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『光と君へのレクイエム/山下達郎』 [山下達郎]

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こんにちは。
山下達郎さんのニューシングルをご紹介しましょう。
『光と君へのレクイエム』。

前作、『愛してるって言えなくたって』はドラマの主題歌ですが、今回は映画の主題歌です。
現在公開中の『陽だまりの彼女』。
昨日観てきました。
まだ公開してから間もないので、ネタバレは致しませんが、
全体的としては楽しく観ました。
上野樹里さんと嵐の松潤氏の共演は爽やかで好演でした。
特に樹里さんの魅力バクハツでした。
素晴らしい。
ナチュラルでミステリアスなヒロインのイメージにピッタリで。
彼女の映画を観るのは『サマータイムマシンブルース』(2005)以来。
あの映画自体大好き過ぎるのですが、あの樹里さんも良かったですね。
樹里さんの役の中学時代を演じていた葵 わかなさんも可愛かったです。
お二人とも同じ役としてイメージがピッタリでした。
それから葵さんはJR西日本のマナー広告に出ていますね。
駅で頻繁にお見かけします。
実にフォトジェニック。
女性アイドルグループ“乙女新党”のメンバーでもありますね。

それはそれとして。
物語の核心となるヒロインの秘密については“う~ん・・・”という感じでした。
それは原作の所為なので、致し方ないのでしょう。

女優陣の好演が光る映画なのでした。
谷村美月さんも物語の良いアクセントとなってたし魅力的でした。

さて、
この映画の舞台は小説と異なり、江の島近辺なのですが、
観ていて思い出したのが『青の炎』(2003)でした。
この映画も江の島~鎌倉辺りが舞台でした。
主演は同じく嵐の二宮くんで、あややと共演していました。
もう10年前なんですね。
これも映画館で観ました。
何故か日比谷のみゆき座かスカラ座のどちらかで観た記憶があります。
あの作品はとにかくへヴィな青春映画でしたが良い作品でした。
ピンク・フロイドの曲が主題歌になってましたね。

と、前置きが長くなりましたがシングルのご紹介。
『光と君へのレクイエム』は達郎さんのシングルにしては久しぶりに明快なラブソングです。
イントロの弾むようなベースラインから心が躍ります。
達郎さん曰く“サーフィン/ホットロッドをヒップホップでやったような”サウンド。
ヒップホップのグルーヴにサーフィン/ホットロッドの刹那的で感傷的なサウンドが融合しているという事でしょうか。
打ち込みの軽快かつ淡々としたリズムのシークエンスに乗って、
恋の胸騒ぎと煌めきを散りばめた旋律が流れていきます。
還暦を迎えても衰えを知らないメロディメイカーとしての才能。

そして達郎さんの瑞々しい歌声。
透明感のある多重コーラス。
『風の回廊(コリドー)』に通じる世界観。
青空とそよ風の爽やかさ、そして太陽の温かさが感じられます。
光のプリズムのように色彩豊かなアレンジメント。

歌詞は達郎さんが原作や編集された映像を元に作っただけあって、
物語に沿った内容です。
二度と戻ることの出来ない“あの頃”の儚く切ない慕情をロマンティックに誠実に綴っています。
素敵な歌詞です。




劇中では、ビーチボーイズの不朽の名盤『ペット・サウンズ』のオープニングナンバーである名曲『素敵じゃないか』が効果的に使用されるのですが、
ビーチボーイズマニアの筆頭でもある達郎さんは2コーラス後に出てくるCメロにて、サラリと巧みに曲名を歌い込んでいます。
実に巧いなぁと思わずにはいられないメロディ展開。
達郎さんとしては、このトシになって(映画の中で)何でビーチボーイズの曲とガチンコさせられなけりゃいけないんだ、と大いに不満だったそうです。
それはそれとしてちゃんとクライアントの要望に見事に応えてしまうのがプロフェッショナルですよね。

