『イエローサブマリン音頭/金沢明子』 [歌謡曲/80年代]
こんにちは。
大滝さんの特集、続いています。
前回のクレイジーキャッツのシングルに続いては、コチラ。
今回も濃いです。
『イエローサブマリン音頭』。
この作品も、デクさんこと、萩原哲晶氏とのコラボレーション。
共作としてはこちらが先です。
第一期ナイアガラからの“音頭路線”の集大成とも云えましょう。
民謡とロックンロールという異文化の衝突が得も云われぬサウンドを生み出しました。
ビートルズマニアとして有名なレコーディング・ディレクターの川原伸司(a.k.a 平井夏美)氏による、〈『Yellow Submarine』の音頭化〉というアイディアを大瀧詠一プロデューサーに打診。
アレンジャーとして要請されたのが萩原哲晶氏でありました。
クレイジーキャッツの『遺憾に存じます』(1965)のイントロは『抱きしめたい』からの引用だったり、決して無縁ではないクレイジーキャッツとビートルズ。
歌うのは金沢明子さん。
『ナイアガラ音頭』等で三味線を弾いていた本條秀太郎氏のお弟子さんでもありました。
その比類なき明朗なコブシとノド、そして健全な諧謔精神に則ったサウンドはやがて海を渡り、本家、ポール・マッカートニーをはじめ、海外のビートルズファンの度肝を抜きました。
昨年のワールドツアーの日本公演の開演前のBGMにもこの曲が流れたそうです。
世界に誇るクレイジーキャッツサウンド&ナイアガラサウンド。
ナイアガラ・トライアングル仲間の伊藤銀次、佐野元春、杉 真理諸氏も終盤に引っ張り込んでの乱痴気騒ぎ。ビートルズマニアらしいネタを挟み込んで。
真剣な遊び心は時の試練に耐え得るのです。
歌謡曲には“マドロス歌謡”というジャンルもあるのでその亜流とも云えますね。
“潜水艦”をテーマにした歌謡曲は非常に珍しいと思います。
チャンチキでおトボケで晴れがましい行進曲風なイントロからして最高です。
随所に脱線する軽妙な演奏。
脱力感が半端じゃありません。
漫画の世界だったら聴いてる人は逆さにひっくり返ってるでしょう。
些細なことで悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなるようなサウンドの底なし沼に潜水艦と一緒に潜るのです。
ロック曲の音頭化でありますが、違和感がないのが不思議です。
♪ うぃ~ お~る り~ぶ いん あ いえろう さぶまりん いえろう さぶまりん
金沢女史の呑気この上ない、棒読みな発音。
天晴れ。
作詞は松本 隆氏によるものですが、元々は森 雪之丞氏が担当する予定だったこともあり、森氏のアイディアも採用されているそうです。サビの“潜水艦”の処がそうです。
このハマり具合が肝ですね。
お気楽なサウンドの裏に只ならぬ狂気を感じます。
大滝さんのプロデューサーとしての手腕が遺憾なく発揮されている名作ですね。
B面は『夢を飲まないか』。
こちらは大瀧さんのプロデュースではありません。
あまり語られることは無いのですが、なかなかイイ曲です。
伊達 歩作詞、ハーリー木村作曲、高田 弘編曲によるメロウなシティポップスです。
A面のインパクトがあまりに強烈過ぎて、その存在感が薄まっちゃっていますが。
シティポップ調なアレンジとメロディですが、歌詞は居酒屋だし、コブシの効いた金沢さんの歌ということで洗練しきっていないのが味かもしれません。
現在でも金沢女史は『イエローサブマリン音頭』をコンサートで歌い継いでいるそうです。
当時は“聖子ちゃんのような”世界感を期待していたそうですが、結果としては金沢女史のスタイルに合ったこの作品で良かったのではないでしょうか。
唯一無二の歌謡曲ですよね。
『イエローサブマリン音頭』《SV-7270》〈作詞・作曲:レノン―マッカートニー/訳詩:松本 隆/編曲:萩原哲晶〉(03'17'')【1982】
2014-05-11 11:06
nice!(1)
コメント(3)
これは斬新なアイデアでしたよね。発想がスゴイです。
洋楽からの影響を歌謡曲やJ-POPに昇華させるのとはまた違ったアプローチだったと思います。
この曲が発売された当時、まだ小学生だったので、ビートルズの曲といえば音楽の教科書にも載っていた「イエスタデイ」くらいしか知らなかったので、「イエローサブマリン音頭」がビートルズの曲の音頭化だったことを知ったのはもう少し後になってからでした。
by いとぞう (2014-05-11 20:28)
>いとぞうさん、コメントありがとうございます。
この曲の破壊力は凄いですよね。
カヴァーの仕方が半端ないです。
by 都市色 (2014-05-14 00:33)
>makimakiさん、
niceありがとうございまさす。
by 都市色 (2014-05-14 00:34)