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『 HIRTH MARTINEZ/ HIRTH MARTINEZ』 [米国ロック/70年代]

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こんばんは。
夏の終わりの想い出を。

この夏、ィ横浜はみなとみらいの赤レンガ倉庫にてユニークな催し物が開催されていました。
“70’s VIBRATION YOKOHAMA”。
音楽プロデューサー、牧村憲一氏がキュレイターとなり70年代のポップカルチャー及び日本語のロックムーヴメントの世界を当時の写真や映像やポスターや雑誌などの詳細な資料を通じて回顧する企画。
そのイベント期間限定で伝説のレコードショップ“パイドパイパーハウス”が復活しました。
お店のオーナーの長門芳郎氏は初代シュガーベイブのマネージャーであり、このバンドの結成前夜にも深く関わっておられたり、はっぴいえんどとも繋がりがあり、大滝さんと達郎さんとの出会いの橋渡し役でもあり、70年代の細野さんのマネージャーもされたり、そしてピチカートファイヴの初期の世話役もされているというまさに日本のポップミュージックの黎明期の縁の下の力持ち。
ちなみに牧村氏は二代目のシュガーベイブのマネージャーでもあります。後に竹内まりやさんや細野晴臣氏のレコーディングのディレクターも担当されたり、フリッパーズギターのプロデューサーとして活動もされます。黎明期の70年代、そして勃興期の80年代の日本のロックシーンの舞台裏を知り尽くされているお二人が関わっているプロジェクトなのでした。
長門さんのお名前を初めて知ったのは以前に元春のファンクラブの会報にロックに関するコラムを掲載されていた時でした。
それはそうと、“パイドパイパーハウス”。

達郎さんや元春、そしてピチカートの遅れてきたファンとすれば、とっても気になるお店だったのですが、残念ながら80年代の終わりに当時の地上げ問題で閉店を余儀なくされて、行きたくても行くことは出来ませんでした。
そんな訳で、突如復活した伝説の名店へ行くのは長年の悲願でした。
九月始めのある日曜日、大雨の横浜。
大雨の赤レンガ。
11年前にも赤レンガ倉庫へ行ったのは鈴木祥子さんのデヴュー15周年記念のライヴを観るためでしたがそのときもどしゃぶりでした。あの日も日曜日。

それはそれとして、パイドパイパーハウス。
赤レンガ一号館の二階に居を移して。
発売されたばかりのシュガーベイブのソングスの40周年記念盤を始めとして、細野さん、大貫妙子さん、はっぴいえんど、YMO、国内外の音楽の魔法に溢れたセレクション。

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夢のようなレコードショップ。
お店のCDやレコードを出来ることならば全て買い占めてしまいたいと思いました。
きっと外れなしでしょう。

そして長門氏もお店にいらっしゃいまして、短い時間ですがお話をすることが出来ました。
長年のこちらの一方的な過剰な思い入れの言葉を優しく受け止めて下さいました。
持参した長門氏の著作《魔法のビート》にもサインを頂きました。

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そんな素敵なお店で手に入れた宝物のレコードを紹介しましょう。
ハース・マルティネスのEP盤です。
今回のパイドパイパーハウスの復活を記念して製作された限定のアナログ盤。
このお店でしか手に入りません。
70年代に二枚のアルバムをリリースしたアメリカのシンガーソングライター。
一枚目はザ・バントのロビー・ロバートソン氏が、二枚目はジョン・サイモン氏がプロデュースを担当。
どちらとも幻の名盤の誉れ高き内容。
そして21年ぶりに、長門氏が興したレーベル“ドリームズヴィル”から久しぶりのアルバムをリリース。
こちらもジョン・サイモン氏のプロデュース作。音楽ファンを大いに驚かせ健在ぶりに感激しました。
今回のEP盤はそれまでの活動をコンパクトに振り返るような実り多き4曲入りです。

まずはA面(と、表記はないけれどそう思われる面)の一曲目は『5 / 4 SAMBA』。
21年ぶりのアルバム『I'm not like I was before』収録曲。
4分の5拍子のリズム。
甘やかなる瀟洒な調べ、リラックスしたような朗らかな演奏。
ザ・バンドのガース・ハドソン氏によるアコーディオン、ジョン・サイモン氏のピアノ、そしてハース氏のユーモラスな歌声とギター。
彼のしゃがれた声って、ドクター・ジョンに似ていますね。

二曲目はインストの『Sing with me(The Little Angel)』。
3拍子のゆったりとしたリズムのゆりかごに揺られ、
こちらも夢見心地なムード。
ハース氏のギター、ベース、そしてピアノ。そしてヴァン・ダイク・パークス氏のアコーディオンの二人だけの演奏。
サウンドに合わせ、思い思いにメロディをつけて唄ってみるのも一興。
2000年にドリームズヴィルから出たライヴ盤に収められたこともありますが、スタジオ録音バージョンとしては初お目見え。

