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『ロシュフォールの恋人たち/ミシェル・ルグラン』 [サントラ]

ロシュフォール.jpg

ボン・ソワ(こんばんは)。
本日はこのブログの夏のスペシャル・プログラムって感じです。
全国5千万の映画ファン&サントラマニアの皆様お待たせしました。
映画音楽のシングルも紹介していきましょう。
栄えある一枚目はこのサントラ盤です!!
『ロシュフォールの恋人たち(Les Demoiselles de Rochefort)』。
ジャック・ドゥミ監督による1967年のフランス産傑作ミュージカル。
音楽を担当するは天才ミシェル・ルグラン。
これは僕の生涯の一本!
恐らく一番好きな映画です。
大好きすぎて上手く云えません。

ドゥミ監督とルグランの黄金コンビによる、港町を舞台にした物語の三部作の最後の作品。
監督の生まれた町、ナントを舞台にしたデヴュー作『ローラ』。
カトリーヌ・ドヌーヴが主演して、シェルブールを舞台にした『シェルブールの雨傘』。この映画はカンヌのパルムドール賞を獲得しました。
そしてロシュフォールを舞台にした本作。

毎年恒例の港町の夏祭りのあとさきに芽生えた美しい恋の祭典。
ロシュフォールの街を壮大なロケーションが行われ、監督の美意識が貫かれた色彩豊かな街を縦横無尽にミュージカルの住人たちが華麗に舞い踊ります。
まさに夢のような映画です。
この映画の謳い文句は『生きることが楽しくなる映画』でした。
本当にそうだと思います。
ドゥミの漲るパッションが、ルグランの躍動するメロディが、ミュージカルと云う現実離れした無重力な世界で遺憾なく発揮されています。
そして名優たちのスウィングするダンスの楽しさ。
アメリカから招待されたミュージカル・スタア、ジョージ・チャリキスとジーン・ケリーもフランス産の新しいミュージカルに花を添えます。

B面から紹介しましょう。
「双子姉妹の歌」です。
この映画の主役、燃えるような恋をいつも夢見る双子姉妹を演じるのは映画史上最も美しい姉妹と謳われたフランス映画界の名花、フランソワーズ・ドルレアックとカトリーヌ・ドヌーヴ。
だから息もピッタリで美しい。
夏祭りの準備の為に大広場に到着したキャラバンを眼前にしてトキメキを隠せない双子姉妹の喜びに充ちた歌。なんてキュートな歌なのでしょう。
双子姉妹が歌う場面までのシークエンスも素晴しいですね。

オープニングを飾る大作「キャラバンの到着」の歌が終り、それまで広場一面を映していたカメラが、スムーズに水平移動しながら上昇し、徐々にズームインして広場に面した双子姉妹の住む建物の二階の部屋の窓まで淀み無く場面がワンカットで展開されていきます。
そして双子姉妹のソランジュ(ドルレアック)とデルフィーヌ(ドヌーヴ)は子供たちが祭りで披露するバレエのレッスンを丁度終えたトコロ。
という訳で彼女たちの唄が始まるシーンからどうぞ……。



 ♪ 私たちは双子姉妹
  双子座の星の下に生まれたふたり
  ミ・ファ・ソ・ラ・ミ・レ〜 レ・ミ・ファ・ソ・ソ・ソ・レ・ド〜

トレ・ビア〜ン!!
優雅なドルレアックとドヌーヴ。
初恋の色の白を基調とした愛らしいワンピースのドレス。
なんて艶やかなのでしょう!

