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『DOWN TOWN / SUGAR BABE』 [山下達郎]

DOWNTOWN.jpg

こんばんは。

Do you remember SUGAR BABE ?

春の連休、週末の宵に贈る、すてきなメロディー♪。
シュガーベイブの名曲『ダウンタウン』です。
西のニール ヤング、東の山下達郎。
不変の普遍的ロックンロール野郎!!
紹介しているシングルはどちらも1975年の作品。

さて、今年の3/21の恒例ナイアガラレーベルのリイシュー作品は、
山下達郎さんのナイアガラに残した音源をまとめた『TATSURO FROM NIAGARA』。
早速、僕の元にも届きました。
コロムビア時代、ナイアガラとの規定契約枚数の履行の為に、レーベルオーナー大滝さんの許可無くレコード会社側から一方的にリリースされた消化試合のごとき、いわく付きの一枚だったのですが、このたび、大滝さん自らの企画立案による公認アルバムとして、ジャケットも一新して公式リリース。
内容は既発曲が殆どで目新しい音源が少ないのですが、
ナイアガラのみならず、日本の音楽業界に於ける達郎さんの功績を考えれば、このような企画アルバムが存在する事に何ら異存はありません。
現在、久々の全国ツアーで音楽ファンを感動の渦に巻き込んでいる達郎さんの活動の原石、シュガーベイブそしてその周辺の活動の輝きを再び。
そんな訳でシュガーベイブのシングルです。

もう何度聴いても名曲。
年がら年中聴いてもベストなのですが、過ごし易くなった春の夜に、仲間たちとワイワイとイベントへ出かけるときの胸の高まり。この「ウキウキ感」は何物にも代え難いですね。
初めてこの曲を聴いたのは勿論「ひょうきん族」でのエンディングテーマでEPOさんによるカヴァーバージョンでした。
そして今日は土曜日!

この曲は伊藤銀次さんとの共作で元々はキングトーンズの為に用意された作品だと云います。
達郎さんや銀次さんのインタビューによれば、作詞:伊藤銀次/作曲:山下達郎となっていますが、分業ではなく正確には銀次さんも作曲に関わっているそうです。
サビの『♪ダウンタウンへ繰り出そう』の旋律は銀次さんのアイディアだそうです。
お互いが作詞にも作曲にも関わっていると云うガップリ四つに組んだ作品。
大阪出身と東京出身の若きポップスマニアによる奇跡の共作。
サビもキャッチーなのですが、

♪七色の 黄昏れ 降りて来て
 風は なんだか 涼しげ
 土曜日の夜は にぎやか

と云う唄い出しのAメロの艶っぽさ、そして歌詞も実に魅力的に感じますね。
この出だしのメロディからミラクルなのだと思うのです。カラフルなグラデーションのような夕焼けがあたりを覆い、街が俄に活気に溢れ出す、と云う状況が過不足無く表現されていて。
そして達郎さんの瑞々しいヴォーカル。ブルーアイドソウルの血を滾らせた若獅子の歌。
カラッと明るく、よく通る声でちから強く、かつ繊細で。
さらに忘れちゃならない、村松邦男さんが弾く、あの印象的なイントロのギターフレーズ。
夜の街に鮮やかなイルミネーションが輝き出すようなフレーズ。
大貫妙子さんの風のような透き通るコーラスもこのバンドの魅力。大きな個性。
アイズレーブラザーズの『IF YOU WERE THERE』のリズムパターンを踏襲したしなやかで逞しいドラミング。

シュガーベイブは東京生まれの擦れっ枯らしな若者たち独特の感傷や反抗が甘美なメロディと熱く脈打つリズムに染み込んでいるのです。そのどちらが欠けても成立しないのだと思います。
激動の50〜70年代の変わりゆく首都の街並の空気を吸って生きて来た若者たちが抱く表現し得ない複雑な心境をストレートなメッセージに乗せず、敢えてハードでサイケなロックや泥臭いブルースに感情を叩き付けず、只ひたすら、作り出した楽曲が音楽として成立する事だけを望み、美しいハーモニーとユニークなリズムに青春を賭けたと云うコトがユニーク。
サウンドは明るいですが、当時のメンバー達のメンタル面はシリアスだったと云います。
だから「♪ダウンタウンへ繰り出そう」というフレーズも、架空の理想的なダウンタウンを想起していたのであって、現実感は希薄だったのかもしれませんが、そのアンビバレンツも含んでこそのこの稀有なアルバムの魅力として現代までサヴァイヴしているのでしょう。このアルバムでの悩める若者たちの翳りがポップなメロディに垣間見られるのが良いのだと思います。
このアルバムがインディーズのエレックではなく、ソニーなどのメジャー配給での満たされた環境の下で制作されたら?
プロデュースを商業的な大物音楽家が担当していたら?
録音をエンジニアとしては新人の大滝さんではなく、プロフェッショナルな人物が担当していたら?
歴史に「たら、れば」は無いと云いますが、何が功を奏するか分かりません。
音楽が成功するのはまさに「神のみぞ知る」でありますが、シュガーベイブのメンバー達の現在までの多方面での成功はやはり「SONGS」で感じられる音楽への真摯な情熱があったからでしょうね。

