『君は人のために死ねるか/杉 良太郎』 [歌謡曲/70年代]
こんばんは。
先日、遠藤 実氏の訃報が飛び込んできました。
日本の歌謡曲を代表する作曲家。「星影のワルツ」「北国の春」「せんせい」「高校三年生」等ヒット曲多数。
歌謡曲に関して僕は不勉強なのですが、僕が好きな遠藤 実作品を取り上げてご冥福をお祈りしたいと思います。
杉 良太郎さんの不滅のハードボイルド歌謡『君は人のために死ねるか』です。
単なる「珍盤奇盤」のカテゴライズに止まらないパワーを持った爆発的にカッコいい音楽です。
杉様主演の刑事ドラマ『大捜査線』(1980)のテーマソング。
イントロのチェンバロの不穏な響き、ストリングスのミステリアスな調べ。
サイレンのようなエレキギターの残響。
う〜ん、ドラマティック。
作詞も杉様。
若くして命を落としてしまった戦友への鎮魂歌。
前半のニヒルな語りから徐々に熱を帯びていきます。
混迷する社会へ、空々しい人間達への杉様の熱い暑い厚いメッセージが込められています。
この内容は現代にも有効で色褪せるコトを知りません。
他人の為に何かをするコトが煩わしく思える社会、電車で他人に席を譲れない社会、他者とのコミュニケーションが希薄な社会に捧げるほろ苦いブルース。
杉様の巻き舌メッセージを載せて、遠藤実メロディが炸裂しています!
♪きぃみぃわ ひとぉの ためぇに しねるかぁ〜
あいつの なわぁ〜〜 ぷぉりぃぃす、 まぁぁん〜
これぞ歌謡曲のそこぢから。
聴く者の心臓を鷲掴みして鼓動を圧迫する、キョーレツなサウンド。
杉様のギラついた眼光にクラクラします。
獲物を狙う一匹狼の熱唱。
斉藤恒夫氏のアレンジも完璧です。
平成以降のナヨナヨした、人当たりの良いヒット曲では到達出来ない世界がここにあります。
この曲のあとにはペンペン草も生えません。
道なき道を突き進むハイブリッド歌謡!
一度聴いたら二度と脳裏から消すことの出来ない数奇な音楽。
人を笑わせようとか、コミックソングで受けようとか、そんな狙いで生まれたとは思えません。本人達にとっては100%真剣に作った結果、作者の思惑をはるかに越え、誤解までをも生んでしまった罪作りなカルト作。
どのような経緯でこの曲が生まれたのか、『そのとき歴史が動いた』とかNHKで特集を組んで欲しいですね。
こういう曲をレコード大賞にしたいですね。駄目か。
このシングルは2004年にソニーからDVD付きで初CD化されました。
当時、音楽ファン、音楽業界を混迷の底に陥れたCCCD仕様での愚かなリリースでしたが、後に一般的な従来のCD-DAの規格で再発されました。
ソニーにも音楽への良心が残っていたことが判りホッとしました。
あの時期に不幸にもCCCDで発売された作品もすべてCDまたはダウンロードで再リリースされると良いのですが。
このCDでのその他の収録曲を紹介していきましょう。
二曲目は菊池成孔氏のリミックス、これは実に蛇足以外の何者でもありませんでした。
菊池氏には何の恨みもございませんがリミックスする相手が悪すぎます。
なんでもリミックスすればいいってもんじゃありません。一度聴くだけでお腹いっぱい。
三曲目は『君は…』のライヴヴァージョン。
軽快なアレンジと、オリジナルバージョンよりも5割増の濃厚な歌いっぷりを堪能出来ます。
四曲目は『君は…』のTVオンエアサイズ版。
五曲目はアリスの『チャンピオン』のライヴでのカヴァーヴァージョン。
ドラマティックなニューミュージックとして『君は…』と双璧を成す谷村新司氏による名曲。
歌舞伎役者ばりに見栄を切る歌いっぷりとバックの宮川 泰氏による華麗なオーケストレーションとともにライヴ映えする一曲。エンディングの「ライラライラ…」はで自己陶酔し過ぎてちょっとラリってます。
宮川さんももうこの世にいないですね。
六曲目は『江戸の夜明け』。
ドラマ「大江戸捜査網」のテーマソング。
一転、昭和から江戸時代へタイムスリップ。
七曲目は『すきま風』。
ドラマ『遠山の金さん』のテーマソング。
この曲も遠藤 実作品。
切々と歌う、哀愁のバラード。名曲。
八曲目はとどめの名スタンダード、鳴く子も黙る必殺『MY WAY』。
ライヴバージョン。
華麗に大仰を塗り重ねたオーケストレーション。
道なき道を行く、杉様の明日はどっちだ。
九曲目は『君は…』のカラオケバージョン。
あ、先日数年ぶりにカラオケに行ったときに歌ってきました、ハイ。
全九曲。
究極の杉 良太郎オンステージ。ひとりのビッグショー。
一度聴き始めたら最後、のアリ地獄歌謡。
毒を喰らわば皿まで。
さて、遠藤氏に話を戻して、氏はミノルフォンと云うレコード会社も立ち上げてますね。
僕はミノルフォンでの山本リンダさんのネジの緩んだキュートなポップスを聴いて心地好い目眩がしました。
ジョニー広瀬さんのザリガニ ヴォイスでカルトな人気を誇る迷曲『太陽に抱かれたい』を聴いて死ぬのが馬鹿馬鹿しくなりました。これらも遠藤 実氏の素晴しい作品です。破壊的なポップスです。これらの音楽を聴いているとJ-POPでのチャートを賑わしている音楽では満足出来なくなります。
因みに、このレコード会社は徳間ジャパンの前身です。
Perfumeも遠藤 実氏の遺産なのですね。
もうひとつ、この曲を初めて聴いたのは90年代初頭。桑田さんのラジオ番組に杉 真理さんがゲスト出演したときに好きな曲としてこの『君は…』をリクエストしてオンエアしたのです。ラジオの前で唖然としましたね。
元気の出るシングルです。
滋養と強壮、虚弱体質に効きます!
聴きます?
『君は人の為に死ねるか』《MHCL-675〜6》〈作詞:杉 良太郎/作曲:遠藤 実/編曲:斉藤恒夫〉(3’19’’)【1979】
この曲、杉さまご本人の作詞だったんですね!
それだけでも大発見でした!!
初めて聴いたのはいつだったか憶えてないんですけど、
ものすごいインパクトで一瞬にして記憶に刻まれた曲でした。
改めて聴くとやっぱりスゴイですね。
by Lo-Fi (2008-12-13 20:56)
こんばんは、Lo-fiさん。
コメント&niceありがとうございます!
Lo-fiさんにも衝撃的な一曲だったのですね。
役者じゃなければ成立しない歌ですね。
説得力が違います。
杉様シビれるっ!
by 都市色 (2008-12-14 21:45)
こんにちは。
ずいぶんオモチャにされちゃった歌でしたね。
このアナクロ性がおもしろいのでしょうか。
「マイ・ウェイ」想像できるだけに聞きたくねぇ~。
「チャンピオン」ぜひ聞きたいです。悲しいとき……
by MOMO (2008-12-15 22:22)
>MOMOさん、こんばんは。
コメント&NICEありがとうございます。
現在のヒット曲には表現出来ない濃厚なパワーがアナクロ性なのかもしれません。
「マイウェイ」は勝新さんも持ち歌にしていたそうですね。
by 都市色 (2008-12-17 02:43)