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『恋の汽車ポッポ/大瀧詠一』 [ナイアガラ]

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こんばんは。
大滝詠一さんに哀悼の意を表明して、拙ブログで特集をしたいと思います。
兼ねてから企画していまして、3月くらいに行おうと思っていたのですが、そのときは仕事が毎日忙しくて、ブログどころじゃありませんでした。

そんな多忙な3月でしたが、21日は上京してソニーの乃木坂スタジオで行われたお別れ会で献花へ参加しました。そのときに頂いたポストカードです。

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大晦日に舞い込んできた悲しい知らせ、青天の霹靂ともいうべき一大事件。
もう何も手に着かず、混乱していました。
馴染みの音楽友達から電話が掛ってきて、その彼と大滝さんのことについて語り、不安を紛らわせようとしていました。
あの日から、ずぅっと、ほぼ毎日毎日、頭の中で大滝さんについて思いを巡らしていました。
これまで以上に。
ぼんやりとですが。
答えの出ない問いを考えているような。
これまでも有名人の訃報には多かれ少なかれショックを受けてきましたが、大滝さんの死は自分でも吃驚するほどの衝撃でした。
その存在感の巨きさ。

大滝さんのお蔭でこのブログを書いているようなものです。
このブログのURCじゃないや、URLは〈http://talkingscarlet45.blog.so-net.ne.jp/〉ですが、
45という数字は勿論、シングル盤の回転数であり、大滝さんの70年代の自宅スタジオ名〈FUSSA45 studio〉から肖ってます。

あれから約四か月、少し気持ちも落ち着いてきました。

という訳で大滝さん特集の第1回目は『恋の汽車ポッポ』。
記念すべきファーストシングル。

この曲は大滝さんのファーストアルバム『大瀧詠一』にも収録されています。
大滝さんの音楽に触れたのは16歳の時。
それが『大瀧詠一』が先だったか『ロング・バケーション』が先だったか、覚えていません。
ちなみにロンバケは『さらばシベリア鉄道』が入ってない奴です。
しかしどちらも数えきれないほど聴きました。
もう判んなくなっちゃうほど聴いてます。
これからもきっと、ずっと。

大滝さんの《ファースト》は、元々シングル6枚から成る『オムニバス』というアルバムが構想されていたようですね。
アメリカン・ポップス黄金期のシングル盤主体として、アルバム制作に立ち返ろうとする大滝さんらしいアイディア。
はっぴいえんどの世界観と逆行しています。
だからこそのソロ。

なのでサウンドもモノラル録音。
ジャケットにも明記されています。
70年代初頭にモノラルなんて、時代錯誤だったかもしれませんが、こだわりが貫かれています。

サウンドはCCRを意識したアーシーなロックンロールですが、リトル・エヴァの『ロコモーション』、そしてニール・セダカの『恋の片道切符』と地続きのポップス。
そして最後は『1969年のドラッグレース』へ。
作詞は勿論松本 隆さん(江戸門弾鉄名義)。
70年代初頭、アメリカのシンガーソングライターブームで脚光を浴びていたジェームズ・テイラー、そしてキャロル・キング。
かつて60年代初頭にガールシンガー兼作曲家として活動していた頃からキャロル・キングの音楽に親しんでいた大滝さんとしては原点を省みる契機だったのでしょう。
イントロが実に『ロコモーション』であります。
バッキングははっぴいえんど。
ですが、ドラムを叩いてるのは細野さん(宇野主水名義)。
そしてベースが大滝さん(南部半九郎名義)。
大滝さんの歌声はバンド時よりも素直に伸び伸びと唄ってる気がします。
鈴木 茂さん(ほしいも小僧名義)のエレキギターも切れ味抜群。
後にアルバムに収録されるのは再レコーディング版ですがそちらはコーラスにシンガーズ・スリーを迎えてのお囃子ポップス仕立て。