このアルバムには色んな音楽の因縁や人脈が流れていることも魅力の1つですね。
この作品から色んなコトが始まったり、有形無形に影響を与えている気がします。

B面は『パレード』。
LOVIN’ SPOONFULの『魔法を信じるかい?』、SPIRAL STAIRCASEの『MORE TODAY THAN YESTERDAY』、KEITHの『98.6』など、60年代アメリカンポップスのシャッフルビートへの憧憬をヴィヴィッドに見事に音像化した名曲。
シュガーベイブ時代からのレパートリーながらデモ音源しか存在しませんでしたが、1976年の『ナイアガラトライアングル VOL.1』にて、洗練されたアレンジで生まれ変わり、公式に発表されました。
今聴いても完璧な作品。
完成されたばかりのFUSSA 45studioの音響がダイナミックに展開されていると思います。
シュガーベイブの『SONGS』の頃はまだ完成に至ってなかったようです。
アナログレコーディングのまろやかで深い音像が幻想的なまでに美しいです。
吉田美奈子さんのコーラス、明朗なホーン、きらびやかなヴィヴラフォン&グロッケンの響き。
教授の流麗なピアノ、シュガーベイブの後期リズムセクションである上原“ユカリ”裕&寺尾次郎両氏。
笛吹銅次氏による渾身の録音。
アルバムバージョンは教授による、目眩のするほど美しくドラマティックなピアノソロのイントロダクションから幕が開き、徐々にバンドサウンドによる本編が鳴り出して、白昼夢の如き不思議なサウンドエフェクトで終るのですが、シングルは82年にリミックスされたバージョンで教授のピアノソロとエンディングのサウンドエフェクトがカットされて、コンパクトに仕上がっています。


シングルバージョンのエンディングでのユカリさんのドラムのフィルインが楽しくてじっと最後の最後まで聴き入ってしまいます。

今回のシングルはエレックレコードからリリースされたオリジナル盤ではありません。
’82年にソニーから“NIAGARA FOREVER GREEN SERIES”としてリリースされた再発盤であります。
「パレード」は90年代にTV番組「ポンキッキーズ」の中でも使用されて、1994年春にCDシングルとしてリリースされました。今回のシングルのA面とB面が逆になりました。

ぱらで.jpg

どちらもレーベル面の色がミントグリーンです。

どうんとうん.jpg

PRで.jpg

エレック盤のB面は大貫妙子さんによる「いつも通り」でしたね。

個人的にもシュガーベイブの『SONGS』との出会いは春でした。
ちょうど今頃。
高校三年の終り、受験に失敗して浪人が決定した頃。1992年の春。
卒業式も終って、心にポッカリ穴があいたようで、気分が滅入って何気なく近所の行きつけのレコードショップ「すみや」へ寄ったとき。
売場にて偶然『SONGS』のCDを見つけました。
1986年に初CD化されたときの盤がデッドストックの新品で一枚何故か売られていました。迷わず購入しました。
1986年盤はCD用に吉田 保氏によるリミックスが施されていて、オリジナルミックスよりエコーが深かったです。1994年になるまでオリジナルミックスでのCDはリリースされませんでした。
だから86年版を聴くと浪人時代を思い出し、94年版を聴くと大学時代を思い出します。
『雨は手のひらにいっぱい』はエコーの深い86年版の方が好みですね。

そして忘れもしない1994年のゴールデンウィーク。
中野サンプラザにて、オリジナルマスターによるCD化を記念して開催された
『山下達郎 sings SUGAR BABE』コンサート。
幻は現実になりました。
あの夢のような一夜の感激は一生忘れないでしょう。

僕だけではなく、多くの音楽ファンの方々にとってもシュガーベイブの唯一のアルバムは思い入れ深いものではないでしょうか?

