『北京ダック/細野晴臣』 [邦楽ロック/70年代]
こんばんは、時刻はちょうど午前3時54分。
今宵のシングルはコレです。
去る5月7日、8日に細野晴臣さんが中華街でライヴを開催されたそうですね。
行きたかったぁ。
場所は、横浜の広東料理店、同發新館。
勿論、彼のファンなら思い出すのは今から40年前(1976年5月8日)に同場所で開催された伝説の中華街ライヴ。
ハリー細野のカムバック!!
そのライヴは今回取り上げるシングルのリリース記念でもあったそうです。
『北京ダック』は1976年4月25日発売でした。
前年の6月25日に発売されたアルバム『トロピカル・ダンディー』からのシングルカット、あらたにレコーディングされたバージョンです。
この曲は藤子不二雄先生の短編漫画からインスパイアされたそうですが、
僕も読んだことありますが、F先生じゃなく、A先生の方の作品で、ブラックユーモアの効いた恐ろしい内容でした。食欲は減退。
シングル・バージョンはキーもリズムも変更されています。
横浜の中華街、外は雨が降っています。ある一軒の中華料理屋さんの軒先で火事が!
お店からアヒルたちが飛び出して。
雨と火事、そして逃げ回るアヒル。
幸運にも、北京ダックになり損ねたアヒル。
騒ぎに紛れて、赤い靴を履いた君もアヒルを抱きかかえて逃げている(盗んだ?)。
上に下への大騒ぎの様子が、アルバムバージョンよりも速まったテンポでよりユーモラスに演奏で表現されています。バイヨンの弾むリズム。
キーも上がっているので賑やかな感じに拍車がかかっています。
異国情緒あふれるムードと、コミカルな世界観、ほのぼのとした細野さんの鼻歌。
今聴いても微笑ましく。
懐かしい感じとはまた少し違うのです。
サウンドがちっとも古びていないし。
当時の音楽ファンは細野さんのエキゾチックな路線に戸惑いを覚えたかもしれません。
今聴いても新しいくらいですので。
B面は1976年にリリースされた『泰安洋行』からの先行シングルとなる『ブラックピーナツ』。
和製カリプソナンバー。
当時の《ロッキード事件》での賄賂の金銭を“ピーナツ”と呼称していたことから、この事件を皮肉った歌詞と言われています。遊び心を練り込んだ歌声で陽気に歌うハリー細野氏。
サビのメロディはリチャード・A・ホワイティングの作品から引用しているそうです。
細野さんの叩くマリンバのイントロからリズミカルな演奏が始まります。
それにしてもA面、B面ともティンパンアレーの卓越した演奏がバクハツしています。
日本人離れしたリズム。
ギターは鈴木茂さん、ドラムは林立夫さん、そして細野さんのベース。
『泰安洋行』といえば、収録されている『香港Blues』はハワード・ホークス監督の映画『脱出』で使われた音楽で、少し前に梅田のプラネットプラスワンというミニシアター観ることが出来ました。
作曲者のホーギー・カーマイケルが劇中にピアノで弾き語りで唄っていました。
映画自体も面白かったです。
ボガードとバコールもイイですね。
俗に、ティンパンアレーの布陣で製作された、70年代後半の『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』『はらいそ』をエキゾチック三部作と称しますが、浮世離れした、夢にいる様な世界観が今でも新鮮です。
細野さんはこのとき20代後半でもっとも才気走ってる感じが伝わっています。
熱に浮かされた感じというか。
南国で育ったリズムを多用しながら、細野さんならではのクールな視点が貫かれていてそのバランスが絶妙です。
この時期、方や大滝さんもナイアガラレーベルから実に個性的な音楽を作りまくってました。
どこかライバル心もあったのだと思います。
松本 隆さんの情緒を重んじる言葉世界から見事に切り離されて。
当時の日本のロックの主流から独立していました。
だからこそ今でも音楽が生き残っているのでしょう。
細野さんのライヴは昨年の6月に初めて行きました。
もう大感激でした。
もうあれから一年近くになるのですね。早いなぁ。
またツアーで大阪に来られるそうですが、今回は行けそうにありません。
先日の中華街での宴は6月に国営放送でオンエアされるそうですね。
観ねば。
40年前の中華街ライブの模様はボックスセット『クラウン・イヤーズ1974-1977』のDVD に収録されていますね。
最後に、この場を借りて、
細野さんの育んでこられた魅惑の音楽に感謝します。
これからも御達者で浮世離れした音楽で楽しませてほしいです。
因みの今回のシングルはオリジナル盤ではなく、90年代中期に発売されたヴィヴィッドレコードからの再発盤です。これはこれでレア。
以上、(午前)三時の子守歌でした。
『北京ダック』《VSEP-805》〈作詞・作曲・編曲:細野晴臣〉(02’41’’)【1976】
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