続いてA面の曲。
ロシュフォールの軍隊所属で絵描きの水兵さんのマクサンスを演じるジャック・ペランによる、この映画の「愛のテーマ(マクサンスの歌)」。彼がカンバスに描いた理想の女性を求めて切なく歌います。
この理想の女性はドヌーヴに似ているのですが二人無事結ばれることが出来るのでしょうか。
この映画がユニークなのは運命の相手に巡り会うというトコロで物語が終わるコトですね。
何処かにきっといるはずの相手への揺るぎなく深い情熱の深さ、恋愛への無償の献身がこの映画をさらに純粋なモノにしています。


 
 ♪ 彼女は遠くにいるのだろうか それとも近くに?
  まだ何も判らない でも彼女は存在するんだ
  漁師の娘か それとも王女様か
  生まれなんてどうでもいい 僕は芸術家だから
  愛はその掟を強いるもの

う〜ん、ロマンチック。
このバラードはアレンジと歌詞を変えて、マクサンスの理想の女性となるデルフィーヌも『デルフィーヌの歌』というタイトルで劇中で唄います。
この映画では物語で結ばれるであろうカップルが対応するメロディを唄います。メロディによってどのカップルが結ばれるのか判るのですね。

忘れもしません、1992年、浪人時代の夏。
この素晴しい映画が四半世紀ぶりに都内でリヴァイバル上映されたのです。
前年、とある雑誌で小西康陽さんがこの映画のサントラを大絶賛していたのが始まりでした。
翌年浪人の為に上京して、まだ宇田川町のロフトにあったころの渋谷WAVEにて輸入盤のサントラを買って衝撃を受けました。このとき店内で12インチを漁っている田島さんを見かけました。
さらに、この夏の上映に先駆けて神保町にある岩波ホールにてドゥミ監督の奥様で映画監督でもあるアニエス・ヴァルダによる『ジャック・ドゥミの少年期』を観てヒートアップしました。
『ロシュフォール〜』を上映したのは銀座の文化劇場でした。
山野楽器の銀座店の裏通りにあった映画館でした。
現在は名前が変わってしまいましたが。
観賞後の感激の嵐!!
この映画が夏に上映している期間内で僕は計4回劇場に足を運びました。
最終日にも行きました。
その後、VHSも発売されて買って何度も観ました。
DVDも買いましたが当時好きな女の子にプレゼントしてしまいました。フラれてしまいましたが。

このサントラ盤は、CDによる一枚のものと完全版の二枚組、さらに21世紀に再発されたフィリップス社製の二枚組のアナログ盤も持っていて何度聴いたか分かりません。
本当に素晴しい内容でサントラ盤というカテゴリーを超えて愛おしいアルバム。
質量ともに素晴しく、一曲の駄作もありません。
ルグラン・ジャズの最高傑作!
一枚で構成されているサントラ盤は映画でのダイアローグ(会話)がカットされていて、二枚組のサントラ盤の方はダイアローグも楽曲に収録されています。曲だけを楽しみたい場合は前者を、劇中の雰囲気も楽しみたい場合は後者を聴くと良いでしょう。
本日紹介しているシングル盤はダイアローグ入りです。
因みに、このシングル盤の『双子姉妹の歌』の演奏時間は三分五十四秒であります!!

実はこのミュージカルで唄われているシャンソンは出演者たち本人の歌唱ではなく、プロのフランスの歌手たちによって吹き替えられているのです。配役にピッタリの歌声を持つ歌手の人選。
でもそれが映画の評価をなんら下げることはありません。
因みにドヌーヴの唄はアン・ジェルマン、ドルレアックの唄はクロディーヌ・ムーニエ、そしてペランの唄はジャック・ルヴォーがそれぞれ担当しています。ミシェル・ルグランのお姉さんのクリスチャンヌ・ルグランもこの映画の唄の吹き替えに参加しています。

