『永遠のうた/羅針盤』 [邦楽ロック/90年代]
こんばんは。
全身音楽家、山本精一氏が率いた“羅針盤”のワーナー時代のアルバム群がSHM-CDで再発されました。
少し前に“想い出波止場”も同じく高音質盤で復刻されたばかり。
めでたや。
この時代のアルバムは既に廃盤で高値で取引されていたのでこの再発は大いに有意義ですね。
P−ヴァインさんに敬礼!
ワーナー時代の三枚は全て持ってるので敢えて買い直す予定は無いのですが、何とシングルまで2イン1として単体でリリースされたので、その心意気に敬意を表して買いました。
普通ならアルバムのボーナストラックに入れてしまうことが多い中、珍しいですね。
そのシングルとはメジャーからの二枚、『永遠のうた』と『アドレナリン ドライヴ』。
これらをまとめた『永遠のうた+アドレナリン ドライヴ』を取り上げましょう。
山本精一さんはボアダムズやPARA、ROVO、想い出波止場などなど、様々なユニットやソロ活動を同時に精力的に展開されてますが、その中でも羅針盤はサイケなフォークロック主体のサウンドと山本氏のヴォーカルをフィーチュアしたバンドです。1997年から2005年までの活動で8枚のアルバムを残しています。
ワーナー時代は初期の三枚(「らご」「せいか」「ソングライン」)にあたります。
もっともデヴューアルバムの「らご」はインディーズで制作されていたもの(表記は『RAGO』)をワーナーから再発したもので、インディーズ盤とメジャー盤ではジャケットが異なります。
山本精一氏の唄は、おだやかで〝しん〟としています。
研ぎ澄まされた繊細な歌声。
そこは静寂の中です。
火のついた蝋燭の前で淡々と語るような唄/歌詞。
そのひと言ひと言が静かに水中に揺らめくように聴く者の心の奥底に沈んでいきます。
山本氏のまなざし(ソングライティング)の向こうには日々の営みから滲み染み出てくる「かなしみ」や「孤独」があります。
消え去ることの無い日々の悲しみに目を背けるコトなく見つめ、落ち着いてあるがままに受け入れます。
聴いていて気持ちが静まるようです。
寄る辺ない闇のような世界にそっと掌に握られる魂の羅針盤。
夢とうつつを浮遊する、もの悲しい山本氏の歌声に救われます。
そして彼の紡ぎ出すメロディのまろやかな美しさ!
耳元へ優しく忍び寄るような自然な響き。
この得体の知れない甘美な美しさ、少し怖いくらいです。
続いてバンドが編み出す緩やかなグルーヴ。
山本氏の弾く轟音のエレキギターのインプロビゼーションの彼岸には仄かに温かく明るい何かが立ち上ります。豊饒な演奏の波に静かにたゆたうのです。
さて、ファーストシングル。
『永遠のうた』。
このシングルは入手困難でずっと探していたのでシングルでの再発は嬉しいです。
まぁ、当時は短冊シングルだったので同じではないのですが。
タイトル曲はバンドの名詞代わりの様な素朴で滋味で朗らかなアシッドフォークロック。
インナートリップするような幽玄のサウンド。
黄昏の旋律。
シュールな言葉、覚醒した歌声。
弾むようなサウンドから一転、エンディングで鮮やかに緩やかに流れ出すあたらしいフレーズが僕らを別世界へ攫っていくようです。
カップリングは『CHIME』。
アルバム未収録ですが、この曲も良いですね。
どこか懐かしい調べ。少しトロピカルなサウンド。
幼い頃に観た深遠な風景がフラッシュバックするような。
サビでの目眩のするような甘いメロディの展開にうっとり。
山本氏のスキャットがなんとも不思議な魅力を放ってます。
三曲目は『永遠のうた』のカラオケ。
四曲目以降は次のシングル『アドレナリンドライヴ』。
このシングルは持ってました。
タイトルでお分かりの方もお出でかもしれませんが、
同名の矢口史靖監督の三本目の劇場作品の主題歌です。
のちに歌詞とアレンジを替えて『リフレイン』という曲でサードアルバム『ソングライン』に収録されます。
アップテンポの曲で途中にユニークなリズムチェンジやブレイクが挟まれるユーモラスな作品。
少し不穏な歌の世界に引き込まれます。
五曲目は映画のエンディングテーマ『真夏の出来事 ’99』。
ご存知平山みきさんの名曲。
みきさんが羅針盤の演奏をバックに歌います。
アレンジは山本氏。
このテイクはオリジナルに負けてますね。
みきさんの濃厚な歌に繊細な演奏が合っていない気がします。
みきさん相手では無理も無いですが、近田春夫&ビブラトーンズとの共演盤みたいに毒を以て毒を制すような関係でなければ。
六曲目は『アドレナリン〜』のアナザーバージョン。
四曲目よりもコンパクトな仕上がり。
映画の方も矢口監督らしい破天荒な展開で面白かったですね。
ひんやりとした山本精一氏の歌声は夏に相応しい気がしますね。
ジャケットもそうですし。
ワーナーでの三作も傑作ですが、メジャーを離れた四枚目以降のアルバムも素晴らしいです。
稀有で孤高の純音楽。
『永遠のうた』《PCD-7311》〈作詞・作曲;山本精一/編曲:羅針盤〉(04’53’’)【2009】
2009-08-21 01:56
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らごが違うのはジャケットだけではありません。
by NO NAME (2009-08-22 02:26)
>NO NAMEさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
え、内容も違うのですか?
知りませんでした。
機会があったら、ギューンカセット盤も聴いてみたいです。
by 都市色 (2009-08-22 09:34)