『ECDのロンリーガール／ECD feat.K-DUB SHINE』：03'54''：So-net blog

	ブログをはじめるログイン

『ECDのロンリーガール／ECD feat.K-DUB SHINE』　[ヒップホップ] [編集]

こんばんは。
90年代のジャパニーズ・ヒップホップの名曲が7インチで復刻されました。
『ECDのロンリーガール』。

ECDの1997年のアルバム『BIG YOUTH』収録曲の一曲で、12インチにも収録されたことがありますが、A面扱いでは初めてです。
この曲はリアルタイムでは知りませんでした。
当時のECDについても『今夜はブギーバック』のアンサーソングを出した人、くらいにしか知識はないもので。
さんぴんCAMPについても語れません。
あの頃はどちらかというと、LB NATION寄りでした。
小西さんのレーベルから出版した『ＥＣＤＩＡＲＹ』（2004）を読んでから興味を持ちました。
この本を読んで、リアルなラッパーの現実の視点を感じたというか。

という訳で『ECDのロンリーガール』。
この曲の特徴は邦楽と洋楽の名曲からのサンプリングであります。
僕が耳を奪われたのも其処にありました。

“ロンリーガール”という事で、
花の82年組の女性アイドルの一人、佐東由梨さんのセカンドシングル『ロンリーガール』のメロディと歌詞のフレーズが引用されています。
この曲は松本隆＆筒美京平コンビの作品で、この曲自体はヒットには至らなかったですが、アイドル歌謡ファン、筒美京平ファンの間でマニアックな人気を誇る曲でした。
京平先生お得意の哀愁のブラック・コンテンポラリー歌謡です。
こういう隠れた名曲からサンプリングするなんて、カッコいいですね。
90年代、和モノのレアグルーヴを掘る機運がありましたが、その中でも冴えたアイディアだと思います。
批評性がありますね。

リズムトラックはマーヴィン・ゲイの晩年の名曲『SEXUAL HEALING』からサンプリングしています。
『ロンリーガール』とほぼ同時期の作品なんですね。

この二曲を上手くミックスして、1997年の渋谷はセンター街にたむろする少女たちに物申すECD、そして客演のK-DUB SHINE　from キングギドラ。

リアルタイムでは聴いていないのに、彼らのライミングやラップを聴いてるとあの頃の渋谷の街のムードがフラッシュバックしてきます。
僕も良く遊びに行っていたので。
クラブ遊びはからっきしで、もっぱら友達のレコード屋へ行ったり、映画を観たりする為にですが。

援助交際やブルセラとか、そういう言葉がヒラヒラと舞っていた街。
セクシーなリズムトラックに乗って苦味と武骨さが沁みる二人の言葉。

♪寂しいんじゃないよ　一人が好きなだけ

街の煌びやかなネオンのような“♪　ロンリーガール”というフレーズ。

“ECDのロンリーガール”から8年後、加藤ミリヤさんがこの曲のアンサーソング『ディアロンリーガール』がリリースされました。あのとき、あの街にいた少女たちの視点から歌ったような歌詞にも思えますね。
でも『ECDの～』が発表されたとき、加藤さんはまだ10歳くらいでしょう。
当事者でなないにせよ、当時の少女たちの気持ちに共感したからこそ、アンサーソングを作った訳で。
こういう音楽を通じたコミュニケーションは面白いですね。

Ｂ面はそして『ECDの～』への自分自身によるアンサーソング『NO LG』。
今年リリースされた最新作『The Bridge-明日に架ける橋』に収録されています。
16年後の返答は、なぜECDが人気曲『ECDの～』をやらなくなったかについてラップしています。
その理由はさておき、『NO LG』でのECDのリリックは益々鋭く尖っていることが判ります。
声質もより太くなっているし、豪胆で迫力が増しています。
“さんぴん”の侍かもしれませんが、刀のキレはいまも磨きがかかっていると云えます。
盟友、ILLICIT TSUBOI氏のミックスもバリバリです。

新旧の曲をカップリングする大変ユニークな企画の7インチなり。

最後に、佐東由梨さんの『ロンリーガール』を含む彼女のシングルを全て網羅した、『アイドルミラクルバイブルシリーズ　沢田冨美子・佐東由梨・沢田玉恵』の再発を願ってやみません。
ソニー・ミュージック・ダイレクトさん、お願い！
皆さんもご賛同ください。

『ECDのロンリーガール』《JS7S054》〈作詞松本隆・MARVIN GAYE ,DAVID RITZ／作曲：筒美京平、MARVIN GAYE ,DAVID RITZ〉（04’29’’）【2013】