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『MON ONCLE(ぼくの伯父さん)/ FRANK BARCELLINI』 [サントラ]

ぼくの伯父さん.jpg

こんにちは。
ウララカかな春、サントラ盤を取りあげてみましょう。
そして、僕に沢山の素敵な映画音楽を紹介して下さった〝すみや渋谷店〟に敬意を表して。
二月をもって、映画/ミュージカル音楽専門店のすみや渋谷店は閉店してしまいました。
東京は渋谷の宮益阪にある東邦生命ビル(現・クロスタワー)内の実店舗での経営は数年前に終ってしまいましたが、楽天やヤフーのネットショップとして営業を続けて来られていました。
学生時代、東京に住んでいた頃からお世話になっていて、10年前に東京を離れた後もネットショップで買い物をさせて頂きましたが、まさかの急な閉店に驚いています。
二月の半ばにお店からのメールマガジンで知りました。
一月の終りにも買い物をさせて貰ったばかりなのに。
最後に買ったのは『BACK TO THE FUTURE』のスコア盤でした。
すみやは音楽/映像/ゲームソフト販売を目的として関東中部地区にチェーン展開をしていますが、21世紀にTSUTAYAに合併吸収されました。今回の渋谷店の閉店と同時期に他の実店舗の閉店も数軒ありました。僕が生まれた実家のある街にもすみやのお店があります。十代の頃から利用していますが、今のところは営業を続けているそうです。
残念ながら音楽業界の不況はまだ回復しそうにありません。

さて、初めてすみや渋谷店で買ったサントラは『黄金の七人』のアルバムの再発盤でした。アナログ、CDの両方を買った記憶があります。1992年の終わり頃でした。
このブログでは再発されたシングル盤を取りあげましたが、90年代の渋谷系にリンクする新しい世代によるサントラブームを通じてすみや渋谷店の存在を知りました。
そこは小さな店舗ながら、ヴァラエティに富んだ世界中のサントラがひしめき合っていました。
サントラ天国。
当時のサントラブームの代表的なモノのひとつが今回取りあげる『ぼくの伯父さん』(1958)。
フランスのコメディ俳優兼映画監督ジャック タチの代表作。
この映画を始めて観たのも1992年でした。
忘れもしない夏の終り。
当時、江戸川区で灰色の浪人生活を送っていた僕は息抜きに読んだ「ぴあ」の映画情報で週末に新宿の映画館でジャック タチの映画がかかると知って、喜び勇んで出かけました。
八月の終り、土曜日の夜初めてのレイトショー観賞。
たしか今はなきシネマアルゴ新宿と云う映画館を探して、場所に着いた頃には映画館への地下へ通じる階段には行列が出来ていました。壁には「ぼくの伯父さんの休暇」のポスターが貼られていました。
初めて観たジャック タチの映画は殆ど台詞がないのですが、独特のユニークでユーモラスな世界観が、物語の登場人物は勿論、舞台の美術や背景、小道具の隅々にまで行き届いていて監督の美意識の素晴しさにクスクスしながら感動しました。
そして欠かすことの出来ない音楽の素晴しさ。そして音響。
ジャック タチの作品をその後も色々観ましたが、「音」、サウンドエフェクトへの拘りを感じました。台詞が少ない分、視覚と聴覚に訴えかける演出に工夫が感じられました。

さて昨年の秋頃、すみやのネット通販でタチ関連のサントラ盤を手に入れました。
その名も『TATI SONORAMA !』。
タイトル通り、ジャック タチの音楽に関する本。
文庫本サイズのハードカヴァー仕様の二枚組のCDです。
これはまさにジャック タチの映画音楽の集大成って感じのファン必携のアンソロジー。
あのお馴染みの『ジャック タチ作品集』を凌ぐ内容。
一枚目にはタチ作品の映画音楽を網羅。
二枚目は“耳で聴くタチ映画”と云う感じで様々な劇中のダイアローグが収録されています、視覚だけではなく、音の遊びにも拘ったタチ監督の名場面を楽しめます。さらに映画には使われなかった音源やタチ音楽のカヴァー作品と行ったレアな音源も多数収録されています。
本というだけあって資料や解説も充実しているのですが英語とフランス語なので読めません。

