『走れ自転車/小川美潮』 [邦楽ロック/90年代]
こんばんは。
もう、3月も終わり。
早かったような、長かったような1か月でした。
お別れの季節、春。
青山 純さんを追悼してもう1枚。
小川美潮さんの短冊ディスクで『走れ自転車』。
90年代前半、小川美潮さんがエピックソニーに残した3枚のアルバムは今もなお名盤の誉れ高き作品群です。
懐かしくも、新しいサウンドは多くの音楽ファンをジワジワと魅了しました。
美潮さんという類稀なる歌姫をバックアップしたのは類稀なる音楽集団。
彼女が在籍していたバンド“チャクラ”のメンバーでもあった板倉 文氏、近藤達郎氏を筆頭に、
MECKEN氏、BANANA氏、Ma*To氏、そして青山 純さんという錚々たるスタジオミュージシャンが集まりました。
今回ご紹介するのはエピックでの二枚目のアルバム『ウレシイノモト』にも収録されている楽曲。
大友克洋氏が監督、江口寿史氏がキャラクターデザインを手がけた長編SFアニメ『老人Z』のテーマソングでもありました。
という訳でジャケットのイラストも先ちゃんが描いてます。
短冊の縦長を活かしてますね。
作詞は美潮さんで、作曲&編曲は板倉氏でアニメの音楽も担当されています。
一聴すると、『丘を越えて』を髣髴させるような、軽快なポップソング。
美潮さんの朗らかで自由な歌声と共に、まさにサイクリングで口ずさみたくなるような。
でもそれだけに留まらないサウンドプロダクションにも耳が引っかかります。
板倉氏のプログレでニューウェイヴなアレンジが冴えまくっています。
演奏ではギターを弾いています。
そしてサウンドの一端を担っているのが青山さんのパーカッシヴなドラミングであることは聴けばお判りでしょう。
楽曲の進行中、中盤~終盤にリズムが変幻していきます。
自転車が自由にギアを変則して、思いのままにペダルを漕いで、どこまでも行くように。
リズムの要、青山さんの硬質でキレのあるスネア、シンバルが全面的に鳴りまくってます。
そしてエンディングに従って、美潮さんの歌とリズムは並走しながらも次第にお互いが離れていきます。。
アウトロは美潮さんの歌はゆったりしていくのですが、ドラムはタイトにファンキーなリズムを保ってフェイドアウト。
実に聴きごたえのある、遊び心のあるサウンドにワクワク。
このアニメは勿論、当時観ました。
内容は忘れちゃいましたが面白かったです。
もう一度観てみたい。
カップリングは『Happy Circle』。
板倉氏とBANANA氏による作曲編曲のインスト。
陽性のエキゾチックなサウンドに美潮さんの元気なスキャットが弾けています。
チャクラっぽいかも。
去る去年の八月、美潮さんのライヴを京都の元立誠小学校校舎で観てきました。
体育館でのコンサートは美潮さんのエピック時代からのレパートリーで構成されました。
『走れ自転車』は歌われませんでしたが、大好きな歌が沢山聴けました。
美潮さんのバッキングを務めるメンバーには近藤氏やMECKEN氏もおられました。
残念ながらその中に青山さんの姿はありませんでした。
その時期も体調が思わしくなかったようです。
美潮さん、達郎さん以外でも勿論その他、様々なミュージシャンの数多くのレコーディングやライヴで活躍された青山さんの音源は沢山あり、それを聴くたびに、『歌』を支えながら躍動するドラミング、その表現力の素晴らしさにこれからもハッとさせられ続けるのだと思います。
良いタイミングで美潮さんのエピック時代の三部作が再発されます。
第一作の大名盤『4 to 3』は昨年に一足早く再リリースされました。
そして残りの『ウレシイノモト』と『檸檬の月』はソニーのオーダーメイドファクトリーを通じて近いうちにリリースされる予定です。
青山さん、ありがとうございました。
『走れ自転車』《ESDB 3246》〈作詞:小川美潮/作曲・編曲:板倉 文〉(04'32'')【1991】
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