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『台風13号/布谷文夫』 [ナイアガラ]

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こんばんは。
九月ですね。
秋の気配は台風と共に。
昨日から今日にかけまして大型の台風が日本を四国〜中国地方を縦断しております。
被害に遭われました皆様にはお見舞い申し上げます。
接近した台風は12号。

惜しい、本日取りあげますシングルは、その名も「台風13号」。
どうでもよいことですが。
唄うのはこの方、日本が誇る究極のディープブルースシンガー、布谷文夫さんです。
その歌声を一度でも聴いたら、鼓膜と脳裏に何らかのインパクトを残さずにはいられないパワーを持っています。異色、異端、異次元なヴォーカル。
8月に聴いたら、あつあつの煮込みうどんを食すような暑苦しさを催したでしょうが今はギリギリで9月です。
プロデューサーに大瀧詠一氏を迎えてのファーストアルバム「悲しき夏バテ」(1973)からのシングルカット。
大瀧さんと布谷さんの関係は、布谷さんが以前に組んでいたバンド、ブルースクリエーションに遡ります。布谷さんの型破りな歌のスケールを知る大瀧さんならではの諧謔精神に富んだユニークなプロデュース。
大瀧さんが同時期にプロデュースを担当していた関西のバンド〝ごまのはえ〟改め“ココナツ バンク”をバックに日本の土着的な視点からのスワンプロック/デルタブルースを構築。
日本のロック史に残る異色作として、隠れた名盤として今でも不滅の輝きをギラギラ放っています。
当時、プライベートレーベル“NIAGARA ”を興して間もない大瀧さんの重要なプロデュースワークの一つでもあり、70年代後半のレーベルの活動期には、ナイアガラサウンドの切り札として要所要所で布谷さんのヴォーカルが大活躍します。
それにしても70年代のナイアガラは山下達郎、そして布谷文夫と云う個性的に声の大きい歌手が在籍していたことでも大変ユニークですよね。

さて、シングル。
A面は「台風13号」。
オリジナルは、はっぴいえんどの2nd「風街ろまん」の「颱風」。
勿論、大瀧さんの作詞作曲、そして歌唱。
「風街ろまん」の中でもひと際異彩を放つ作品の布谷バージョン。
なのですが、本シングルの前作にあたるビクターからリリースされた彼のソロシングル「からのベッドのブルース」(1972)のB面でもこの曲をカヴァーしています(表記は「台風」)。
はっぴいえんど版を意識した、アコギの弾き語りでした。
布谷さんの歌声自体が嵐みたいなものなのでこの作品はうってつけでしょう。
ディザスターシンガー。
そして今回の再演版は大瀧さん直々のプロデュースになる訳ですが、前述のようにココナツバンクがバッキングを担当して更にパワーアップ。音の暴風域に見舞われます。
上原“ユカリ”裕さんの「ドドドドドン!」と叩かれるドラミングと藤本雄志さんのベースによる重量感あるリズム隊、そしてアーシーな伊藤銀次さんのギターが布谷さんの破天荒な絶唱をさらに盛り立てます。
大瀧さんによる「たいふうじゅうさんごお〜」というコーラスも音像空間を不穏に執拗に漂います。

http://www.youtube.com/watch?v=r1n_oV345cU

B面は「冷たい女」。
冷たいどころかジリジリと暑苦しさが響き渡ります。
ちばのぶゆきさんと云う方のオリジナル作。
布谷さんの独特な歌声が歌詞の意味を粉砕してリスナーへ辺り構わず投げつけてきます。
その音のカタマリの異形さが耳を刺激します。
ココナツバンクのタメの効いた16ビートのファンキーな演奏の破壊力。
スタックス/ヴォルトに比肩するソウルフルなプレイ。
特に伊藤銀次さんのスライドギターが光ります。
あまり多く語られないですが、ブルースギタリストとしての銀次さんの名演でしょう。
そしてゲストのシンガーズスリーのあばずれ風女性コーラスが良いスパイスとなってます。

70年代のナイアガラサウンドの魅力の一つと言える、「歌詞の意味を解体した音としての面白さ」が「颱風」、「びんぼう」そして布谷さんのアルバム「悲しき夏バテ」を通じて着実に発展しています
「悲しき夏バテ」は大瀧さんのプロデュース作品の多くに見られるレコードの片面(A面)のみのプロデュースで、B面は布谷さんのオリジナル作の弾き語りですが、日本のフォークにありがちな湿った感じは微塵も無く、エネルギッシュでパンクなブルースが展開されています。
シーナ&ロケッツの鮎川 誠さんも日本のロックの名盤に挙げる一枚。

布谷さんは現在もマイペースでライヴ活動をしています。
機会があったらその生声に圧倒されたいです。
そして新曲を、さらに味わい深い今のお声で聴きたいものです。
こんな個性的な魅力的なヴォーカリストが歴史の影に埋もれてしまうのは残念ですね。
布やんカムバック!

『台風13号』《DR1799》〈作詞/作曲/編曲:多羅尾伴内〉(03’59’’)【1973】


悲しき夏バテ

悲しき夏バテ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2007/04/11
  • メディア: CD



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都市色

>うっちさん、nice! ありがとうございます!
by 都市色 (2011-09-28 10:08) 

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