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『DO I LOVE YOU ? / THE RONETTES』 [GIRL POP]

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こんばんは。
読書の秋。と云うコトで最近漸く読み終えた本が、
『フィル スペクター 蘇る伝説〔HE'S A REBEL〕[増補改訂新装版]』
《白夜書房》〈著者:マーク リボウスキー/訳者:奥田祐士/監修:大瀧詠一〉(774p)【2008】
です。
60年代の幕開けとともにロックンロールの創成期を若干二十歳の小柄な青年がニューヨークとハリウッドを股にかけ、才気と狂気だけで音楽業界をのし上がっていく前半は特に面白かったです。

この物語に登場するロックヒストリーの要人達の多彩さな顔ぶれには舌を巻きます。
60年代前半、ロックンロール戦国時代の裏方たち、ドン カーシュナー、レスター シル、ジェリー ウェクスラー、トム ダウド、スナッフ ギャレット、リー ヘイズルウッド、マイク&ストーラー、マン&ウェイル、ゴフィン&キング、バリー&グリーンウィッチ、ポーマス&シューマン、バカラック&デイヴィッド、ブルース&テリー、ラス タイトルマン、アンドリュー オールダム、ジャック ニッチェ、ラリー レヴィンなど。
そして60年黄金代のシーンの表舞台を彩ったスターたち、ロネッツ、ライチャス ブラザーズ、アイク&ターナー、ビーチ ボーイズ、ローリング ストーンズ、ビートルズ、70年代のレナード コーエン、ジョン レノン、ジョージ ハリスン、80年代のラモーンズなどなど胸がワクワクするような個性的なミュージシャン達が活躍をしていた時代の輝きが眩しい。

その中でもスペクター氏はやはり単なる山師ではなくケタ外れの知識と非常識と才能を持って生き馬の目を抜く活躍をしていたと云うコトが判ります。個性と孤独とコンプレックスを才能の犠牲にして。
一言で云えば“憎まれっ子世にはばかる”。
私生活の面に置いては悪行の限りを尽くしていてお近づきになり無くないタイプの人間です。
しかし、生い立ちの複雑さから起因する内気な性格や外見のコンプレックスを持った少年時代、ラジオやレコードから流れるロックンロールやリズム&ブルースだけが孤独から精神を解放できる拠り所だった点は、十代の頃の僕にも共感出来るのです。
ロックンロールビジネスにおける策士めいたやり口は強引で狡猾であざとくてダーティですが音楽への恐るべき執念はただモノではありません。
まぁ何と云うか気障っぽく表現すれば、音楽界を舞台にした壮大なピカレスク ロマンでしょうか。

増補改訂版の増補に該当する90年代以降のエピソードは無くても良かった気がします。特に21世紀以降の殺人疑惑にまつわる裁判ネタは蛇足以外の何者でもないでしょう。醜悪でした。
スキャンダルに事欠かないスペクター氏をマスコミは放っとかないし、彼の遺産やネームヴァリューをレコード会社も放っとかないのです。
とにかく60年代以降のロック、およびJポップも未だにフィル スペクターからの影響から逃れることが出来ないのです。
うたた寝の枕に丁度良い分厚さで読むのに難儀しましたがポップミュージック界の裏側を十分楽しみました。

と、三流ブックレヴューはここまで、この後はお馴染み冗長シングルレヴューを。
ともかく本題。
『蘇る伝説』読了記念として、今夜はロネッツのこのシングルを。
数々のロネッツの名曲の中でもとりわけ大好きです!
何と云うか『BE MY BABY』『WALKIN' IN THE RAIN』『BABY I LOVE YOU』といった王道の名曲とは少し違う魅力、洒落た感じが『DO I LOVE YOU ?』がするのです。
ミントのような爽やかで軽やかな感じ。
このシングルは1964年の6/20付けで全米34位の最高位でランキングされています。
アンダース&ポンシアの名コンビの作品。
ヤン富田氏のDOOPEESがカヴァーしたロネッツの『HOW DOES IT FEEL』もこのコンビの作品ですね。
分厚いホーンの壁の上を甘いイントロのベースとギターのユニゾンが流れてきます。
『シンフォニーが聴こえる』
軽やかなフィンガースナッピンのリズム。胸がドキドキ。
そしてカウベルの正確なリズム。
さらにエコーの効いたパワフルなドラムが刻む8ビート。
ピアノの連弾。
ヴェロニカ嬢のセクシーでキュートなヴォーカル。
甘い溜め息のような『♪WOW WOW』
『恋しているかしら?』
ハル ブレイン氏の荒ぶるドラミングが向こう見ずな若いハートを表現しているようです。
ティーンエイジの秘めたる胸の内を爆発的なサウンドで解放する驚異のスリー ミニッツ オブ パラダイス。
アレンジはジャック ニッチェ、エンジニアはラリー レヴィン両氏というお馴染みの布陣。



