トム・ジョビンの名曲を中心として、ボサ・ノヴァのスタンダード曲、そしてリサさんのオリジナルソングで構成された13曲。
基本に忠実に、伝統の継承そして発展。
リオデジャネイロ録音。
自然体でまじりっけなしの本格的ブラジル音楽の魅力に溢れた一枚。

という訳でシングルの『私はカリオカ』。
このシングルには三曲おさめられているのですが、この曲だけアルバム未収録。
さらに間違いがなければ、数種類存在するベストアルバムや企画盤にも未収録の、シングルオンリーの楽曲。
アルバムの方には『彼女はカリオカ（Ela e carioca）』という曲が収録されています。
勿論、セルジオ・メンデスとオス・カリオカスによるボサノヴァのスタンダードのカヴァー。
一方『私は～』はリサさんの自作曲。
作詞はＡｎａ　Ｔｅｒｒａさん。
《カリオカ》とはリオデジャネイロ市民という意味。
ボサノヴァのリズムに乗って、おおらかで優しいリサさんの歌声が聴こえてきます。
シンプルで風通しの良いメロディと演奏に身を任せて。
アコースティック主体のアンサンブルの心地よさ。
金管楽器の涼やかさ。
木陰のような快適さで三分弱の曲が流れていきます。
このシングルだけでしか聴けないのが勿体ない素敵な曲です。

二曲目は『二人（OS DOIS）』。
こちらもリサさんのオリジナルソング。
そして記念すべき初の日本語詞による楽曲。
作詞もリサさん自らが担当。
アルバムにはポルトガル・バージョンが収められています。
優雅な演奏とメロディと日本語の響きの優しさ。
始めて歌う日本語の歌詞への覚束なさも少し感じられますが、自然に流れていきます。
アルバム『ボッサカリオカ』でも一部日本語で唄われる曲があります。

三曲目は『サウダージ（SAUDADE）』。
この言葉はよく日本でも耳にするフレーズ。
数多の星々が瞬く南の国の夜空がイメージできそうな静かで美しい曲。
ゆるやかな夜想曲に漂うリサさんの ♪ Ah・・・・
シングルにはリサさんのスキャットのみでうっすらと唄われていますが、アルバムにはダニエル・ジョビンによる歌詞が付けられて二人で唄われています。
気品溢れる演奏の響き、調べ。

慌ただしく、暑苦しい現代の浮世を超越する小野リサさんのエレガントでナチュラルな音楽性。
その気高さ。
声高に主張せずとも存在感のある彩りを放っています。

と、言う訳で、正確には三曲ともアルバムには収録されていないことになります。
タイトル曲は完全未収録だし、残り二曲もバージョン違い。

今回、大人の音楽~Age Free Musicキャンペーン!として、’90年代の名盤を高音質盤で再発するのなら、
拙ブログで取り上げた、アルバム未収録曲もボーナストラックとして追加してするべきでした。
オリジナル盤がリリースされて15年しか経っていない訳で、デジタルリマスタリングや高音質盤でリリースし直す事にどれくらいの音響効果があるのでしょう。
既に持っているファンはわざわざ買おうとは思わないでしょう。
初めてこの名盤に接する音楽ファンに対して、値段以上の付加価値を付けてリリースして欲しかったですね。
ボーナストラックがなくても十分素晴らしいとは思いますが。
そういう配慮が日本のレコード会社には足りないな、と思うのです。
そして、オリジナル盤をリリースしていた東芝EMI（EMIミュージック・ジャパン）はもう存在しません。

『私はカリオカ』《TODT-5168》〈作詞：ＡｎａＴｅｒｒａ／作曲：小野リサ／編曲：Pauro Jobim、 Daniel Jobim〉（02'53''）【1998】