と、云う訳で遅くなりましたがシングルの紹介に映りましょう。
『ぼくの伯父さん』の日本版のシングル。
お馴染みのジャケット。
音楽を担当するのはフランク バルセリー二。
A面は『ぼくの伯父さん』のテーマソング。
究極の和みソング。
上品ながら親しみ易くおしゃまなメロディ。
トイピアノ、フルート、アコーディオン、ヴィブラフォン、バンジョーの音色の朗らかさ。
1950年代、豊饒な味わいの音楽に溢れた時代に思いを馳せます。
パリの下町の親しみに充ちた空気。
時間が止まったような古き良き街並を飄々と散歩するユロ氏、そして子どもたち。
さらに野良犬たち。



B面には『ADIEU MARIO(さよならマリオ)』。
A面のテーマソングとほぼ同じアンサンブルによる続きのような楽曲。
こちらも懐かしく可愛らしいメロディがフルートやバンジョーの音に乗せて優しく流れていきます。

『ぼく伯父さん』を始めとするタチ作品には共通して〝懐かしい未来〟が描かれています。
テクノロジー/近代化に追われて急かされている現代人たちのリズムとユロ氏独特の行動のオフビートなテンポとの不思議なアンサンブル。
その世界観の懐かしくも新しい視点は色褪せるコトはありません。
何度観てもクスクス。

という訳で、タチ作品を通じてすみや渋谷店に感謝。
他にもすみや渋谷店には様々なスクリーンミュージックやミュージカルの魅力を教えて頂きました。
これまで紹介してきたサントラの記事もすみやさんからの影響は大きいのです。
これからもこのブログを通じて、すみや渋谷魂とその遺産を伝えていきたいと思います。
お店のスタッフの皆さん、30年間に渡る営業、お疲れさまでした。

『MON ONCLE(ぼくの伯父さん)』《NS21》〈F.BARCELLINI〉(02'36'')【1958】


Tati Sonorama-Deluxe

Tati Sonorama-Deluxe

  • アーティスト: Alain Romans,Franck Barcellini,Norbert Glanzberg
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2008/09/16
  • メディア: CD



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コメント 4

いとぞう

映画音楽専門店というだけで素敵な響きなのに無くなってしまうなんて残念です。それにしてもCDショップの不況は深刻ですね。

僕が住む街にも「すみや」がありましたが、昨年閉店してしまいました・・ここは東京でもなかなか見つからないようなCDがあったりして、センスのいいショップだな、とよく利用していたのでとても残念です。

また、ここもよく利用していた「石丸ソフト・つくば店」が今月いっぱいで閉店・・秋葉原に行けない時はよく利用していたのでこれまたガックリ・・閉店セールをやっているというので先日行ってみましたが、店内の半分くらいの棚がすでにガラーンとしていて、全品50%オフといってもそんな状態ではもはや掘り出し物がある訳でもなく、悲しい気分で店を後にしました。

曲の話じゃなくてスミマセン・・
by いとぞう (2010-03-09 20:46) 

nakamura8cm

いいですよね~達、いやタチ。
このシングル私も持ってます。ジャケも最高です!(ちょっとオサレすぎか)
告白すると、大学時代にヒップホップユニット(笑)をやっていて、この曲をネタにしたことがあります。そのユニットには女性ラッパーがいて、今は私の妻だったりします。てへ。

すみや渋谷店閉店ですか。2回ほど行った記憶がありますが、ジャケットを眺めているだけであっという間に一時間くらいたってしまう店でした。
by nakamura8cm (2010-03-10 02:21) 

都市色

>いとぞうさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
ご近所のすみやも石丸も閉店だなんて、残念ですね。
今がCDショップの再編、過渡期なのでしょうか。
高齢化社会及び広い音楽ファン層に訴えかける新しいスタイルのCDショップが今後生まれることを期待したいですね。
by 都市色 (2010-03-10 11:35) 

都市色

>nakamuraさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!
タチの音楽をブレイクビーツにしてラップですか!
物凄い学生時代ですねー。
奥さんが元ラッパー、これもスゴい。
体験してみたかったです!
タチならぬ、「達」の方も面白いと評判ですね。
是非聴いてみたいと思います!
by 都市色 (2010-03-10 11:39) 

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