『これから/大江千里』 [邦楽ロック/80年代]
こんにちは。
毎年、この梅雨の只中になると思い出したように聴いてしまう曲を紹介したいと思います。
大江千里さんの『これから』。
1988年の秋のシングルで当時はCDシングルを買いました。
アップしているジャケットは7インチ。
内省的なミディアムバラードが15才の僕の耳に響きました。
♪夕暮れのニュータウンをぬけて
列車がホームから各駅で出て行った
つあけのまえの校庭に
まばらな制服がここから小さく見える
梅雨の中休み、暮れなずむ街の風景がイメージ出来ます。
僕が現在生活している大阪は千里さんが育った街で、この歌詞の情景の雰囲気は今とてもヴィヴィッドに感じられます。
この曲は、最愛の人と何かの理由で別れてしまい、生きる宛が消えてしまった主人公の途方に暮れる想いを歌った内容で、都会生活の中で孤独に震えながら生き続けることのやるせなさをリアルにありのままに表現していて、何度聴いても感動します。
人の弱さを切々と綴っていて、申し訳程度な励ましや希望の言葉がないのがいいと思いました。
ありあわせな人生応援歌ではないのが。
大サビでの激情!のシーン以外は淡々と挽歌は展開していき静かに幕を閉じます。
これからも悩み続けながら生きていくのだと思います、きっと。
♪これから何処へ行こうか
暗号が解けないスパイのように
町の灯が全て消えても
しばらくはこのままでここにいる
千里さんの詞はいいですね。
アレンジャーは西本 明さん、楽曲の物語の世界観を大切にした静謐で繊細な音作り。
曲のタイトルは夏目漱石の「それから」に通じてるのでしょうか。
あの小説の代助も最後はいたたまれない気持ちで街の中を彷徨ってました。
B面は『サヴォタージュ』。
同年の初夏にリリースされたアルバム「1234」からのシングルカットで、このリリース用にリミックスが施されています。
アレンジは大村雅朗さん。
思いっきりシカゴの「Saturday in the Park」なイントロのピアノフレーズ。
この曲からのインスパイア具合がなかなか上手く行っていて好きな曲です。
1980年代末期の大都市東京の夜の情景をスケッチした歌詞も良し。
都会でのめまぐるしい生活の中であくせく働きながら、自分を見失いつつもどうにかこうにか人生を肯定している感じがいいですね。
千里さんの音楽を一番良く聴いていたのは中学から高校時代。
それも80年代まで。
「格好悪いふられ方」でブレイクしてからは聴かなくなりました。
80年代の千里さんが今でも最高だったなと思います。
去年、「モテキ」を劇場で観ていて、突然スクリーンからこの曲が聴こえてきた時はビックリしました。
あの時代とても大江千里さんは人気があって、注目を浴びていました。
某音楽雑誌のミーハーな扱いには興味は無かったですが。
好きなアルバムは「red monkey yellow fish」、80年代のアルバムはどれも好きですね。
一番聴いたのはベストアルバムの「Sloppy Joe」です。
サザンの「バラッド」と「Sloppy Joe」はよく聴きましたねぇ。
泣けます。
千里さんと云えば、ジャズピアニストとしてニューヨークで活動していて、アルバムが近々リリースされるそうですね。
久しぶりに新しい千里さんの音楽も聴いてみたくなりました。
『これから』《07・5H-3060》〈作詞・作曲:大江千里/編曲:西本 明〉(05'01'')【1988】
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