『あなたもロボットになれる／坂本慎太郎』：03'54''：So-net blog

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『あなたもロボットになれる／坂本慎太郎』　[邦楽ロック10年代] [編集]

こんばんは。

昨年も沢山シングル盤を買いました。
マニアやコレクターの方に比べたら、僕なんて大したことないですがイロイロ手に入りました。
買うスピードが速くて、手に入れたものを紹介するのが間に合わない位です。

去年紹介しそびれたシングル盤を。
坂本慎太郎さんの『あなたもロボットになれる』です。

昨年リリースされた彼のセカンドアルバム『ナマで踊ろう』は大変よく聴きました。
あのアルバムは現代の音楽シーンには珍しいコンセプトアルバムだったと思います。アルバム全体を一貫したトーンや世界観で貫かれていました。
それは現在のニッポンの不穏なムードを反映したような感じでした。
勿論、ストレートなメッセージやアジテーションは無いのですが、坂本氏なりのユーモアを利かせた聴けば聴くほど味わい深いロックンロールアルバムに仕上がっています。
現代日本への痛烈な皮肉と共に。

そんなアルバムの収録曲からのシングルカット。
でも単なる後発モノに非ず。
新たにヴォーカルをレコーディングをし直されたニューバージョン。
歌っているのは何と、子供たち。
その名も《かもめ児童合唱団》。
神奈川県三浦市を活動の本拠としている合唱団。
あまり詳しいことは判らないですが、ドラマ『泣くな、はらちゃん』（2013）の主題歌を担当したことで知りました。
動画サイトを見ると、ナイアガラ・トライアングルの『幸せにさよなら』ものびのびと歌っていたりして、末恐ろしい集団です。
そんな掴み処の無い児童たちが坂本慎太郎氏の世界を歌っていても何ら驚くに値しません。
歌詞の内容が、人類がどんどんロボットになってしまう世界を描いていて、なんとなく、思い出したのが藤子Ｆ先生の短編『流血鬼』とジャック・フィニィの古典ＳＦ『盗まれた街／ボディ・スナッチャー』でした。
勿論、現代の何か、一つの偏った思想に傾きがちな世相を皮肉っている感じもあります。
キケンでストレンジな歌詞の内容に対して陽気なテンポとメロディ並びにバンジョーのあっけらかんとしたな響き、そして児童合唱団の澄んだ歌声。
何というかカオスです。

アルバムバージョンでの坂本ヴォーカルよりも狂ってます。
ですが、
子供たちが歌うコトにより、リアリティは希薄になり、内容がジュブナイルやファンタジーに感じられました。
坂本氏自身によるアニメーション効果も大きいです。
僕が小学校低学年の頃に読んだ絵本や童話を強く思い出させました。

それは《創作子どもSF全集》です。
シュールで奇想天外な世界観を幼い頃に植え付けられました。
特に佐野美津男さんの物語は中村宏さんの挿画と相まって、ショッキングでした。
全集の作品ではありませんが、このコンビによる『ぴかぴかのぎろちょん』は最高ですね。

話が逸れました。
坂本氏のイラストも70年代っぽいですし、あの時代の不穏なムードと今の日本を重ねていたのでしょう。
さすがです。
今回のシングルのジャケットもあの頃のジュブナイルの表紙っぽいですね。
ふろくも付いてます。

尚、アルバムからの後発シングルであり、その際にヴォーカリストを外部から起用しているという点において、今回の坂本氏は《ユニコーンの“デーゲーム”》方式を採用していると思われます。

Ｂ面は『グッド・ラック』。
これはアルバム未収録で、何と野口五郎さんの70年代のシングル曲のカヴァーです。
山川啓介＆筒美京平コンビの名曲。
僕も超大好きな作品なので、嬉しいです。
なんでも坂本氏のカラオケの十八番だそうです。
勿論単なるストレートなカヴァーに仕上がる筈はなく、『ナマで踊ろう』の世界に準じた、スティールギターが怪しく照りつけるニヒルなサウンド仕立て。
ハードボイルドな恋人との別れが現世との別れに通じる様な。
それにしても坂本氏の歌声っていいですよねぇ。
野口五郎さんにも少し似ていますね。
イイ曲です。
ゴロンボ刑事によるオリジナルバージョンもいつかこのブログで取り上げてみたいです。

今年の坂本氏の活動も楽しみです。

『あなたもロボットになれる』《zel-014》〈作詞・作曲・編曲：坂本慎太郎〉（04'04''）【2013】