B面は『それはぼくぢゃないよ』。

ある晴れた早朝、恋人との微睡みのひとときをスケッチしたような抒情派ミディアムバラード。
松本氏の描く、朝の静寂の中の情景の素晴らしさ。
聴いていて頭にイメージが広がります。
このコンビは本当に最高。
メロディと歌詞の密接な繋がりを感じます。
この曲は大滝さんが殆どの楽器を一人で演奏していますが、ペダル・スティールは駒沢裕城氏が演奏しています。アレンジャーは“ちぇるしぃ”。大滝さんの変名です。
大滝さんの弾く12弦ギター、そして駒沢氏のペダルスティールが美しい朝ぼらけを演出しています。
駒沢氏は後に多羅尾伴内楽団で大活躍しますね。
この曲もシングルバージョンとアルバムバージョンの二種類存在します。
シングルバージョンは曲が生まれて間もなくて、全体的に覚束ない感じが魅力です。
起き抜けでまだ眠気が残っていて、シャキッとしていない感じかもしれません。
アルバムバージョンは再レコーディングされており、より歌も演奏もこなれて完成度が高く、大滝さんも自画自賛する出来です。
抑揚の見事さ、瑞々しい歌声、歌手・大滝詠一の非凡さが滲み出ています。

ただ一つ、大滝さんの訃報を聞いた後では、歌詞の中に《林檎》というフレーズが紛れていて少しドキッとします。

両面ともエンジニアは吉野金次さんが担当しています。
70年代の日本のロック/歌謡界での最重要エンジニア。
去年、元春の1982年の名盤『サムデイ』の全曲演奏ライヴがあり、その関連DVDの映像で現在の吉野金次さんをお見かけすることが出来ました。一時期病気で大変な状況だったそうですが、元春と元気に対話されていました。

音のプロフェッショナル、吉野さんの温かみのあるアナログ・サウンドが『大瀧詠一』には満ちています。
同じく吉野さんが関わられた細野さんの『HOSONO HOUSE』(1973)にも通じていますね。
どちらもエヴァ―グリーン。

奇しくも、この記事を更新出来たの4月19日はレコード・ストア・デイ。
レコードとレコード屋さんの為の記念日です。
良いレコードとの出会いがありますように。

それでは次回の大滝詠一特集をお楽しみに。

『恋の汽車ポッポ』《BS-1465》〈作詞:江戸門弾鉄/作曲・編曲:多羅尾伴内〉(02’13’’)【1971】



大瀧詠一

大瀧詠一

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
  • 発売日: 1997/11/04
  • メディア: CD



大瀧詠一

大瀧詠一

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2012/10/03
  • メディア: CD



大瀧詠一 Cover Book I-大瀧詠一カバー集Vol.1(1978-2008)-

大瀧詠一 Cover Book I-大瀧詠一カバー集Vol.1(1978-2008)-

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMR
  • 発売日: 2010/03/21
  • メディア: CD



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コメント 2

いとぞう

これまでにも様々なアーティストの訃報に驚き、寂しい気持ちになったことはありましたが、ここまで悲しかったのは大滝さんが初めてでした。まるで自分の親が亡くなったような感覚です・・
あの訃報から少し時間が経ったせいか、ようやく冷静に受け止められるようになってきました。元春レイディオショーが最終回間近の時に4週も連続で素晴らしすぎる大滝さんの追悼特集をやってくれたことも大きかったです。
大滝さんの音楽は「ロンバケ」「イーチタイム」の順で聴き、その後に70年代のアルバムを聴きました。なので、最初は「大滝詠一=ウォール・オブ・サウンド」のイメージしかなかったので、この時代の作品は聴き始めの頃は古さを感じましたが、聴き込むうちにその魅力にどっぷりと浸りましたね。
今後の特集も期待しています!
by いとぞう (2014-04-19 20:15) 

都市色

>いとぞうさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
本当に喪失感は深いです。
人生は儚いですね。

思えば大滝さんは僕らの父親の世代に当たりますよね。

元春レイディオショーの特集も大変素晴らしかったですね。

by 都市色 (2014-04-20 08:20) 

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