冗長な記事になってしまいました。

『DOWN TOWN』《07SH 1166》〈作詞:伊藤銀次/作曲・編曲:山下達郎〉(4’12’’)【1975】


TATSURO FROM NIAGARA

TATSURO FROM NIAGARA

  • アーティスト: 山下達郎,伊藤銀次,大貫妙子,吉田美奈子
  • 出版社/メーカー: SMR(SME)(M)
  • 発売日: 2009/03/21
  • メディア: CD



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コメント 15

meikan

よっ、待ってました!!!
素晴らしい紹介文、羨ましい。僕にも都市色さんの
半分ぐらいでも表現力があればと思います。
5月楽しみですね。その時はよろしく。
by meikan (2009-03-21 06:03) 

いとぞう

このCD、僕も買おうかなと思っているところです。
「DOWN TOWN」は僕もはじめて聴いたのが「ひょうきん族」のエンディングのEPOバージョンで、大好きな曲です。下町・・でもダウンタウンという響きだけでオシャレに感じますね。

シュガーベイブの曲は、’90年代に日本テレビの人気深夜番組「DAISUKI!」(中山秀ちゃんや飯島直子さんなどが出演してた)のオープニングとエンディングで「SHOW」と「今日はなんだか」が使われてましたね。ちょうどその頃、アルバム「SONGS」の’94年版がリリースされた記憶があります。
by いとぞう (2009-03-21 18:18) 

トロイメライ

はじめまして。
いつも楽しく拝見しております。

そういえば、岩崎元是さんも「パレード」を歌っているはずですよ^^

未聴なのですが、ポンキッキーズのCDで
あったような...。
by トロイメライ (2009-03-21 23:09) 

都市色

>meikanさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
書きたいことが上手くまとまっていない文章ですが、読んで下さってありがとうございます。
meikanさんのブログもこれからも楽しみにしています。
僕よりもタツローファン歴の長い先輩の記述は参考になります。
こちらこそ5月も宜しくお願いします。
by 都市色 (2009-03-22 10:15) 

都市色

>いとぞうさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
僕と同時期に「DOWN TOWN」を知ったようですね。
EPOさんのシングルも素晴しいのでいつか取り上げたいです。
「DAISUKI!」、ありましたね。
この番組はCMに入るときにアイドルの子が「大好き!」って言うんですよね。ちょっとそういうところが好きでした。

by 都市色 (2009-03-22 10:18) 

都市色

>Lo-Fiさん、こんにちは。
niceありがとうございます!!
by 都市色 (2009-03-22 10:19) 

都市色

>トロイメライさん、こんにちは。
はじめまして、いつもブログをご覧下さってありがとうございます!!
岩崎さんによる「パレード」ですか!
未聴でした。
そちらも出来が良さそうですねー。
機会があればチェックしてみたいです。
情報ありがとうございます。
by 都市色 (2009-03-22 10:21) 

Harry Runyon

都市色さん、はじめまして。
Spanky and Our Gangの記事を探していて、このブログ見つけました。
これからちょくちょく読ませていただきます。
私はシュガーベイブは、はっぴいえんどのラストコンサートから見ている(1973年9月21日)ので、こういう同好の方を発見するととても嬉しいです。昨日、タツローライブを大宮で見てきました。
アンコールでこの曲がかかると、いつも涙!!が出てしまうのでした。
by Harry Runyon (2009-03-22 22:50) 

都市色

>Harry Runyonさん、こんばんは。
はじめまして!
コメントありがとうございます!!
達郎さんのライヴは今回も素晴しかったですよね。
何度観ても、飽きることはありません。
常にクオリティを追求し、
ファンへの真摯なサーヴィス精神には頭が下がりますね。
1973.9.21のライヴを体験されているなんて、筋金入りのタツローマニアですね。スゴいです。
そういう方にも冗長な文章を読まれるなんて、もっとしっかり書かなくては。
自己満足な内容ですが、これからも宜しくお願いします。


by 都市色 (2009-03-23 02:52) 

うっち

やっぱりこの曲いいですね!
今回のライヴでもすごい盛り上がりでしたし、皆さん大好きなんでしょう。

86年盤は持っていないので、聴いてみたくなりました♪
by うっち (2009-03-23 07:23) 

Harry Runyon

都市色さん、
早速のコメントありがとうございます。
いやいや、なかなか素晴らしいブログだと思いますよ。
私もライブや舞台などのレビューの感想を書いたりしてます。
もしお時間あったらチェックしてみてください。

http://entertainchronicle.blogspot.com/

こちらこそ、よろしくお願いします。

また、
by Harry Runyon (2009-03-23 23:45) 

都市色

>うっちさん、こんばんは。
コメント&niceありがとうございます!
ライヴでも盛り上がりますよね。
イントロが響いただけでワッ!と湧きますね。
ライヴアルバム『JOY』のバージョンも好きです。
by 都市色 (2009-03-24 22:00) 

都市色

>Harry Runyonさん、こんばんは。
色んなライヴや舞台をご覧になってらっしゃるのですね。
東京が羨ましいです。
ときどきお邪魔させてもらいます。
by 都市色 (2009-03-24 22:23) 

ルースターズ

だーいすきだぁー!
by ルースターズ (2009-03-24 23:27) 

都市色

>ルースターズさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
僕もだーいすきだぁー!
by 都市色 (2009-03-25 22:57) 

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