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『水の中のグラジオラス/佐野元春』 [佐野元春]

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こんばんは。
まだまだ暑いですね。
久しぶりに過去のシングルを紹介します。
「マーガレット」、「ローズ」と続いて、
今回は「グラジオラス」または「デイジー」。
マーガレットはデイジーの一種らしいですね。

それはそうと、
ひと月前の出来事ですが、佐野元春さんのスポークンワーズのライヴを名古屋で観てきました。
彼のライフワークともいえる活動が「スポークンワーズ(spoken words)」。
ポエトリーリーディング、とも言いますね。
音楽をバックに詩を朗読するアートフォーム。
最近では比較的知名度がありますが、
元春は今から四半世紀も前から始めていました。
もちろん、それ以前からも音楽にあわせて詩吟をする行為はありましたが、
メジャーなミュージシャンが継続的に行っているのは珍しいことです。
彼のポエトリーリーディングのバックで演奏するのが井上 鑑ファウンデーション。
井上氏(ピアノ)と実力派な素晴しい演奏者たち。
高水健司(ベース)、山木秀雄(ドラム)そして山本拓夫(サックス)諸氏。

メロディの制約を離れた元春の詞は現代的でシリアスです.
文語体ので硬質で哲学的な言葉使いを理解しながら聞くのはなかなか集中力を要することですが、
実に知的で刺激的な面白さがありました。
イマジネーション豊かな元春の散文詩の鋭利でソリッドな文脈をスリリングな演奏が解体、解放して行きます.詩と音楽が相互に影響しながら無限のイマジネーションの広がりを魅せます。
実にユニークな体験でした。

と、言うわけで本題。
この記事のタイトル曲「水の中のグラジオラス」。
実はシングルのタイトルソングではなく、
1989年夏にリリースされたシングル「雨の日のバタフライ」の
三曲目、一番最後に入ってる曲でして。
この曲は昔から個人的に大好きな曲でブログに取りあげることが出来て嬉しいです。
何故この曲を今回取りあげたかと云うと、
この曲にはスポークンワーズがミックスされてるのです。
基本的には「うたもの」ですが、曲の終盤でスポークンワーズがアダプトされてます。
その詩ですが、現在元春がスポークンワーズのライヴでのレパートリーのひとつにしている、
「ああ、どうしてラヴソングは」という作品の一節が「水の中の〜」で朗読されています。
「水の中の〜」に話を戻して。
穏やかで優しげなムードに包まれて、
二分半ちょっとの.演奏時間の中で甘美なメロディがクルクルと変わって行きます。
歌は恋人たちの愛の終りを鮮烈な夏のシーンをカットインしながら描いています。
そして終盤の間奏でスポークンワーズがインサートされます。
ハートランドの演奏もコンパクトながら色彩豊かに音を奏でていて、そしてロミーさんの涼しげなコーラスも印象的です。ロミーさんは石川セリさんの妹で、80年代中期の元春の作品に度々参加しています。
どこか幻想的で慎ましく端正な愛すべき小品。
夏に咲く花、グラジオラスのように…。
同年に発表された元春の名作「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」の未収録曲。
資料に寄るとこの曲は1987年にハートランドとのセッションでレコーディングされました。
「ナポレオンフィッシュ〜」には「ブルーの見解」「ふたりの理由」といったポエトリーリーディング作品が収録されています。「水の中の〜」はこの二曲のプロトタイプとも云えますが、2008年の「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」の特別盤には収録されませんでした。 

シングルの残りの作品を紹介しましょう。
二曲とも「ナポレオンフィッシュ〜」の収録曲。
本来のシングルのタイトルソング「シティチャイルド」。
アーバンでワイルドな8ビートのロックンロール。
英国の名うてミュージシャンの粋のイイ演奏がカッコいい。
日本から参加したダディ柴田氏のサックスのブロウも負けてません。

二曲目は「雨の日のバタフライ」。
ほの暗い闇の中から自由や希望を求めて地道に活動している人へのララバイ。
繊細でメロディアスな旋律が印象的な作品。
当時のライヴではレゲエにアレンジされてました。

さて、レコードコレクターズ誌の九月号の特集「日本のロックアルバムベスト100 80年代編」にて、「ナポレオンフィッシュ〜」は61位にランキングされてました。
80年代末期の世界情勢ともリンクし、時代の息吹をリアルに吸い込みながらも、普遍的なソングライティングとサウンドが高度にスパークしたアルバム。。
スポークンワーズの魅力もアルバムの重要な要素です。

またスポークンワーズのライヴがあったら参加してみたいです。

『水の中のグラジオラス』《ESDB3001》〈作詞・作曲・編曲:佐野元春〉(02’37’’)【1989】


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コメント 5

いとぞう

スポークンワーズのライブ、観に行かれてたんですね!
元春は随分前から取り組んでますけど、ここに来てNHK教育テレビでの「ザ・ソングライターズ」が好評な事もあって、ようやく時代が追いついてきた感がありますよね。まさに「継続は力なり」

「水の中のグラジオラス」は僕も大好きな曲です。ロミーのコーラスがある事も、曲調も、一時期元春がひそかに組んでいたユニット「ブルーベルズ」を彷彿とさせる感じで素敵な曲。後半、朗読する詞が収録された書籍「ハートランドからの手紙」が当時、角川から出版されましたが、難しくても必死に付いていこうと思い、熱心に読んだ事を思い出します。

僕はまだスポークンワーズのライブは未体験なので、いつか観に行きたいです!
by いとぞう (2010-09-06 17:28) 

都市色

>こんばんは、いとぞうさん。
コメントありがとうございます。
夏にピッタリな曲ですね。
ロミーさんとのうたの相性も良くて。
いつか新曲で二人のハーモニーを聴いてみたいです。
スポークンワーズのライヴ、また来年もやって欲しいですね。
by 都市色 (2010-09-10 01:40) 

都市色

>ろひさん、ナイスありがとうございます。
by 都市色 (2010-09-10 01:41) 

きこ

毎年家の庭でグラジオラスが咲くと、口ずさんでいます。
なにがどうしてかわからないけれど、こころひかれる曲です。
そうでした、後半は『ああどうしてラブソングは、、、』でしたね。
昔、雑誌『Switch』で読んだのが最初の出会い。
(と言いつつ、確認のため押し入れから探し出してきました...88年秋でした。)

『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、個人的理由もあり、かなり大好きなアルバムです。
「ふたりの理由」にずっとあこがれています。

また佐野さんの記事、お待ちしています。
by きこ (2010-09-14 22:36) 

都市色

>きこさん、こんばんは。
コメント&ナイスありがとうございます。
不思議な魅力を持った曲ですよね、グラジオラス。
愛おしくて慎ましい唄。
「ふたりの理由」も良い曲ですよねぇ。

コレからもモトシングルズを取りあげて行きます。
お楽しみに。
by 都市色 (2010-09-15 02:29) 

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