『HAPPY BIRTHDAY ep /渡辺満理奈』 [邦楽女性アイドル/90年代]
あ、夜分にどうも。
『突撃!隣のシングル盤』のコーナーです(レコードプレーヤーのアームの大きなオブジェを持ちながら)。
今回取り上げるシングルは、
前回、前々回同様、GREAT TRACKSからのリリース、第三弾。
渡辺満理奈さんの15枚目のシングル。
1992年にCD(12センチ)として出たモノが何と25年後にアナログ7吋になっちゃいました。
これは退化なのか進化なのか。
《退化の改新》とお茶を濁しておきましょう。
たしか当時アナログの12インチでは出ていたような。
今回のリリースもDJ小西康陽さんの肝入りでしょう。
先日ニューシングルを久しぶりに発表した小沢健二さんの過去のアイドル仕事。
フリッパーズギターを解散して間もない頃の空白を彩るプロデュースワーク。
90年代中期以降の狂騒を振り返ると、ソロデヴュー前の無風状態の頃にこうした作品が残されたのは有意義だったと思います。
A面は『バースデイ・ボーイ』。
当時としては珍しいブレイクビーツ・ポップ。
最高です。
オザケンのセンスの非凡さに降参。
海外の青春小説を翻訳したような軽いタッチの瑞々しくポップな筆致の歌詞。
フリッパーズ以降、彼のところには作詞の依頼が沢山舞い込んだようです。
この時代のアイドルソングは従来のノスタルジックな清純さ喚起させるさせるザ・アイドル歌謡な楽曲、またはユーロビートの効いたダンス系のモノが殆どで、このシングルの様なヒップホップ系な海外の音楽のトレンドを取り入れたモノは珍しかったと思います。
エピック時代のこれまでのラグジュアリーな作風とも一線を画したセンス。
なのでとても新鮮に聞こえました。
ヒップホップと言ってもラップしている訳ではなく、リズムが強調された、ループを多用したサウンド。
レコーディングにはオザケンを始め、ソウルセットの川辺ヒロシさんやオリジナル・ラブの木原龍太郎さんらが参加しています。
これまでは満理奈さんより上の世代のスタッフや作家陣(80年代のエピックソニー系、シティポップス系)が主体となって楽曲制作をしていましたが、上記の三人は彼女と同世代であり、奇しくも90年代の渋谷系を担っていく連中でありました。
ここでも彼女の目利きが効いていると云わざるを得ません。
その後に、はっぴいえんどのカバーを経て、先祖返りともいえる福生のご隠居さまのご加護を得るのは、ソロデヴュー以来常に洗練された、育ちの良い、洋楽的で都会なポップスを歌ってきた彼女にはあまりに当然と云えるし、出来過ぎとも云える結末ですね。
出来れば、クチロロの三浦康嗣さんによるリミックスバージョンがあったら聴いてみたかったです。
B面は『夜と日時計』。
これも小沢健二さんのオリジナルソング、アコースティック・ギターの弾き語りをバックに唄われるバラード。
ネオアコのフィルターを通過しての清涼感のある歌詞とメロディ。
寝静まった真夜中、草原の澄んだ空気を感じずにはいられません。
後に、オザケンもシングル『暗闇から手を伸ばせ』のカップリングでセルフカバーします。
『ヘッド博士』と『犬は吠えるがキャラバンは進む』のミッシングリンク。
オリジナルのCDにはカラオケやブレイクビーツ集も収録されていましたが、今回のシングルではカットされています。
因みに、
24日の今日はオリジナル・ラブの田島貴男氏の誕生日。
バースデイ・ボーイさん、おめでとうございます。
蛇足ですが、その前日はこのブロ・・・。
まぁ、
やめておきましょう。
レコード針に付着した埃くらいに些末なこと。
埃なんて一息で吹き飛ばしちゃいましょう。
ふーっ
今回の様な、アナログレコードが生産中止になった時代に生まれたシングルへ再び脚光を当てる企画、MEG-CDよりは気が利いているので今後も続けて欲しいですね。
小西さんが最近編んだコンピレーション『A』に即したリリースのようですが。
この選曲は一見するとレコード会社がお手軽に作ったコンピレーションCDと変わらないような、ベタな曲目であまり食指は動きません。
個人的には井上睦都実さんなら『ボーイフレンド』もいいけど、小西さんご自身が作った『抱きしめたい』のアルバムバージョンを7吋で欲しいです、是非。
『BIRTHDAY BOY』《MHKL 3》〈作詞・作曲・編曲:小沢健二〉(05’01’’)【2017】
バースデイ・ボーイ(7 inch Analog)(完全生産限定盤) [Analog]
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックダイレクト
- 発売日: 2017/03/22
- メディア: LP Record