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『放送禁止歌/寺尾紗穂』 [邦楽ロック/00年代]

さほ.jpg

こんばんは。
素敵な女性シンガーソングライターの作品をもう一枚紹介させて下さい。
寺尾紗穂さんの初めてのシングル。
最新アルバム『残照』と同時リリース。
タイトルはその名も『放送禁止歌』。
ちょっとショッキング。

アルバムに収録されている楽曲の歌詞に於ける一部の表現がメジャーレベルの作品としては問題であるとして、(アーティストの同意を得て)音源に編集が為されているのですが、それらの楽曲のオリジナルヴァージョンをインディーズからシングルとしてリリースしました。
そんな訳で上記のようなタイトルになりました。
ジャケットの写真にて、紗穂さんの口元がショールのようなモノで隠されているのも意味深です。
因みにシングルの方は高音質盤仕様です。

それでは一曲目『アジアの汗(uncontrolled version)』。
アルバムのオープニングを飾る曲。
イントロと同時の歌い出しからいきなり、修正が入ってます。
先にアルバムから聴いたのですが、

♪おじさんは××さん。

××のところ無音なのですが、其処は何だと思いますか?
答えはCMのあと、じゃなくて三十秒後!











(一応、三十秒数えてみて下さい。恐れ入ります…。)






















ハイ!
答えは「土方さん」。
「ヒジカタさん」じゃないですよ。
「ドカタ」さんですよ。
シングルでは勿論カットされないで聴けます。
土方という言葉が差別的な意味を持ってるとは不勉強にして知りませんでした。
歌詞はアジア圏内の海外の国から出稼ぎにやって来たおじさんの話で、
紗穂さんが実際にその方と出会ったときのコトを歌にされたようです。
アジア人の逞しさ、ヴァイタリティを感じます。
別にメッセージ色の強い歌という訳ではなく、私小説的な印象の歌。
メロディも明朗で、ユーモラスな雰囲気。
演奏もチャンチキドラムの音が楽しく、彼女のピアノもおどけてます。
しかし彼女自身の生活体験に密着していてサラリとリアルで深く耳に響きます。
紗穂さんの視点の鋭さを感じます。

二曲目も、歌詞に問題があるとされる曲で『家なき人(uncontrolled version)』。
タイトル通り、住む家を追われて段ボールでの生活を余儀無くされている人の話。
こちらも紗穂さんの実体験に基づく内容だそうです。
歌詞は何が問題になってるかは、敢えて書きません。
彼女が出会ったその男性の面影やこころの奥を喧騒の中に思い出すように歌っています。
サックスを擁した落ち着いたバックの演奏も翳りのある都会的なトーンを醸し出しています。
味わい深い作品。

三曲目は「竹田の子守唄」のカヴァー。
アルバム未収録でこのシングル向けに録音されたと思われます。
紗穂さんのアコーディオンの弾き語りと、伊賀 航さんによるアコースティックベースのみの演奏。
この曲もかつて放送禁止歌にしていされたうた。
竹田という京都の被差別地域に古くから伝わる子守唄。
この歌が何故放送禁止になったのかを探って行くと、マスコミの過敏な自己規制規制が関係してるコトが判ってきます。
彼女がどのような意図でこの歌を取りあげたかは定かではありません。

寺尾紗穂さんの音楽はいまどき珍しいくらいに真っすぐで骨太です。

最後に余談ですが、
小坂 忠さんのアンソロジーボックス「CHU'S GARDEN」に彼の記念すべきファーストアルバム「ありがとう」が復刻されて収められてるのですが、アルバムの中の一曲「どろんこまつり」での歌詞が不適切と云うコトで収録されていません。その曲のライヴヴァージョンが「もっともっと」にも入ってるはずなのですが、それもオミットされてます。
それが返す返す残念です。

『放送禁止歌』《CXCA-1269》〈作詞・作曲・編曲;寺尾紗穂〉【2010】


「放送禁止歌」

「放送禁止歌」

  • アーティスト: 寺尾紗穂
  • 出版社/メーカー: MIDI Creative
  • 発売日: 2010/06/23
  • メディア: CD




残照

残照

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ミディ
  • 発売日: 2010/06/23
  • メディア: CD



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コメント 5

キッシー

初めまして、こんにちは。
寺尾紗穂のブログ、大変楽しく拝見いたしました。

「アジアの汗」についてですが、主人公のおじさんは
「出稼ぎにやって来たおじさん」ではなく
「出稼ぎにやってきていた外国人をまとめていたおじさん」で
日本人の方です。
また、このおじさんは「家なき人」の主人公と同一人物で
ついでにいうと1stに収録されている「ある絵描きの歌」の
絵描きとも同一人物なのです。

今回の「残照」が制作されたのはこの「おじさん」の死が背景があって
大きく影響されていると聞きました。
彼女はこの「おじさん」について、他にもブログやエッセイでかなり
書かれているので良かったら捜してみてください。
(彼女と知り合いなものなので書かせていただきました。すみません。)

「どろんこまつり」は私も名曲なだけにがっかりでした。
DVDには一部、音が聴けますけど・・・


by キッシー (2010-08-08 10:11) 

都市色

>キッシーさん、こんにちは。
はじめまして、コメントありがとうございます!
楽曲についていろいろ教えていただき、感謝します。
沙穂さんのブログはチェックしていなかったので、参考にしたいと思います。
ファーストというと「愛し、日々」ですね。
実家に置いてきてしまったので帰省したときに聞き返してみようと思います。
これからもよろしくお願いします。
by 都市色 (2010-08-09 10:20) 

popholic

僕も寺尾さんの作品大好きです。
もうその才能に惚れこんでますよ。
まさに真っ直ぐで骨太。
地に足がついた素晴らしいソングライターでありシンガーです。
それとめちゃめちゃグルーヴィーなピアノ弾きでもあって
そこも好きですね。
by popholic (2010-08-09 22:46) 

都市色

>popholicさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
彼女のようなしなやかで逞しい音楽がもっとメディアで紹介されると良いと思います。僕もアルバム等で聴ける沙穂さんのピアノの響きが大好きです。
by 都市色 (2010-08-14 11:16) 

都市色

galapagosさん、ナイスありがとうございます!
by 都市色 (2010-08-25 15:13) 

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