『ATTRACTIONS ! a vinyl sampler ／小西康陽』

こんばんは。
比較的最近手に入れたシングルをご紹介。

この春にリリースされた小西康陽さんのアルバム「ATTRACTIONS！」
小西さんの個人レーベル、READYMADEがコロムビアからビクターへ電撃移籍。
日本で一番歴史のある国産レコード会社から二番目に歴史のある国産レコード会社への移籍です。
その第一弾リリース。
これは小西さんの約20年に及ぶリミックス稼業の集大成とも云える二枚組アンソロジー。
「よりぬきサザエさん」ならぬ「よりぬき小西さん（524 remix）」。
ソウルもジャズも歌謡曲もロックンロールもテクノもラテンも、舞踏音楽としてのエッセンスを最大限に活かしたハッピーでポップなサウンドに仕上っています。
オリジナルソングへの敬意と現代音楽への批評を込めた職人芸のプレゼンテーション。
編集者的な佇まいで音楽をクリエイトされて来た小西さんの叡智と創意が光ります。
リミックスって基本的に水モノですけど、ベストのリミックス集だけあって何度聴いても楽しめちゃいます。曲順もよく考えれてますね。
「ATTRACTIONS」というタイトルの名に恥じないエンターテイメント。
全ての音楽ファンにお勧めしたいです。

そんなアルバムから7インチのシングルカット。
アンソロジーを組むにあたり新たに作られたリミックス作品をカップリング。
21世紀を代表するグラビアアイドルいや、クイーン、熊田曜子さんのジャケットが悩ましい。
素晴しいプロポーションは洋装に包まれても魅力的であります。
熊田さんもグラビアへの相当なプロ意識を感じさせますね。
実は彼女のDVDを以前買って所有してたりします。

さてA面は雪村いづみさんの「恋人になって」。
「I WANT YOU TO BE MY BABY」というタイトルで知られるジャズのスタンダード。
ジャズというよりジャイヴ、そしてロックンロールの血が騒ぐようなカッコいイ、グルーヴィな名曲。
この曲が生まれたのが1955年と云うロックンロールの誕生に近いのも頷けます。
LH&Rでもお馴染みのジョン ヘンドリックスのペンによる作品。
ジョージア ギブスのゴージャスでクレイジーなオリジナルヴァージョンに引けを取らない雪村いづみさんの歌唱にもシビれます。東京の都会育ちの洒落っ気たっぷりのパンチの効いた歌声！
このカヴァーには日本語詞が付けられているのですがこの内容もノリを大切にした下世話でポップな出来映え。
小西さんのリミックスはさらにノリノリでアッパー120％、ゴキゲンな仕上がり。
ジャズシンガーのAKIKOさんのアルバム「MISS LITTLE JAZZ & JIVE」にて、プロデュースを担当されたときも彼女にこの曲をカヴァーさせた程の小西さんのお気に入り。

B面は佐良直美さんのヒット曲「私の好きなもの」。
永 六輔さんといずみたくさんという昭和の偉大な作家コンビによる名曲。
お二人のモダンなセンスが昭和元禄時代にスパークしてます。
実におしゃれなボッサ歌謡。
原曲のシャーシをヒップホップのブレイクビーツにチューンナップした小西さんのクールなボサノヴァ仕立て。佐良さんのムーディなヴォーカルに涼しげな男性コーラスが応えます。
ブレイクビーツだからといって違和感はなく、原曲（「私の好きな〜」）は映画『男と女』でのビエール バルーが歌う「サンバ サラヴァ」から影響を受けたのではないか、という小西さんの意図を反映しておりオリジナルの魅力を損ねない素敵なリミックスです。
原曲の構造を地質学博士のように解析しながら再構築する面白さがリミックスにあるのでしょう。
それにしても佐良さんの歌声はうっとりしますね。
日本語の発音の美しさ。
佐良さんの歌声こそが一番好きなものです。

今回は7インチを紹介しましたが、12インチシングルも近々リリースされるとのことで楽しみです。
大きなジャケットで熊田さんを愛でると云う悦びも込めて。

『恋人になって　I WANT YOU TO BE MY BABY』《作詞・作曲：JOHN HENDRICKS ／日本語歌詞：井田誠一／リミックス：小西康陽》（02’55’’）【2010】

ATTRACTIONS! KONISHI YASUHARU Remixes 1996-2010

• アーティスト: 小西康陽,小西康陽,coba,山下毅雄,高中正義
• 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
• 発売日: 2010/03/03
• メディア: CD