そしてもう片方の面(パイドパイパーハウスのトレードマークの“笛吹き男”のイラストが描かれたレーベル面)へひっくり返して。

一曲目は記念すべきファーストアルバム『Hirth From Earth』の冒頭を飾る大名曲『ALTOGETHER ALONE』のライヴバージョン。先に述べたライヴ盤に収められています。
この曲を通じて彼の音楽の虜になられた方も多いでしょう。
僕もその一人。
大学時代に聴いて以来、この曲に何度救われたことでしょう。
楽しい様な、そしてどこかもの悲しい様な胸を締め付ける甘美なメロディ。
どんなことが歌われてるかと思えば、“未知との遭遇”。
真夜中に宇宙人に出会うというユニークな世界。
ひとりぼっちの孤独を紛らわせてくれる様な不思議な隣人との出会いの模様が歌われています。
藤子F先生に出てくるような異界からの友達をイメージしました。
ハース氏の味わい深いユーモラスな歌声でより物語に深みが増すのです。
あぁ、なんて素敵なメロディラインなんでしょう。



ストリングスが効いたオリジナルバージョンのアレンジも完璧なんですが、ライヴでのギター一本の弾き語りもまた格別です。
ハース氏のギタープレイ。
間奏のギターソロ。
温かい歌と演奏が心を満たしていきます。

二曲目は『Rock-a-Bye My Baby』。
そうです、細野さんの記念すべきファーストソロアルバム『HOSONO HOUSE』の冒頭を飾る大名曲の『ろっかばい まい べいびい』カヴァーバージョン。
細野さんのトリビュートアルバムに収録されているヴァン・ダイク・パークス氏とのバージョンではなく、ライヴバージョンでの初お目見え。
細野さんのオリジナルバージョンの歌詞の内容をハース氏が自ら忠実に英語詞に変換されて唄われています。この曲もいわずもがな、とにかく大名曲です。
やはり『ALTOGETHER ALONE』同様に大学時代に出会って、何度も何度も聴いて救われました。
今回のEP盤のジャケットにはハース氏による細野さんとの出会いについての文章が英語で書かれています。ザ・バンドのリヴォン・ヘルム氏から細野晴臣という日本のミュージシャンの魅力を聞かされて、ハース氏のライヴでの来日を機に細野さんと初めて出会い、意気投合。
その数年後にこのカヴァーヴァージョンが制作されました。
ハース氏もお気に入りの名曲。

唄い終えた後に「beautiful song !」とつぶやくハース氏。


『ALTOGETHER ALONE』も『ろっかばい まい べいびい』も得も言われぬ不思議なSaudade(郷愁)を共通して感じることが出来ると思います。
国境を越えた音楽の魔法。

そしてご存知の方も多いでしょうが、惜しくもハース氏は10月に癌でお亡くなりになりました。
このEP盤が奇しくも最後のリリースとなってしまいました。
かねてから闘病中の身だったそうです。

素晴らしい音楽をありがとうと、感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも彼の歌をずっとずっと聴いていくでしょう。
人間はとどのつまり、ALTOGETHER ALONEなのだと思います。


『HIRTH MARTINEZ』《CGEP-20151》【2015】



ハース・フロム・アース

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan =music=
  • 発売日: 2008/06/25
  • メディア: CD



ビッグ・ブライト・ストリート(紙ジャケット仕様)

ビッグ・ブライト・ストリート(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: NALYD
  • 発売日: 2006/10/18
  • メディア: CD



ミスター・ドリームズヴィル ~夢の旅人

ミスター・ドリームズヴィル ~夢の旅人

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ドリームスヴィル・レコード
  • 発売日: 1998/11/25
  • メディア: CD



アイ・ラヴ・トゥ・プレイ・フォー・ユー~ライヴ・イン・ジャパン

アイ・ラヴ・トゥ・プレイ・フォー・ユー~ライヴ・イン・ジャパン

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ドリームスヴィル・レコード
  • 発売日: 2000/05/25
  • メディア: CD



ティーンエイジ・ハース

ティーンエイジ・ハース

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: coconut grove record
  • 発売日: 2010/07/21
  • メディア: CD



Feeling So Fine

Feeling So Fine

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ドリームスヴィル・レコード
  • 発売日: 2000/04/25
  • メディア: CD



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コメント 2

Backy246

ご無沙汰です。
HIRTH MARTINEZが御大細野さんの「ろっかばいまいべいびい」をカバーしてるなんてつゆ知りませんでした。お恥ずかしい限りです。
即聞きたい!です。
「ALTOGATHER ALONE」は大好きで今もよく聞きます。
なんかこのブログを拝見したら、以前細野さんのFMのデイジーワールドの中で「SLOWLY」という曲をハースの歌、ギターと細野さんのベースで演奏してたのを思い出しました。
良かったです。MP3に落としてるので今でもこれもよく聞きますよ。
by Backy246 (2015-12-04 01:02) 

都市色

> Backy246さん、
ご無沙汰してます、コメントありがとうございます。
またお読みくださって恐縮です。
“ろっかばいまいべいびい”のハース・マルティネスとヴァン・ダイク・パークスのカヴァーは『 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2』に収録されています。
デイジーワールドはそういえば、ちゃんと聴いたことが無いので是非聴かなければ。
by 都市色 (2015-12-04 02:01) 

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