『IMAGINE feat. MARLENA SHAW / PIZZICATO ONE』 [ピチカートファイヴ]
ピチカートマニアの皆さん、こんばんは。
待望の作品がリリースされましたね、お聴きになりましたか?
ファン待望の小西康陽さんの表舞台のソロプロジェクト。
ピチカートファイヴのお葬式から、没後10年。
ピチカート、ふたたび。
ピチカートは二度死ぬ。
昔の名前で出ています。
その名も、《pizzicato one》。
ソロプロジェクトといっても、転んでもただじゃ起きない小西さん。
配給のユニヴァーサルミュージックのサポートの元、海を越えて、ジャンルを超えてユニークな歌手を11名指名して、選りすぐりの悲しい11の歌を吹き込む。
ソロアルバムなのに小西さんは作曲もしていなければ歌ってもいません。
その魅力的なソングライティングを封印してまで制作したアルバムは不思議な魅力を放っています。
素晴しいです。
エクセレント。
ピチカートファイヴ時代からそのフレキシブルで個性的なアイディア、視点には驚かされ続けて来た僕たちですが、今回もやられました。軽やかに。
タイトルは「11のとても悲しい歌」。
アルバムのジャケット観てみましょう。
真っ白な雪景色の只中に佇む黒いコートと帽子に身を包んだ男。
その男の黒いコートに浮かぶ白抜きの「ONE」というタイポグラフィ。
「ONE」という言葉が深いキーワードのようです。
世界にひとつだけのピチカート。
ひとりぼっちのロンリー ピチカート。
ピチカートのひとりできるもん。
男一匹ピチカート。
唯一無二のピチカート。
小西さんの選曲とアレンジの絶妙なセンス。
そしてアルバムの構成力。
何か一つの物語を味わっている気がします。
まさに小西さんの本領発揮の傑作です。
さて、アルバムからの先行シングルは配信限定。
pizzicato oneだから一曲、という訳ではないと思いますが。
曲は「イマジン」。
勿論、ジョン レノンのあの作品です。
世界的に有名な曲だからと油断していはいけません。
歌うのはマリーナ ショウ。
ジャズ、R&B系の歌姫が歌う「イマジン」は乾いたペシミズム。
不意打ちの様なストリングスのフレーズにまず驚くでしょう。
原曲の淡々としたピアノの演奏を知っている多くの一般的な音楽ファンなら。
あのサウンドも巨匠フィル スペクターが関わっていて独特のムードを持っていましたが、
小西版も負けていません。
イントロのストリングスの不穏ながら流麗な調べ。
そして陰鬱なピアノのコードに乗って、彼女自身のビターで滋味のある歌声が広がります。
何処まで行っても孤独な世界に置き去りにされたような響き。
その深みに魅了されます。
彼女の歌声には諦観や悲壮感が滲んでいますが孤高な強さを感じます。
悲しみを受け入れて生きて行く意思。
ジョン レノン自身が歌に込めた希望のメッセージとはまた少し違う解釈があります。
小西さんのアレンジにはもう少し現実的な考えが込められている気がします。
この曲が産まれて丁度40年目。
オノヨーコさんはどのようにpizzicato oneを聴いたのでしょう。
気になります。
圧倒的な存在感を持った歌。
タイトル通り、このアルバムは悲しいアルバムですが、ネガティヴなモノではないです。
「一人で眠ることを学ぶ。」という曲(正確にはマルコスヴァーリによる作品と歌唱の「IF YOU WENT AWAY」からインスパイアされたトラック)に例えられるように、深い悲しみに暮れて孤独感に苛まれながらも一人で生きていく、という肯定的な意思。
もの悲しいメロディがサウンドが魂を浄化する。
歌のカタルシス。
そんな音楽のちからを小西さんのアルバムに感じます。
買ってから毎日の様に聴いています。
眠る前に。
聴いていると心が鎮まります。
一般的にはカヴァーアルバムと云う範疇に入るかもしれませんが、
ありきたりなカヴァーアルバムではありません。
というか、そう云えば、カヴァーアルバムだったっけ、と思ってしまう程に。
そのカテゴリーだけではこぼれ落ちてしまうサムシングを感じさせる、覚悟を持った凄い内容です。
美しくも悲しい調べは奇しくも、3.11以降の日本の世界秩序に呼応しているかのような内容です。
勿論それは偶然です。
6年前に大病を経験されて以降の小西さんの音楽活動はあきらかに今回のPIZZICATO ONEの目指すサウンドのベクトルに向いていました。少しのブレも無く。
これ迄の小西さんの音楽が全て一個人のパーソナルな音楽への恐ろしいまでの拘りから派生して来たことはファンがご存知でしょう。
これは全ての音楽ファンに聴いて頂きたいアルバムです。
末永くリスニングライフを豊かにしてくれると思います。
これからの人生に。
それから、
pizzicato oneとほぼ同時発売された、前園直樹グループのセカンドアルバム「遠くへ。」もおススメです。
小西さんがバンドのメンバーなのです。
こちらは邦楽のカヴァー集ですがやはり違いが判る男たちのこだわりのカヴァー集です。
『IMAGINE feat. MARLENA SHAW』〈Written by JOHN LENNON / Arranged by KONISHI YASUHARU〉(04’11’’)【2011】
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