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『こぬか雨/伊藤銀次』 [邦楽ロック/70年代]

こぬか雨.jpg

こんばんは。
レインソング特集、続いています。
今夜は伊藤銀次さん。
昨年も彼の作品を取り上げています。
今回は『こぬか雨』です。
シングルのB面ですが記事のタイトルにしてご紹介。

銀次さんのファーストアルバム『DEADLY DRIVE』からのシングルカット。
しっとりと抒情的な美しいバラード。
“こぬか雨”って現代ではあまり聞き慣れない言葉ですが、「小糠雨」と書いて、霧雨と同じ意味です。
この曲は銀次さんがシュガーベイブに短期間在籍していた頃のオリジナルソング。
当時の音源は残っていないようですが、達郎さんのシングル『愛の灯〜STAND IN THE LIGHT』(1996)のカップリングに、シュガーベイブの『SONGS』のCD化を記念して開催されたコンサート『TATSURO YAMASHITA SINGS SUGAR BABE』(1994)で演奏された『こぬか雨』のライヴヴァージョンが収録されています。僕はこのとき実際にライヴを観て初めてこの曲のことを知りました。
ライブの次の日に新宿にあったヴァージン メガストアへ行って『DEADLY DRIVE』を買ったことを覚えています。それで家に帰って聴いたら、達郎さんのライヴと全くアレンジが違うのですね。
シュガーベイブ時代にはアップテンポのアレンジで演奏されてたようです。
達郎さんのライヴでもそうでした。
シュガーベイブバージョンは歌詞も銀次さんと達郎さんの共作で若干内容が変わっています。

銀次さんがソロアルバムに当たってリアレンジされたバージョンは上記の通りバラード仕立てなのですがこのスローなアレンジに貢献しているのが坂本龍一さんと大貫妙子さん。
教授のキーボードとストリングス&ホーンアレンジの壮麗さ。
アスファルトに雨粒が静かに染み込んでいくようなフェンダーローズのイントロ。
歌の世界を徐々に盛り上げるオーケストレーションの洗練された響きにうっとり。
CTIレーベルからの影響が伺えます。
静かに降り続く霧雨に鬱蒼と沈み込む都会の風景が目に浮かぶようです。
間奏のピアノソロも繊細かつドラマティック。
そしてター坊の透き通るようなコーラスワーク。
心の乾きを癒すようなを雨糸の優しさを感じさせます。
歌の世界感を理解したお二人の音楽的な表現力は大きいです。
銀次さんのジェントルな歌声も味わい深いです。

♪ここには スコールさえも ない
 表はそぼ降る こぬか雨さ

EPOさんもこの曲を80年代にカヴァーしていますが、歌詞はシュガーベイブ版、アレンジは銀次さんのソロアルバムバージョンを採用しています。

A面は『風になれるなら』。
アルバムのオープニングナンバーに相応しい爽やかなサウンド。
緒方泰男氏の劇的なイントロのピアノ。
こちらでも教授のストリングスアレンジとター坊のコーラスアレンジが素晴しい効果を発揮しています。作詞はター坊と銀次さんの共作。
まさにそよ風のようなター坊の歌声。
ドリーミィなメロディと弾けるビートに胸を締め付けられます。
シングルバージョンはアルバム収録バージョンと異なり、後者にあるサックスの間奏がカットされて、新しい歌詞がアダプトされています。
銀次さんは大阪出身で当然ブルースやフォークのメッカのイメージに沿うような泥臭いブルースフィーリングを持ち合わせているのですが、一方で洗練された音楽センスも得意としていて、ジャンルを問わないで音楽を楽しもうとするセンスは大滝さんや達郎さんと共通するものがあり、「ナイアガラ トライアングル」でのコラボレーションは必然を感じますね。

このシングルの二曲は銀次さんがシュガーベイブ体験から得た収穫のような、ポップでキャチーな作品で際立った完成度を誇ります。
上原ユカリ&田中章弘両氏の優れたリズム隊のサポートも聴き逃せません。
『DEADLY DRIVE』は昨年、紙ジャケで再発されまして、今回のシングルバージョンもボーナストラックとして収録されました。このアルバムは他にもシュガーベイブのメンバーだった村松邦男さんとのギターの共演があったり、ザ・バンド風あり、マージービートあり、ラテンあり、ファンクありとヴァラエティに富んだアルバムで、銀次さんの音楽センスの幅広さを感じさせ、後のプロデューサー資質を先んじています。

現在、銀次さんは精力的にライヴ活動を展開されています。僕も機会があったらライヴにお邪魔してみたいと思います。

『こぬか雨』《L-84Y》〈作詞・作曲・編曲:伊藤銀次/コーラスアレンジ:大貫妙子/ストリングス&ホーンアレンジ:坂本龍一〉(5’48’’)【1977】


デッドリイ・ドライブ

デッドリイ・ドライブ

  • アーティスト: 伊藤銀次
  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan =music=
  • 発売日: 2008/02/20
  • メディア: CD



タグ:雨の歌
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コメント 2

いとぞう

「DEADLY DRIVE」の紙ジャケ、僕も買いましたが、恥ずかしながら”こぬか雨”という言葉はこの曲ではじめて知った次第です。
じめじめ・・ではなく、あくまでも”しとしと”降る雨。恵みの雨な楽曲で素晴らしいですね。アレンジもいいし、銀次さんの甘いボーカルも魅力。

アップテンポのアレンジが想像つかないんですが、達郎さんのシュガーベイブバージョンも聴いてみたいですね。

by いとぞう (2009-06-12 20:32) 

都市色

>いとぞうさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
こぬか雨の意味を知らなくても恥ずかしくないですよ。
僕も知りませんでした。
「来ぬか雨」だと思っていたくらいで。
そうですね、この歌の雨はじめじめではなくて、何となくカラッとしてますね。
by 都市色 (2009-06-13 12:44) 

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