『きりきり舞い／近田春夫＆ハルヲフォン』：03'54''：So-net blog

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『きりきり舞い／近田春夫＆ハルヲフォン』　[邦楽ロック／70年代] [編集]

こんばんは。
咋年末に取り上げました阿久悠作品、あれだけでは物足りないのでもう一枚いきましょう！！
近田春夫＆ハルヲフォンによる「きりきり舞い」《GK-8056》です！！

これはカヴァー作品でオリジナルは山本リンダさんのヒット曲です。
B面も阿久悠作品です。

1978年にリリースされた近田春夫＆ハルヲフォンのサードアルバム『電撃的東京』には本当に痺れました。
勿論リアルタイムで聴いていた訳ではありません。
当時「オールナイトニッポン」のパーソナリティや「ポパイ」誌のコラムで歌謡曲を新しい切り口で再評価されていた近田さんの確信犯的な批評精神が爆発しています。そういえばヒット曲「林檎殺人事件」を生んだドラマ「ムー一族」にも近田さんは宇宙人役で出演して音楽情報コーナー担当していたそうです。

それはともかく『電撃的東京』は一曲を除き全曲歌謡曲のヒット作品のカヴァーで構成された問題作。
Tレックス／トニー・ヴィスコンティ的音響を歌謡界の刹那的な様式美に換骨奪胎した野心作は今聴いても新しい。30年前の作品とは思えません。
ハコバン上がりの強者エンターテイナー＆プレイヤー集団、ハルヲフォンのスピーディでグルーヴィな演奏が“都会の夜の恋人たち”の空間を駆け抜けていきます！

歌謡曲の本来持っていた魅力、何でもアリな雑食性、アブノーマルなパワーを斬新なアレンジで引き出すことに成功しています。ロックが日本でも市民権を獲得し始めた時代に、ロック至上主義者達の気持ちを逆なでするような近田さんの天の邪鬼なセンスは希有だと思います。常に音楽シーンから一定の距離を保ってクールに見つめ続ける近田さんの『考えるヒット』の第一歩。
今でこそ，筒美京平さんの作品を文化的に評価することは当たり前ですが、大衆音楽を十把一絡げに取り扱っていた時代に筒美作品や郷ひろみさんの曲を積極的に評価することは珍しかったでしょうね。

話をシングルに戻して、『きりきり舞い』。
このハルヲフォンバージョンはシングルバージョンとアルバムバージョンの二種類があります。
どちらともソフトでコケティッシュな山本リンダさんの原曲をドラッギーなロックナンバーに塗り替えています。『電撃的東京』でのアルバムバージョンは痛快な8ビートに仕上がっています。シングルバージョンはテンポを落としてジャケットの雰囲気通りディスコティークなアレンジ。
そして二曲ともリードヴォーカルはベースの高木英一氏が担当しています。
女性人称の歌詞と高木氏のナヨナヨした優しい歌唱が同性愛的世界を無意識に喚起させて素晴らしいです。阿久悠さんの歌詞の狂気や歪みがさらに強調されています。作曲は都倉俊一さんでピンクレディーの一連のヒット曲コンビですね。
http://www.youtube.com/watch?v=TrXTqqJhJus

B面は『東京物語』。
この曲のオリジナルシンガーは森進一さん。
この曲はソリッドなハードロック仕立て。演奏の疾走感が溜まりません。カッコ良過ぎ！！
リードヴォーカルはギタリストの小林克己氏。小林氏のボーカルもいい味出しています。
東京の片隅で寄る辺なきひと組の恋人同士の哀愁がデスパレート一直線なハードロックサウンドに運ばれていきます。

どちらもオリジナルバージョンを凌駕する勢いの名演名唱です。
もう少しハルヲフォンの音楽は評価されて良いと思います。

それから。
このアルバムから十年後の1988年、幼き頃にテレビに映る『ムー一族』の近田さんを観て育った小泉今日子さんのフルアルバムを近田さんは一枚プロデュースします。当時海外で流行し出したハウスサウンドで歌謡曲に再び接近しています。
それが「コイズミ・イン・ザ・ハウス』です。当時ヒップホップに熱心だった近田さんが組んでいた新しいバンド、ビブラストーンがバックを務めています。近田さん以外にも小西康陽さん、井上ヨシマサさんという当時の新進気鋭のソングライター／アレンジャーが参加おり、このアルバムのラストは筒美京平さんによるヒット曲「水のルージュ」のリミックスバージョンで締めくくられています。

『きりきり舞い』〈作詞：阿久悠／作曲：都倉俊一／編曲：近田春夫〉（03’45’’）【1978】