この映画はストーリーとしてはボーイ・ミーツ・ガールもののどうと云うコトのない内容ですが、それが良いのだと思います。ミュージカルが楽しめない人には向かない映画です。
ストーリーを追って楽しむならこの映画は一度見るだけで十分かもしれませんが、ミュージカルとしては一流に素晴しいです。完璧な歌と踊り、感情の高鳴りを楽しむのがミュージカルなのですから。だから何度観ても飽きないのだと思います。
十代の終り、多感な頃に出会った映画はやはり幾つになっても鮮烈に記憶に残るものだと思います。
江戸川沿いの四畳半&風呂なしのボロアパートに住んでいた浪人時代、灰色な環境の元で出会ったので余計に総天然色のワイドスクリーンからのミュージカルが天国のように映りました。
でも只のノー天気な映画なだけではなく、そこはかとなくドゥミ監督の眼差しには影が漂うのです。
この物語が実は「すれ違い」で構成されていたり、物語の中にそっと、戦争や猟奇的な殺人のエピソードを入れたり。淡い無常観。

この映画のカトリーヌ・ドヌーヴの美しさにヤラレタ僕はその年の秋に公開された当時のドヌーヴの最新作『インドシナ』も渋谷のBunkamuraまで観に行く始末。
他にもこの浪人の年に映画館で観た「ぼくの伯父さん」や「男と女」の影響で大学に入ってから第二外国語で無謀にもフランス語を選択して単位を落とす程苦労するのですがそれはまた別の話。

毎年夏になると観てしまう映画。
観ていると、
♪生きるコトも爽やかに見えて来るから不思議だ〜

いつもよりさらにダラダラと熱く語ってしまいました。
冗長さ50%アップ(当社比)でお届けしてしまいました。
幾らあってもこの映画は語り尽くせません。
筆舌に尽くしがたい名作。
最後に、この場を借りてニュープリント&デジタルリマスター版の「ロシュフォール〜」のDVDリリースを切望しつつ、この拙文を終えたいと思います。
オ・ヴォワ(じゃぁ、また)。

Fin.

『双子姉妹の歌(Chanson des Jumelles)』《SLF-1108》〈 Jacques Demy - Michel Legrand 〉(3'54'')【1967】


ロシュフォールの恋人たち リマスター完全版

ロシュフォールの恋人たち リマスター完全版

  • アーティスト: ミシェル・ルグラン,ジャック・ルヴォー,ジャッキー・ワード,ドナルド・バーク,ダニエル・ダリュー,クロード・ペアレント,アン・ジェルマン,ジョゼ・バルテル,フィル・ウッズ,ミシェル・ルグラン・クインテット,サントラ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2007/04/18
  • メディア: CD




ロシュフォールの恋人たち ― オリジナル・サウンドトラック

ロシュフォールの恋人たち ― オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2002/05/02
  • メディア: CD



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nakamura8cm

トレビアン!
もう言うことが何も残っていないほど、素晴らしい記事ですね。私も同じく、1992年のリバイバルで見て、サントラ買って、VHS買って、2枚組みのサントラも買って・・・って道のりを歩いてきた人間です。違うのは第2外国語がドイツ語だったことくらいでしょうか。
港町三部作はどれも素晴らしく、「ローラ」でアヌーク・エーメが歌うシーンなんか発狂しそうなくらい好きです。去年は「モデル・ショップ」(「ロシュフォール」の次作で、「ローラ」の後日談的作品)を見れて感激したなあ。「シェルブール」の陰なオーラも捨てがたいし。それでもやっぱりロシュフォールの輝きは特別ですね。しかしこんな7インチをお持ちとは!負けた!これ欲しいなあ!超悔しいっす!(笑)
ところでA面曲はシングルとしてはちょっと地味ですよね。普通「双子姉妹」がA面でしょ。私なら「LA CHANSON D'UN JOUR D'ETE」をB面に、いや両A面でいいか。
うちには仏版2枚組DVDがありまして、ボーナスディスクはヴァルダが撮ったロシュフォール25周年特番です。字幕なしですが、十分楽しめました。
私もコメント5割増でお届けしました~(笑)
アビアント!
by nakamura8cm (2008-08-03 01:32) 

Lo-Fi

こんばんは。
都市色さんの思い入れがとーっても伝わる内容ですね。
7インチでしかも国内盤があったなんて、初めて見ました!!
双子姉妹の歌がB面というのにも驚きです。
ミファソラーミレ♪明日思わず口ずさんでしまいそうです。

