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『星の下 路の上/佐野元春』 [佐野元春]

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こんばんは。
日曜日に、佐野元春& COYOTE BANDの東京公演を観てきました。
何と同じ日にフレネシさんの宇都宮HMVでの素敵なインストア ライヴを鑑賞する幸運にも恵まれました。

さて、二年前にリリースされた元春の傑作アルバム『COYOTE』。
そのアルバム制作の為に召集された選りすぐりのミュージシャンたち、
深沼元昭(GUITAR、MELLOWHEAD)
高桑 圭(BASS 、CURLY GIRAFFE, GREAT3)
小松シゲル(DRUMS、 NONA REEVES)
この顔ぶれは90年代中期から注目度の高い有能なバンドとして、そして個のプレイヤーとしても着実にキャリアを積んできたミュージシャンシップの高い連中たち。
音楽の目利きである元春が選んだメンツであり、逆に今回のメンツが元春を認めたのかもしれません。
個人的にも彼らが在籍したバンドの大ファンでもあり大いにワクワクさせれました。
結果、「COYOTE」は元春のディスコグラフィの中でも最高傑作との呼び声も高い充実作に仕上りました。
自身よりも一つ若い世代ながら、音楽嗜好の嗅覚が似ていて、ソングライター&プレイヤーとしても名を売り出している上り調子の働き盛りなミュージシャンとの共演は、元春にとっても新たな血を入れ替えるような刺激的な行為だったのでしょう。

さて、今回紹介するのはアルバムリリースの半年前に発表された先行シングル『星の下 路の上 ep』。
勿論、先述のメンツとのレコーディング。
『COYOTE』の成功を予見させるような野心的な仕上がり。
シングル『星の下 路の上』とアルバム『COYOTE』の関係性に言及すると、シングルはコンセプチャルで一本の映画のような世界観を持ったアルバム『COYOTE』のプロローグ的な位置づけでしょうか。
ノワールでハードボイルドなCOYOTE物語のチャプターゼロ、という感じ。
このシングルがタイトルトラック『星の下 路の上』で終っていて、同時にアルバムがこの曲から始まっているコトからも明白です。
尚、このシングルのレコーディングに於いて、元春や上記の三人とも親交の篤い片寄明人さんがセッションのオブザーバーとしてクレジットされていることも見逃せません。
元春とcoyoteバンドの交流の橋渡し的な役割は片寄さん以外には考えられないでしょう、

一曲目はレイジーなフォービートのブルーズ、『ヒナギク月に照らされて』。
オープニングとしては地味ですが、壮大な「COYOTE」物語の序章としては実にドラマティックでムードのある一曲。タイトルが自身のレーベルと関係しているのも象徴的。

♪ここで俺は幸せにイカレている

最初の歌い出しの一行からシビれます。
真夜中にあてども無いけもの道を孤独に歩いている主人公。
周りの世界は虚ろだけど彼の意識は冴えていて醒めている。

二曲目は『裸の瞳』。
景色はやがて白み始めて夜明け。
シェイクしたバンドのリズムに乗ってメロウな歌がブルーにこんがらがってます。
ハングリーで神経ギリギリな若者たちの描写が瑞々しい。

♪自分を守るだけで
 せいいっぱいの君はロンリーガール
 誰かに手を差し伸べたくても
 出来ない

♪明日を守るだけで
 せいいっぱいの君はロンリーボーイ
 おぼれないように泳ぎ続けていくんだぜ

元春の吹くハーモニカも効果的でカッコ良いです。

上記の二曲までのアンダーグラウンドな景色から一転して、
朝日の様に鮮烈で開放感に充ちたハイライト、三曲目『星の下 路の上』。
歓喜と疾走感に充ちたエイトビート。
小松氏の叩く軽快なドラミング。
サイレンの様に鋭い深沼氏のリードギター。
低空から切り込んで来る高桑氏のベース。
フレッシュでフットワークの軽い元春のヴォーカル。
四人のビートが一体となり、突き抜けて加速します。



実に三曲とも鋭角なソングライティングの切れ味を感じさせます。
それぞれ独立していますけどまるで一つの物語のような構成にもなっています。
無駄の削ぎ落とされた言葉とメロディ。
バンドサウンドの先鋭的なセンス。
ドキドキします。

シングルの一曲目からアルバムの12曲目までの一連の流れが完全に一つのセットとなっている感じがします。12話の本編『COYOTE』と2話のプロローグ『星の下 路の上』がセットとなって成立しているのだと思います。
僕が観たライヴではこのアルバムでの曲順通りに全曲演奏しました。
そしてこのシングルの曲も全て。
『COYOTE』の世界観を十二分に堪能出来たライヴでした。
アルバムのクロージングナンバー『黄金色の天使』の演奏を聴いていて思わず目頭が熱くなりました。

今回は元春のインディペンデントなレーベル〝DAYSY MUSIC〟の本格的な始動とも言えるシングルを紹介しました。
ライヴに、ラジオに、そしてインタヴュアーに、八面六臂の活躍を魅せる元春。
さらに来年でデヴュー30周年を迎えるこれからの活動、益々楽しみです。

『星の下 路の上』《DMA-004》〈作詞・作曲・編曲;佐野元春〉(3’27’’)【2006】


COYOTE(通常盤)

COYOTE(通常盤)

  • アーティスト: 佐野元春
  • 出版社/メーカー: UNIVERSAL MUSIC K.K(P)(M)
  • 発売日: 2007/06/13
  • メディア: CD



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コメント 4

うっち

ご無沙汰してます!

元春、行かれたんですね。
羨ましい!

今回のツアー、見たかったんですが、都合が付かずにパスしてしまいました。
そのかわり、杉真理 & The Dreamersに行ってきました!
by うっち (2009-07-28 13:57) 

いとぞう

本当に素晴らしいライブでしたね!「COYOTE」の世界観を表現するために、アルバム全曲・しかも曲順どおりにやったのは正解だったと思います。

そう、シングルでは「星の下 路の上」が一番最後なのにアルバムではトップなんですよね。そして今回のライブでは最初と最後両方!近年の元春を代表するロックチューンですよね!

コヨーテ・バンドによって蘇った’80年代の元春クラシックスも素晴らしい出来で。特に「ヤングブラッズ」はオリジナル以上だったのでは!?と思えたほど。

「ヒナギク月に照らされて」も好きな曲で、演奏してくれて嬉しかった。この曲は今の、かすれ気味のボーカルにとてもマッチすると思います。

来年の30周年も期待大!ガツンとやってくれるでしょう!



by いとぞう (2009-07-28 18:28) 

都市色

>うっちさん、こんばんは。
こちらこそご無沙汰しております。
沢山のNICEとコメントありがとうございます!
元春のライヴはカッコ良かったです。
杉さんのライブもポップで楽しそうですね。
記事を読ませて頂き、そちらも羨ましくなりました。
杉さんのライヴにも是非行きたいです。
by 都市色 (2009-07-30 00:16) 

都市色

>いとぞうさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
会場で久しぶりにお会い出来て良かったです。
「ヤングブラッズ」の弾けた演奏は若いCOYOTEバンドらしさが漲ってましたね。
このシングルは三曲ですがストーリィ性があって充実した内容ですよね。
次のライヴも楽しみですね!!
by 都市色 (2009-07-30 00:19) 

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