僕も半年ほど前に、映画館でこの映画の予告編を観たとき、『素敵じゃないか』が使われていて、何かあざとさを感じられて少し違和感がありました。このとき達郎さんが主題歌を担当するとは思いもしませんでした。
予告編にも何もクレジットされていませんでした。
フジテレビのトレンディドラマのタイトルに『ビーチボーイズ』という名前が使われた時の不快感に似た思いでしたね。
でも『陽だまりの~』に関しては『素敵じゃないか』は悪い使われ方をしていなかったので、安心しました。
物語への必然は感じられました。
シネコンの音響で聴く『素敵じゃないか』もなかなかでしたし。

と、話が逸れました。
ムーンレコードに移籍後以降に顕著な、達郎さん自身による歌詞の内省的な言葉使いや、
ご自身のプログラミングによる一人多重演奏の箱庭のような閉じたサウンドは、一過性の流行から隔絶されたワンアンドオンリーな世界観。
そのポリシーが、風化されることのないサウンドをコーティングしているのだと思います。
達郎さんならではの唯美的な陰りというか、気品のあるトーンが楽曲に溶け込んでいて、安易さや軽薄さとは無縁なサウンドのブランド力で物語のエンディングに余韻と格調を湛えます。
達郎さんの新曲が近年ますます映画やドラマの主題歌に起用されるのが良く判ります。
過去の作品を主題歌として取り上げられるアーティストは多いですが、書き下ろしの新曲が使用されるのはそれほど多くはないと思います。
物語の内容にあった曲を過去の膨大な楽曲から探すのではなく、その物語に相応しい楽曲をオーダーメイドで製作出来るのが山下達郎なのです。

そして劇場の暗闇の中、物語のエンドロールでしみじみと聴く『光と君のレクイエム』。
感動もひとしおでした。
素晴らしい余韻に浸れました。
“レクイエム”というだけあって胸を締め付けるようなせつなさ。

 ♪ ずっとずっと あのままの ふたりでいたかった

このリフレインがたまらなくセンチメンタル。
泣きそうでした。
心地よいサウンドの中に漂う一抹のもの悲しさ。
実に名曲。
最近の達郎さんの曲の中で特に気に入っています。
新曲が素晴らしいって素晴らしいです。

達郎さんのクリエイトする映画/ドラマの主題歌の魅力。
それはそのまんま、カップリング曲にも当てはまります。
今年春のNHKドラマの主題歌の為に書き下ろされた新曲、『コンポジション』。
夜遅い時間にオンエアされた大人向けの内容のドラマにふさわしい、静謐さと成熟さを湛えた大人のラヴソング。
これも全て達郎さんの作詞作曲編曲。
登場人物が音楽家のドラマなので音楽にまつわる専門用語を上手く使われています。
淡く揺蕩うようなメロディとシンプルなリズムトラック、そして達郎さんのファルセットが聴く者に優しく寄り添います。人生の曲がり角で傷ついた心を温かく癒してくれるような子守歌。


さて、現在達郎さんは全国ツアーを敢行。
そろそろ中盤戦でしょうか。
僕は9月の末に大阪公演を観てきました。
約五年を懸けて改修工事を行い、無事に今年改装された大阪フェスティヴァルホールを舞台にますます快調な達郎節が響き渡りました。
達郎さんがこよなく愛する、日本を代表するコンサートホールは改装後も絶好調でした。
客席も見やすいし、座りやすいし。
最高でした。

願わくば、シングルの発売記念キャンペーンのアナログ盤が当たればいうことは無いのですが。
シングルも抽選プレゼントにしないで商品化してくれればいいのにといつも思います。
お金を出してちゃんと手に入れたいという事が、達郎さんへの当ブログ管理人からの唯一の不満であります。

以上。

『光と君のレクイエム』《WPCL-11607》〈作詞・作曲・編曲:山下達郎〉(03’43’’)【2013】


光と君へのレクイエム

光と君へのレクイエム

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2013/10/09
  • メディア: CD




ペット・サウンズ

ペット・サウンズ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2012/07/25
  • メディア: CD


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