素敵な記事をありがとうございます。
by Lo-Fi (2008-08-04 02:26) 

都市色

>nakamura8cmさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
僕と同じ時期に映画に魅了されたのですね!!
ドゥミ監督の特集は僕も観に行きたかったです!
残念無念。
DVDはやはりフランス版を取り寄せないとイケナイですね。
日本ヘラルドが数年前、角川書店に吸収されてしまったので国内版DVDがリリースされる望みは薄そうですし。
シングル盤はビックリする程安い値段で以前にゲット出来ました。
by 都市色 (2008-08-04 13:40) 

都市色

>うっちさん、niceありがとうございました!
by 都市色 (2008-08-04 13:41) 

都市色

>Lo-Fiさん、こんにちは。
コメント&niceありがとうございました!
思い入れたっぷりな文章で少し暑苦しいかなと思いましたが、楽しんで頂けたなら嬉しいです。
この映画は当時の日本でも評判だったのかもしれませんね。
パンフとか読むと好意的な著名人のコメントが多いです。
シングルは僕も「双子姉妹の歌」がA面扱いの方がシックリくると思います。
大きなスクリーンでまた観たい映画です。
by 都市色 (2008-08-04 13:45) 

mono

はじめまして!
ネット検索して、偶然、こちらのページに辿り着きました。
私もこの作品が大好きで、フランス版2枚組DVDも持っています!
さらに、先日、フランスから「双子姉妹の歌」のスコアや
何曲かピアノ楽譜(ピース版)も取り寄せちゃいました(笑)。

ちなみに今月31日からシネセゾン渋谷で
デジタルリマスター版がリバイバル上映されますよ♪
(既にご存知でしたらすみません)
恐らく、国内版リマスターDVD発売も期待出来ると思います!
by mono (2009-01-02 11:53) 

とき

40年くらい前(たしか高校生のころだったと思います)映画館で初めて見て、感動して7-8回みました。それがきっかけでフランスにあこがれ、ヨーロッパにいき、ロシュフォールにも実際にいきました。ただ、冬に行ったので雲が垂れ込め霧雨のような天気でしたが、それでも感激でした。それから、20年位前にビデオテープを買い何十回、何百回も見てテープが切れてしまいました。それ以後は見ることもなくなりましたが、最近また見たくなりDVDを買おうとしましたが、廃盤になっていて、買えませんでした。これが私のロシュフォールの恋人たちにたいする、記録と思い入れです。最初見たときこんなすばらしい音楽、パステルカラーの美しい町並み、美しい人たちがいるのをみて、驚愕しました、こんな世界もあるのだという思いです。行ってみて解るのですが、フランスの田舎はまさに、中世のおとぎばなしの世界です。
by とき (2009-01-21 23:20) 

都市色

>monoさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
お返事が遅れまして、大変申し訳ありません。
深くお詫び致します。
今春、リヴァイヴァル上映ですよね!
「シェルブールの雨傘」と供に!
デジタルリマスターと云うのが嬉しいですね!!
スコアを取り寄せるなんて本格的。
確か、ドゥミの映画本も海外にはありますよね。
持ってないですが。
最近、ドゥミ&ルグラン作品のコンピも出ましたよね。
国内版DVDも期待ですね!

by 都市色 (2009-01-22 10:59) 

都市色

>ときさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
実際にロケ地へ訪れたなんて凄いですね。
憧れます。
フランスの田舎は昔の建物が残されているのですね。
素敵ですねぇ。
行ってみたいです。

僕もVHSで何度も観ました。
毎年、夏の終りになると観たくなってしまうのです。
今年はリヴァイヴァル上映もあるので大きなスクリーンでまた名画を堪能出来るので楽しみです。
DVDも欲しいですよね!
by 都市色 (2009-01-22 11:03) 

お名前

コメント
by お名前 (2011-03-08 17:56) 

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