この曲の主役、ヴェロニカ嬢とスペクター氏はこのシングルをリリース後の翌年に結婚し、数々の裁判の末に離婚します。離婚後のこの二人の腐れ縁も散々『蘇る伝説』で綴られていますが似た者同士の狂気の沙汰ですね。

B面はインスト曲『BEBE AND SUSU』。
クレジットはロネッツ名義ですがレコーディングの合間に即興ででっち上げられた感じの、ジャズのインスト作品。作曲もアレンジもフィル スペクター氏。気合いの入りまくったA面の裏はこうした捨て曲が配置されることが多かったようですね。ラジオでオンエアするときにB面をかけさせないようにする為の意図的なものらしいですね。
でも一流のスタジオミュージシャンが演奏しているのでとってもスウィングしています。ウォール オブ サウンドなジャズというのも珍しいのでは?

また12月になれば、あの不朽のクリスマス アルバムがどこからか流れ出します。
60年代のある一時期にまき散らした遺産を未だに誰も忘れられず伝説の男にふり返ってしまうのですね。

この次は日本の“ドン カーシュナー”こと朝妻一郎氏の『ヒットこそすべて』《白夜書房》を読もうかしらん。

『DO I LOVE YOU?』《PHILLES 121》〈Composed by PHIL SPECTOR. VINCE PONCIA, PETE ANDREOLI / Arranged by JACK“SPECS” NITZSCHE / Engineered by LARRY LEVINE〉(2’32’’)【1964】


フィル・スペクター 甦る伝説 増補改訂版

フィル・スペクター 甦る伝説 増補改訂版

  • 作者: マーク リボウスキー
  • 出版社/メーカー: 白夜書房
  • 発売日: 2008/03/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




PHIL SPECTOR DEFINITIVE COLLECTION

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Umtv
  • 発売日: 2006/12/04
  • メディア: CD


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コメント 4

いとぞう

ロネッツはイイですね、僕も好きです。
フィル・スペクター氏のずいぶん豪華な書籍が出版されたんですね。大瀧さんはこういう書籍の監修をよくやってますよね。

スペクター氏の私生活ってホント荒れてますよね。こんな恐ろしい人から何故あんなにロマンティックなポップスが生まれるのか不思議です。
でも、内気でコンプレックスがあって、音楽だけが心の拠り所として過ごしてきたという点は僕も共感できます。才能ってコンプレックスから生まれるモノだと思うからです。僕はコンプレックスのある人を信用します。




by いとぞう (2008-11-03 20:20) 

うっち

完読おめでとうございます!

私はまだロネッツが出てきたところです。
いろいろと読みたい本がありすぎて、あちこち手を伸ばしすぎで。

この曲はまさにアンダース&ポンシアらしい作風ですよね♪
by うっち (2008-11-04 23:22) 

都市色

>こんばんは、いとぞうさん。
コメントありがとうございます。
音楽と人格は関係がないとよく言います。
人格で音楽を語るのがロッキンオンジャパンですね。
by 都市色 (2008-11-05 00:17) 

都市色

>うっちさん、こんばんは。
コメント&niceありがとうございます!
アンダース&ポンシア、良いですよね!
イノセンス、トレイドウィンズ大好きです。
「蘇る伝説」読後は印象が良くないですが、日本版は大滝さんと朝妻さんの対談があるので楽しく読み終えました。
朝妻さんの新刊も読みたいですし、朝妻さんによるレスターシルの評伝の書籍化が実現するといいな、と思います。
by 都市色 (2008-11-05 00:23) 

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