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『炎のクリスマス/シワスモノ』 [邦楽ロック10年代]

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気が付けば、
今年もクリスマスが轟音を響かせてやってきます。
どうあがいても避けきれないのです。

今年はまだクリスマスに関するシングルを取り上げていませんでした。
という訳で、今年は一枚ですが
ご紹介しましょう。

シワスモノ”の『炎のクリスマス』です。
シワスモノ、とはなんぞや。
“師走者”と漢字で書くのでしょう。
メンバーはヴォーカルとギターの森川アキコさんとギターの野口耕一郎さんの二人組。
お二人は90年代に、“サイクルズ”というバンドのメンバーでもありました。
メジャーで2枚のアルバムを残して解散、しばらくはそれぞれ別々に音楽活動をしていましたが、
二年ほど前からまた組んで音楽を開始しました。
そのユニット名が『サツキモノ』。
アレレ、『シワスモノ』じゃないの?
とお思いのあなた。
間違いじゃありません。
『シワスモノ』とは『サツキモノ』に於ける、11月と12月での活動時での変名という訳です。

僕はサイクルズが好きでした。
と、いっても彼らを知ったのは解散後でした。
彼らを知った経緯についてはきっとこのブログで彼らのシングルを取り上げる機会もあるかもしれないのでそのときまでとって置きましょう。

という訳でシワスモノの『炎のクリスマス』。
丁度、一年前くらいに発表された2曲入りのCD-R。
タイトル通り、クリスマスソングに分類される内容です。



内容は抒情的なヘイト・“クリスマス・ソング”です。
正確には日本でのクリスマス周辺時期の空虚で表層的なお祭りムードへの違和感です。
本来の趣旨から逸脱した商業主義的なクリスマス。
同様なことが昨今のハロウィーンにも当てはまりますが、
煌びやかなLEDの電飾に惑わされて、大勢で徒党を組んで酒を飲んだり騒いだりするだけのイベント。
この時期に恋人と一緒にクリスマス・イヴを過ごすことが最重要と煽るメディアの風潮。
そういうファッションに満ちたクリスマスへの皮肉をこめた楽曲です。

 歌や映画の中に 描かれているような
 そんな 特別な日じゃないよ 僕には
 街に人があふれていく ただそれだけのこと
 そんな迷惑なクリスマスはよその国のおまつり


実は山下達郎さんの『クリスマス・イヴ』と共通のメッセージを持っています。
あの曲も歌詞ではクリスマスに独りで過ごすことの疎外感を歌っています。
達郎さんはインタビューで、ご自身の楽曲で唄われる歌詞のテーマは基本的に“疎外感”であると語っています。

穏やかなミディアムテンポでセンチメンタルなメロディが切々と展開されます。
無垢なるハモンドの調べとスレイベルが鳴り響いて。
森川アキコさんの伸びやかで澄んだ声、野口さんの爽やかな多重コーラスが崇高な輝きを魅せます。
じわじわと琴線を触れていきます。
ハードなサウンドで怒りを爆発するのではなく、マイルドでソフトな音楽に乗せて静かな諦観を独白します。
悲しみは雪のようにしんしんと降り積もっていきます。



このCD-Rには楽曲のクレジットが明記されていないのですが、
恐らく作詞作曲とも野口耕一郎氏が手掛けていると思います。
唄われている歌詞の内容、そしてメロディ展開が、サイクルズ時代と同じだからです。
サイクルズの作品はほとんど野口さんが担当していました。
時代の流れから取り残されてしまう人たちの心情をうたっていました。
そういう世界は僕にはとても共感します。

タイトルに付けられた“炎~”とは怒りの炎でしょうか。

もう一曲は『大人のクリスマス』。
こちらもクリスマスソングですが、やはり明るくて楽しい内容ではありません。
曲調は『炎の~』よりもポップで親しみやすいのですが、子供の頃のクリスマスは無邪気に楽しめたけど、大人になってからはクリスマスの日も仕事で忙殺されてしまう。
あの頃に戻りたい、と実にネガティヴこの上ない。

この二曲での救われない人々にこそ、祝福されるべきです。
つまり、僕のことでもあります。

因みに、シワスモノのお二人とも出身大学は国際基督教大学(ICU)です。
だから安易で無思想なイベント的な日本のクリスマスが許せないのかもしれません。

とにかく、サイクルズ時代同様に“シワスモノ”(a.k.a サツキモノ)での森川さんの清涼感ある歌声と、野口さんのメロディやメッセージに僕は魅了されています。

『サツキモノ』名義でも一枚CD-R形態でのシングルを出しているのでいつかご紹介しましょう。
今年もサツキモノはシワスモノとして12月にライヴを開催てします。
そして出来ることならこれからもコンスタントに作品をリリースし続けて欲しいですし、さらに出来ることなら関西でもライヴを行って頂きたいです。

それではブログをお読みの皆さん、メリー・クリスマス。

『炎のクリスマス』《品番なし》〈楽曲クレジットなし(おそらく詞曲:野口耕一郎)〉(04’15’’)【2014】




ながれ

ながれ

  • アーティスト: 野口耕一郎,森川亜希子
  • 出版社/メーカー: キューンミュージック
  • 発売日: 2000/10/18
  • メディア: CD



うたよひびけ

うたよひびけ

  • アーティスト: 野口耕一郎,TODD RUNDGREN
  • 出版社/メーカー: キューンミュージック
  • 発売日: 1999/10/21
  • メディア: CD



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コメント 2

いとぞう

メリークリスマス☆
近年このような一味違ったクリスマスソングがリリースされていたのですね。
クリスマスに関する今の世の中やメディアへの違和感、全く同感です。特に90年代初頭のバブル期なんて「何か月も前からホテルやレストランを予約」とか、それはもう酷かったですね・・その頃よりは多少ましになったかな、とは思いますが。
僕は昨日も今日もいつもと何にも変わらない普通の一日を過ごしています。でも、そんな平和なクリスマスこそが幸せなんでしょう。
by いとぞう (2015-12-25 17:41) 

都市色

>いとぞうさん、コメントありがとうございます。
クリスマスもそうですが、ハロウィーンの騒ぎのニュースを聞くと、日本人の熱しやすく冷めやすい軽薄な一面を垣間見て悲しくなりますね。
仰る通り、平穏に過ごすことのありがたさですよね。
クリスマスは祝日ではないですし。

by 都市色 (2015-12-30 08:41) 

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